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事件 |
平成
24年
(ワ)
3276号
特許権侵害差止等請求事件
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裁判所のデータが存在しません。 | |
裁判所 | 大阪地方裁判所 |
判決言渡日 | 2013/10/17 |
権利種別 | 特許権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
判例全文 | |
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判例全文
平成25年10月17日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官 平成24年(ワ)第3276号 特許権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日 平成25年5月30日 判 決 原告 向陽技研株式会社 同訴訟代理人弁護士 室谷 和彦 同 面谷 和範 同補佐人弁理士 中谷 武嗣 被告 株式会社ヒカリ 同訴訟代理人弁護士 本渡 諒一 同 仲元 紹 同 宮原 秀隆 同訴訟代理人弁理士 清水 義仁 主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 1 被告は,別紙1のイ−1号物件目録,イ−2号物件目録,イ−3号物件目録及び イ−4号物件目録記載の各製品を製造し,販売し,輸出し,輸入し又は譲渡のため の展示,インターネットへの掲載その他の販売の申出をしてはならない。 2 被告は,前項記載の製品を廃棄せよ。 3 被告は,別紙1のイ−1号物件目録2(1)(2) , ,イ−2号物件目録2(2), イ−3号物件目録2(2)及びイ−4号物件目録2(1)に記載の各部品並びにそ れらの製造用金型を廃棄せよ。 4 被告は,原告に対し,3000万円及びこれに対する平成24年10月20日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,角度調整金具に関する特許権について専用実施権を有する原告が,被告の 製造する製品が原告の特許の技術的範囲に属するとして,特許法100条1項により 侵害の停止,予防を求め,同2項により,当該製品及び金型の廃棄を求めるとともに, 不法行為(民法709条)に基づき,被告の受けた利益相当の損害(特許法102条 2項)及び弁護士費用相当の損害の賠償を求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実) (1) 当事者 原告は,鉄工業等を目的とする株式会社であり,被告は,各種金属プレス加工 並びに販売等を目的とする株式会社である。 (2) 原告の専用実施権(甲1の2,2) ア 原告は,次の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許請求の範囲にお ける請求項1の発明を「本件特許発明」,本件特許発明に係る特許を「本件特 許」本件特許にかかる明細書及び図面を「本件明細書」という。)の専用実施 権の設定を受けている。 登録番号 第4895236号 発明の名称 角度調整金具 出願日 平成21年8月5日 分割の表示 特願2005−50055の分割 原出願日 平成17年2月25日 登録日 平成24年1月6日 特許請求の範囲(なお,改行及び段落冒頭のAないし J は,争いのない構成 要件の分説のために付した符号であり,原文には含まれない。) 【請求項1】 A 第1軸心(C1)を中心として相互揺動可能に枢結された第1アーム(1) と第2アーム(2)とを備えた角度調整金具に於て, B 上記第2アーム(2)は,上記第1軸心(C1)を中心とした円弧線に沿って 形成されたギア部(4)を備え,かつ,該ギア部(4)は一枚の板体(40)を 所定間隔をもって平行となるように折曲加工して成る2枚のギア板部 (45)(45)をもって構成され, C さらに,上記第1軸心(C1)を中心側とした場合に上記ギア部(4)の外周 歯面より外方側位置に,上記外周歯面との間にくさび形の空間部を形成 するくさび面(8)を,上記第1アーム(1)側に於て形成し, D しかも,該くさび形の空間部内に移動可能であって,かつ,一面側が 上記ギア部(4)の外周歯面に噛合可能な歯面(7)とされ,他面側が上記く さび面(8)に当接する当接面(9)とされた浮動くさび部材(6)を,備え, E 上記浮動くさび部材(6)の上記当接面(9)が上記くさび面(8)に当接し, かつ,上記歯面(7)が上記ギア部(4)に噛合し,上記ギア部(4)とくさび面 (8)との間に挟まれた浮動くさび部材(6)のくさび作用により,上記第2 アーム(2)が上記第1アーム(1)に対して展開方向へ揺動するのを抑制す るように構成し, F さらに,上記浮動くさび部材(6)の左右端面が対応して該浮動くさび部 材(6)の左右方向への脱落を防止するための左右側壁(34)(34)を,上記 第1アーム(1)側に備え,かつ, G 上記左右側壁 (34)(34) が橋絡壁をもって橋絡されて横倒略コの字状 として,上記左右側壁 (34)(34) と橋絡壁は薄板体から一体ものに形成 され, H 上記2枚のギア板部 (45)(45) を有する上記ギア部(4)に上記浮動く さび部材(6)は,左右幅方向の2箇所で,噛合し,かつ, I 上記浮動くさび部材(6)の左右方向への移動による脱落を,上記左右側 壁 (34)(34) を上記浮動くさび部材(6)の左右端面に対応させて防止す るように構成した J ことを特徴とする角度調整金具。 イ 本件特許は,特願2005−50055(以下「原出願」という。)の分割出 願として,平成21年8月5日に特許出願されたところ,当該出願は拒絶査定 を受けたが,審判により特許すべきものとされた。 (3) 被告製品(甲3,弁論の全趣旨) 原告は,被告製品のバリエーションとして,別紙1のイ−1ないしイ−4号物 件目録記載のとおりこれを区別するところ,これらは,品番,巻き,段数を同一 としつつ,後記アーム2(第2アーム 2)又は浮動くさび部材 6(ツメ部材)の 形状の相違によるものであり,その相違点は,本件特許の構成要件との対比に影 響するものではないから,これを区別して論ずる実益のない部分では,別紙2「被 告製品の品番一覧記載」のとおり整理することとし,イ−1ないしイ−4号物件 を区分して説示することはしない(以下「被告製品」と総称し,別紙2の番号に より「製品1」などという。。 ) 被告は,業として,被告製品について,インターネット上のウェブサイト上で 販売の申し出をし,うち少なくとも製品1,2,6及び9については,サンプル 製造も含む製造を行い,製品3及び6については販売もした(製造,販売の範囲 については,後記のとおり争いがある。。 ) (4) 被告製品が本件特許の構成要件を充足するにつき争いのない部分 被告製品の構成について,後記のとおり,被告による分説を前提とした場合に, 被告製品が,上記本件特許の構成要件A,B,D,E,H及びJを充足すること については,当事者間に争いがない。 2 争点 (1) 被告製品が,本件特許の構成要件Cを充足するか (2) 被告製品が,本件特許の構成要件F,G,Iを充足するか (3) 被告製品が,本件特許の均等侵害となるか。 (4) 本件特許が,原出願に包含されない発明を内容とするものであるかどうか(分 割要件違反の有無) (5) 原告の被った損害額及び差止請求の可否 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1) (被告製品が,本件特許の構成要件Cを充足するか)について (原告の主張) ア 被告製品の構成 被告製品は,いずれも, (a1) 回転軸心 C1 を中心として相互揺動可能に枢結された箱型アーム 1 と揺動 アーム 2 とを備え, (a2) 上記箱型アーム 1 は,平行に配置された2枚の外壁部 17, が形成され 17 た箱部 1a1 を有する箱型アーム本体 1a と,連結ピン 1d と,連結ピン 1d 及び 枢結ピン 20 によって箱部 1a1 内に固定された受け部材 1b と保持板 1c とで構 成されており, (b) 上記揺動アーム 2 は,上記回転軸心 C1 を中心とした円弧線に沿って形成 されたギア部 4 を備え,かつ,該ギア部 4 は一枚の板体を所定間隔をもって 平行となるように折曲加工して成る2枚のギア板部 45, をもって構成され, 45 (c) 上記箱型アーム 1 を構成する受け部材 1b の受け板部 8 は,上記回転軸心 C1 を中心側とした場合に上記ギア部 4 の外周歯面より外方側位置に,上記外 周歯面との間でくさび形の空間部 Z を形成し, (d) しかも,該くさび形の空間部 Z 内に移動可能であって,かつ,一面側が上 記ギア部 4 の外周歯面に噛合可能なギア面 7 とされ,他面側が上記受け板部 8 に当接する摺接面 9 とされた浮動くさび部材 6 を,備え, (e) 上記浮動くさび部材 6 の上記摺接面 9 が上記受け板部 8 に当接し,かつ, 上記ギア面 7 が上記ギア部 4 に噛合し,上記ギア部 4 と受け板部 8 との間に 挟まれた浮動くさび部材 6 のくさび作用により,上記揺動アーム2が上記箱 型アーム1に対して展開方向へ揺動するのを抑制するように構成し, (f) さらに,上記箱型アーム 1 の受け部材 1b は,上記浮動くさび部材 6 の左右 端面が対応して該浮動くさび部材 6 の移動動作を案内する左右側板 34,34 を備え,かつ, (g) 上記左右側板 34,34 が受け板部 8 をもって橋絡されて横倒略コの字状と して,上記左右側板 34,34 と受け板部 8 は,厚さ3ミリメートル以下の板材 から一体ものに形成され, (h) 上記2枚のギア板部 45, を有する上記ギア部 4 に上記浮動くさび部材 6 45 は,左右幅方向の2箇所で,噛合し,かつ, (i) 上記左右側板 34, を上記浮動くさび部材 6 の左右端面に対応させて, 34 該 浮動くさび部材 6 の移動動作を案内するように構成した (j) 角度調整金具。 と構成される。 イ 被告製品の上記構成(c)が,本件特許発明の構成要件Cを充足すること 被告製品の上記構成(c)における「受け部材 1b の受け板部 8」は, 「上記回転 軸心 C1 を中心側とした場合に上記ギア部 4 の外周歯面より外方側位置に,上記 外周歯面との間でくさび形の空間部 Z を形成」するものであるから,構成要件 Cにおける「くさび面(8)」に相当する。 また, 「受け部材 1b の受け板部 8」は, 「箱形アーム 1 を構成する」ものであ り,箱形アーム1側において形成されるものであるから,構成要件Cにおける 「上記第1アーム(1)側において形成」に相当する。 したがって,被告製品は,構成要件Cを充足する。 (被告の主張) ア 被告製品の構成に関する主張 被告製品は,次の構成を有するものであり,数字を併記した部品の詳細は別 紙図面1の1,2に記載のとおりである。 a 回転軸心 C1 を中心として相互揺動可能に枢結された第1アーム 1 と第2 アーム 2 とを備え, b 上記第2アーム 2 は,上記回転軸心 C1 を中心として円弧線に沿って形成 されたギア部 4 を備え,かつ,該ギア部 4 は一枚の板体を所定間隔で平行と なるように折り曲げ加工してなる2枚のギア板部 45,45 をもって構成され, c 上記第1アーム 1 は,平行に配置された2枚の外壁部 17,17 を有し, 上記第1アーム 1 の2枚の外壁部 17,17 の内側に上記第2アーム 2 の2 枚のギア板部 45,45 が配設され,両ギア板上方に中本体 A 及び第1アーム 1 の2枚の外壁部 17,17 の内側でかつギア板部 45,45 の中間に中板 B が配置 され, 上記中本体 A の左右方向中央部をなす受圧部 A1の内側面は,回転軸心 C1 を中心側とした場合に上記ギア部 4 の外周歯面より外方側位置に,上記ギア 部 4 の外周歯面との間にくさび形の空間部 S を形成し, d 該くさび形の空間部 S 内において周方向に移動可能であって,一面側に上 記ギア部 4 の外周歯面に噛合可能な歯面 7 が形成され,他面側の高さ方向中 央部が上記中本体 A の受圧部 A1の内側面に当接する当接面 9 とされたツメ 部材 6 を備え, e 上記ツメ部材 6 の上記当接面 9 が中本体 A の受圧部 A1の内面側に当接し, かつ,上記ツメ部材 6 の上記歯面 7 が上記第2アーム 1 の上記ギア部 4 に噛 合し,上記ギア部 4 と受圧部 A1との間に挟まれたツメ部材 6 のくさび作用 により,上記第2アーム 2 が上記第1アーム 2 に対して展開方向へ揺動する のを抑制するように構成し, f 上記中本体 A の上記受圧部 A1の左右両側は,回転軸心側に折り曲げられ て連結壁 A2,A2 が構成され,この左右の連結壁 A2,A2 が上記回転軸心 C1 に軸支されることによって,上記中本体 A が,上記ツメ部材 6 との当接圧力 に対抗しうるように構成され, g 上記中本体 A は,上記第1アーム 1 及び第2アーム 2 を形成する板材より 厚い板材を圧縮成形加工し,焼入れ処理を施して横倒略コの字状に形成され てなり, h 上記2枚のギア板部 45,45 を有する上記ギア部 4 に上記ツメ部材 6 は, 左右幅方向の2箇所で,?合し, i 上記ツメ部材 6 は,上記中本体Aの受圧部 A1及び連結壁 A2, によって, A2 上記ギア部 4 のギア歯が並ぶ周方向への移動動作が案内されるように構成さ れている j 角度調整金具。 イ 本件発明は,くさび形窓部でギア板の外周面より外方位置に上記外周面との 間に「くさび形の空間部」を形成することを目的としている。そして,本件発 明の明細書添付図面に明らかなように,当該くさび形の空間部は,ケース部 3 に形成されるくさび形窓部 5 内に形成されている」とされており,くさび形窓 部 5 は,ケース部 3 の壁部 17,17 にそれぞれ同一形状で形成されており,ケー ス部 3 を貫通状としている」【0018】 ( )とし,かつ「くさび形窓部 5 は第1 軸心 C1 側に向かった凹となるように弧状に形成された貫通孔であり,さらに, 「貫通孔の外方外側にはギア部 4 より外側位置となる円弧状のくさび面 8 が形 成され,内方側位置の面は(中略)ギア部 4 よりも小径の円弧面 23 が形成され ていて,従って,ギア部 4 の歯はくさび形窓部 5 から見える状態となっている。」 と説明されている。 また,本件発明の詳細な説明には,その全体を参照しても,上記の実施態様 のみしか開示されておらず,それ以外の構成の示唆も一切ない。 したがって,本件発明の「くさび面(8)」は,第1アームのケース部 3 に形成 されたくさび形窓部の円弧状の貫通孔の上側内面であるとの理解しかできない。 ウ これに対し,被告製品は,第1アームに,くさび面(8)として「くさび形窓部」 とその「くさび形窓部」に貫通した「貫通孔」が存在しない。本件発明にいう くさび面の作用をもつのは,横倒略コの字状の中本体 A の上板 A1 の下面であり, 弧状でなく直線である。また,本件発明においては,くさび面は,上記のとお り,円弧状の貫通孔の上側内面であり,その個数は2個であり,当接面積は狭 いものであるのに対し,被告製品では1個となり,かつ当接面積が広い。この 相違が作用効果の相違をもたらす。したがって,被告商品は,本件特許の構成 要件Cを充足しない。 エ また,被告製品は,くさび形部材の落下防止機構(中板 B)を備えているが, 本件特許発明には,その機能はなく,これもくさび形空間部がくさび形窓部に 限定されると理解しないと説明ができないものである。 (2) 争点(2)(被告製品が,本件特許の構成要件F,G,Iを充足するか)について (原告の主張) ア 被告製品の構成は,前記(1)の(原告の主張)に記載のとおりであり,対応す る本件特許の構成(特許請求の範囲に記載の文言)は,前提事実(2)アのとおり であり,文言以上に限定して解釈される必要はない。 イ(ア) 構成要件Fの充足について 被告製品の前記構成(f)と構成要件Fとを比較すると,前記構成(f)におけ る左右側板 34, は, 34 構成要件Fにおける「左右側壁(34),(34)」に相当し, 当該左右側板 34,34 は, 「受け部材 1b」が備えるものであり,当該受け部材 1b は箱形アーム1を構成す るものであっ て,構成要件Fの「左右側壁 (34),(34)を,上記第1アーム(1)側に備え」に相当するから,前記構成(f) は,構成要件Fを充足する。 (イ) 構成要件Gの充足について 被告製品の前記構成(g)と構成要件Gとを比較すると,前記構成(g)におけ る「受け板部 8」は,構成要件Gにおける橋絡壁に相当し,「上記左右側板 (34),(34)が受け板部 8 をもって橋絡されて横倒略コの字状として,上記左右 側板 34, と受け板部 8 は, 34 厚さ3ミリメートル以下の板材から一体ものに 形成体から一体のものに形成」 「上記左右側壁(34),(34)が橋絡壁をもって は 橋絡されて横倒略コの字状として,上記左右側壁(34),(34)と橋絡壁は薄板体 から一体のものに形成」に相当するから,前記構成(g)は,構成要件Gを充足 する。 (ウ) 構成要件Iの充足について 被告製品の前記構成(i)と構成要件Iとを比較すると,前記被告構成(i)に おける「上記左右側板 34, を上記浮動くさび部材 6 の左右端面に対応させ 34 て,該浮動くさび部材 6 の移動動作を案内するように構成した」は,構成要 件Iにおける「上記浮動くさび部材(6)の左右方向への移動による脱落を,上 記左右側壁(34),(34)を上記浮動くさび部材(6)の左右端面に対応させて防止 するように構成した」に相当するから,前記構成(i)は,構成要件Iを充足す る。 ウ 被告の主張に対する反論 (ア) 「左右方向への脱落防止」の意義について 被告は,本件発明の「くさび面」が実施例の「くさび型窓部」に形成され る態様に限定されるとの解釈を前提として,被告製品では,ギアの外側に外 壁部 17,17 があるため,浮動くさび部材が外壁部 17,17 から左右外方に移 動し脱落することはない,と主張している。しかし,本件発明における「左 右方向への脱落を防止」 (構成要件F,I)は,明細書の記載の趣旨も踏まえ ると,浮動くさび部材をスムーズかつ正常な動作範囲に確保することに主眼 があるものであるところ,被告製品の受け部材 1b の左右側壁 34,34 も, 「浮 動くさび部材 6 の左右端面に対応させて,該浮動くさび部材の移動動作を案 内する」ものであるから,この点で相違点を構成することはない。 (イ) 「薄板体」に関する主張について 被告はまた,受け部材 1b の材質が薄板ではないことを相違点として主張す るが,薄板とは厚さ3ミリメートル以下又は未満の鋼板を意味する技術用語 であって,被告製品の受け部材 1b はその要件を満たしている。 (ウ) 配置構成の相違について 被告は,本件発明に「くさび型窓部」が必須の構成であるとする解釈を前 提として,本件発明では,コ字状部材がアームの外側に配置されるのに対し, 被告製品の受け部材 1b は,アームの内側に配置される点で相違すると主張す る。 しかし,本件特許発明においては,くさび形窓部は必須の構成ではなく, 前提に誤りがあり,特許請求の範囲において,コ字状部材の配置位置につい ての限定はないから,被告主張のように構成が限定されるものではない。 (被告の主張) ア 本件特許発明においては,浮動くさび部材 6 の左右移動による脱落防止を目 的とする機構として,「左右側壁(34)(34)が橋絡壁をもって橋絡されて横倒略 コ字状として,上記左右側壁(34)(34)と橋絡壁は薄板体から一体のものに形成 される」とする左右脱落防止部材が必然的な構成要件とされている。すなわち, 本件特許発明においては,第1アームの先端部の壁 17,17 にくさび形窓部を 形成しているので,浮動くさび部材が外側に移動して脱落することになる。し たがって,これを防止する機構が必要になる。 これに対し,公知の回転調整金具(乙1,2等)や,被告製品で採用する機 構においては,ギア板部の外側に壁があって浮動くさび部材が壁から左右外方 に移動し脱落することはないから,このような構成は不要である。したがって, 被告製品は,脱落防止のための部材を備えておらず,構成要件F,G,Iを備 えない。 イ(ア) 原告は,被告製品の構成部材である中本体 A が,脱落防止カバー33 に相当 すると主張する。しかし,中本体 A は,ギア板 45,45 との関係で,「くさび 面(8)」を形成するための板である。中本体は,上板で形成される板状の受 圧部に,両側に垂直に連結壁 A2,A2 が付設された形状(倒略コ字状)とな っている。受圧部 A1 はくさび面を構成する略直線状の板体であり,連結壁 A2,A2 を配設したのは,受圧部 A1 への圧力への耐性を高め, (その他,受圧 部 A1 自体に段違いを設け)変形を防止するためであって,浮動くさび部材 の移動を規制する作用は,第 1 アーム 17,17 でも実現できるものにすぎな い。 したがって,被告構成f,g及びiは,それぞれ構成要件F,G及びIを 構成しない。 (イ) 上記(ア)のとおり,中本体 A と,脱落防止カバー33 は,その目的が異なり, その差異に応じて,板厚構造上の違いがある。すなわち,被告製品の中本体 A は,圧力を受けるものであるから,ケース部の壁 17 やギア 45 の板厚(1. 6から2ミリメートル)よりも厚い2.3ミリメートルの部材となっている のに対し,本件特許発明における脱落防止カバーは,薄板体で足りるもので ある。 (ウ) 脱落防止カバー33 と中本体 A の配置構成の相違 本件特許発明の明細書【0043】によれば,脱落防止カバー33 は,「ケ ース部 3 を左右外側から包囲するように配設され」とあり,添付図面の図2 及び3によれば,本件発明の脱落防止カバー33 は略横倒コ字状(開口部が上) であって,この壁間の底部にケース部 3 の下方底部を載せるようにした構成 が示されている。このように,脱落防止カバー33 は,少なくとも,ケース部 3 の壁の外側に位置しなければならず, (内側に配設すれば,ケース部 3 に形 成されるくさび形窓部がその効用を失い, 「くさび形の空間部」の形成が不可 能になる。 したがって,中本体 A と,脱落防止カバー33 は,配置構成においても異な る。 (3) 争点(3)(被告製品が,本件特許の均等侵害となるか)について (原告の主張) ア 被告の主張を前提とすると,本件特許発明と被告製品の相違点は,くさび形 窓部の有無,すなわち,本件発明では第1アーム 1 にくさび形窓部 5 を設ける ことによって,第2アーム 2 の外周歯面との間にくさび形空間部を形成する楔 面を形成するとともに,第1アーム 1 の外部に設けられた脱落防止カバー33 に よって浮動くさび部材 6 の異動動作を案内しているのに対し,被告製品では, 箱形アーム内 1a 内で,連結ピン 1d と枢結ピン 20 によって固定された受け部 材 1b によってくさび形の空間部を形成するくさび面を形成するとともに,受 け部材 1b の左右側壁 34,34 によって浮動くさび部材 6 の移動動作を案内して いる点において異なることとされる。 イ(ア) 本件特許発明の特徴的原理は,@浮動くさび部材の採用,Aくさび形空間 部の形成及び浮動くさび部材の配設,Bくさび作用の発揮という点にあり, くさび形窓部を設ける構成は,本件特許発明以前に上記@からBまでの特徴 的原理を備えた角度調整金具が存在しなかったのであるから,特徴的原理と なるものではない。 (イ) 被告製品は,浮動くさび部材 6 を採用し(上記特徴的原理@),揺動アー ム2のギア部4と箱形アーム1の箱部 1a1 内に固定された受け部材 1b の受 け板部 8 との間にくさび形の空間部 Z を形成し,当該くさび形の空間部 Z に, 浮動くさび部材 6 を配設している(上記特徴的原理A)。更に,箱形アーム 1 と揺動アーム 2 が展開方向に揺動しようとする際,浮動くさび部材 6 の外方 側の摺接面 9 が箱形アーム 1 の箱部 1a1 内に固定された受け部材 1b の受け 板部 8 に当接し,かつ,揺動アーム 2 のギア部 4 に噛合する浮動くさび部材 6 により,ギア部 4 の中心に向かう圧迫力として力が作用するようにし,ギ ア部 4 の引っかかりのみではなく,浮動くさび部材 6 における受け板部 8 と の当接力とギア部 4 との噛合と上記圧迫力とにより揺動を抑止するように構 成されている。 したがって,被告製品の課題解決手段は,本件特許発明における解決手段 と実質的に同一の原理に属するものであり,被告の主張する相違点は発明の 本質的部分ではない。 そして,本件発明の目的も,被告製品も,いずれも角度調整金具の小型化, 多段化を目的とし,同一の作用効果をもたらすものである(均等第2要件)。 (ウ) また,上記(ア)の相違点は,具体的には,「くさび形窓部」と「脱落防止カ バー」の構成を,受け部材 1b 及び保持板 1c に置き換えた点である。 被告製品の受け部材 1b 及び保持板 1c は,2つのピン(連結ピン 1d と枢 結ピン 20)によって,箱形アーム 1 内に完全に固定され一体化されており, 全く動かない部材である。つまり,被告製品では,くさび形窓部を形成すれ ば実現できる機能をわざわざ複数の部材に分割し,それらをアーム内に固定 することによって実現しているだけであって,当該変更は技術的に無意味で ある。 加えて,当業者にとって,特許発明や実施品の構造を詳細に検討,観察し た上で,特許発明における特定の構成について,単に当該構成を複数の部材 に分割して置換する行為は,容易というほかない。 以上から,異なる部分を置き換えることにつき,当業者が被告製品を製造 する時点において容易に想到できたものである(均等第3要件充足)。 (エ) 被告製品は,本件特許発明と同一の解決原理を使用するものであるから, 本件特許の出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから出願する 際に容易に推考できたものではなく(均等第4要件充足),また,出願過程 で意識的に除外されたような事情もない(同第5要件充足)。 (被告の主張) ア 本件特許発明と被告製品の相違点は,@くさび形窓部 6 に対応する中本体 A の受圧部,A脱落防止カバーと中本体の連結壁である。 イ 本件特許発明の明細書【0007】においては,「浮動くさび部材」におけ るくさび面の当接力と,ギア部との噛合と(上記)圧迫力とにより揺動を抑止 する」とされており,本件特許発明においては,これがなくては,本件発明の 効果が生じず,課題が解決されない。そして,くさび面を形成するのがくさび 形窓部である以上,同部分は本件発明の本質的構成の一つであるし,本件発明 以前に,窓部を設けないでくさび作用をもたらす構成が公知であった(乙4, 5),ことからもそのように言える。 同様に,脱落防止カバーも,くさび形金具が脱落するとその機能を発揮しな いのであるから,特徴的原理の一つである。 したがって,相違点が特徴的原理に係る部分にある以上,均等第1要件は充 足しない。 ウ また,脱落防止カバーを中本体に置換した点についても,そもそも中本体 A は浮動くさび部材の脱落を防止するという作用効果をもたらすものではない から,作用効果に違いがあり,均等第2要件も充足しない。 エ 更に,金具全体の強度を増すために,本件特許発明では窓部によって形成さ れていたくさび面を中本体全体で形成する,窓部を設けない構成にすることに より浮動くさび部材の脱落を防止するといった置換は,当業者によって容易に 想到可能なものではないから,均等第3要件も充足しない。 (4) 本件特許が,原出願に包含されない発明を内容とするものであるかどうか(分 割要件違反の有無) (被告の主張) ア 本件特許は,前提事実(2)イのとおり,原出願から分割されたものであるとこ ろ,原出願の特許発明の請求項1の構成は次のとおりである。 【請求項1】 ケース部(3)を備える第1アーム(1)と,該ケース部(3)にて該第1アーム(1) と第1軸心(C1)廻りに揺動可能に枢結されると共に相互に平行な2枚のギア板 部(45)(45)から成るギア部(4)を備える第2アーム(2)と,該第1アーム(1) の該ケース部(3)に形成されるくさび形窓部(5)と,該くさび形窓部(5)内にて移 動可能に配設されかつ一面側が上記ギア部(4)に噛合可能な歯面(7)とされ他面 側が上記くさび形窓部(5)の外方側のくさび面(8)に当接する当接面(9)とされ て該歯面(7)が該ギア部(4)に噛合しかつ該当接面(9)が該くさび面(8)に当接し 上記第2アーム(2)が上記第1アーム(1)に対して展開方向へ揺動するのを抑制 する浮動くさび部材(6)と,を具備することを特徴とする角度調整金具。 イ 上記のとおり,原出願においては,「くさび形窓部」を,「該第1アーム(1) の該ケース部(3)に形成される」ものとしているが,本件特許は,「くさび型の 空間部」 「第1軸心(C1)を中心側とした場合に上記ギア部(4)の外周歯面より を 外方側位置に,上記外周歯面との間にくさび形の空間部を形成するくさび面(8) を,上記第1アーム(1)側に於て形成」されるものとしている。 そうして,浮動くさび部材は,原出願では,「ケース部(3)に形成され該くさ び形窓部(5)内にて移動可能に配設されている」のに対し,本件特許においては, 「該くさび形の空間部内に移動可能」とされ,ケース部(3)に形成されない空間 部内を移動可能となっている。 この相違から,本件特許の構成は,原出願の構成にはないものといえる。 ウ さらに,原出願のくさび形の「空間部」は,第1アームに設けられたくさび 形窓部の孔のくさび面で構成されるから,くさび形窓部の存在を必須とするの に対し,本件特許においては,空間部は,第2アームの外周面より外方側位置 にあればよく,第2アームのギア部の間でも,その外側に亘って形成されても よいことになる。この点は,原出願に開示されていない。 エ 上記の差異は,共に「くさび効果」を金具の調整に利用する原出願と本件特 許発明において,大きな違いをもたらす。 したがって,本件特許発明は,原出願の発明とは異なる新たな発明であって, 特許法44条に規定する分割出願要件違反の出願であり,出願の効果が原出願 の日に遡ることはなく,平成21年8月5日出願の新規な特許出願として扱わ れるべきものである。 そうして,本件特許発明は,平成18年9月7日に公開された原出願,特開 2002−254329(乙3)及び特開平10−15837(乙4)の各発 明から容易に想到可能であるから,特許法29条2項に基づく無効原因を有す る。また,本件特許の「くさび形の空間部」が「くさび形窓部」に限定されな いと解釈されるとするならば,本件特許は,明細書で開示されない内容を特許 請求の範囲に含むことになるから,サポート要件違反(特許法36条4項1号 違反)の無効理由が存する。 (原告の主張) ア 分割出願にあっては,分割された出願が,原出願の最初の特許請求の範囲, 明細書及び図面(当初の明細書等)に記載されているか,又はこれらの記載か ら自明であれば適法であって,原出願の出願日への遡及が認められる。 原出願の当初の明細書等においては,実施例としてくさび形窓部が設けられ た態様のもののみが示されているのに対し,本件特許発明の構成要件Cは,く さび形窓部が設けられた態様に限定されていない。 イ 原出願の当初の明細書等において,くさび面がくさび形窓部の一部位として 形成されるものに限られる旨の記載は皆無である一方,原出願が従来の角度調 整金具の問題点を,角度調整金具においてギアの歯が大きくなり,角度切替え の段数が少なく,微調整ができないものとし,発明が解決しようとする課題を 角度の切替え段数を多くできない点及び金具全体が大きくなってしまう点とし ており,その上で,発明を実施するための「最良の」形態として,くさび形窓 部が設けられた態様を示したにすぎない。 以上から,当業者においては,原出願の発明に関して,次の構成が必須であ ると理解する。 (ア) くさび面とギア部との間に,くさび形の空間部を形成すること (イ) くさび形の空間部に浮動くさび部材を配すること (ウ) 浮動くさび部材の歯面がギア部に噛合し,かつ,当接面がくさび面に当接 し,ギア部とくさび面との間に挟まれる浮動くさび部材のくさび作用により, 第2アームが第1アームに対して展開方向へ揺動するのを抑制すること ウ したがって,当業者は,くさび面を,くさび形窓部の一部位として形成する か,あるいはくさび形窓部を設けない態様で形成するかは,発明の解決原理と 無関係であると当然に理解するのであって,くさび面がくさび形窓部を設ける ことなく形成される態様は,原出願の当初明細書の記載から自明である。 よって,本件特許発明は,原出願の出願日にされたものとみなされるから, 被告の主張するような無効理由は存在しない。 (5) 争点(5)(原告の被った損害額及び差止請求の可否)について (原告の主張) ア 損害賠償 原告は,被告の侵害行為により,損害を被ったところ,被告が侵害行為によ り受けた利益は,2500万円を下らない。同利益は,原告の損害と推定され る(特許法102条2項)。また,原告は,本訴の提起追行を弁護士,弁理士 に委任したところ,その費用は500万円を下らない。 したがって,被告は,原告に対し,不法行為(民法709条)に基づく損害 賠償として,合計3000万円及びその請求の日の翌日から支払済みまで年5 分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。 イ 差止請求 (ア) 被告は,イ−4号物件について製造販売等の実施を行っていることを争っ ていないところ,これら侵害行為を差し止める必要がある。 (イ) 被告は,後記被告の主張に記載のとおり,平成24年6月から,製造する 製品について浮動くさび部材をイ−4号物件で使用するもの(薄板状の突出 板が一側面に設けられた浮動くさび部材)にしたとするが,イ−1ないし3 号物件について,製造販売等を停止したことを示す証拠は何ら示されておら ず,これが継続しているおそれは否定できない。また,上記浮動くさび部材 の設計変更を,更に変更して元に戻す(突出板のない構成にする)ことは極 めて容易である。 また,原告は,製品1,2,4,5,9及び12を被告から購入しており, 被告の後記主張は事実に基づいておらず,被告の主張は信用できない。 このような被告の主張も踏まえると,被告において,現に又は将来イ−1 ないし3号物件の全種類の製造販売を行うおそれがあることから,侵害の停 止又は予防のために,イ−1ないし3号物件の製造販売等も差し止める必要 があり,かつ,在庫,製造のための金型等を廃棄する必要がある。 (被告の主張) ア 損害に関する原告の主張を争う。 イ 被告が業として製造している製品群 被告は,現在,浮動くさび部材に規制板を付加したイ−4号物件の製品3及 び6の製品のみを製造しており,イ−1ないし3号物件は,浮動くさび部材及 びアームの金型を製造委託先において廃棄しているから,これらの製造を差し 止める必要はない。 第3 判断 1 後掲各証拠及び弁論の全趣旨に前提事実を総合すると,次の事実を認めることが できる。 (1) 原出願にかかる発明について(甲5) 原出願にかかる角度調整金具の発明について,平成17年2月25日に出願さ れ,平成18年9月7日に公開された当初の明細書(特開2006−23072 0)には,次の各事項が記載されている。 ア 【特許請求の範囲】において,【請求項1】では,アームが展開方向へ揺動 するのを抑止する機構について,「第1アーム(1)の該ケース部(3)に形成され るくさび形窓部(5)と,該くさび形窓部(5)内にて移動可能に配設されかつ一面 側が上記ギア部(4)に噛合可能な歯面(7)とされ他面側が上記くさび形窓部(5) の外方側のくさび面(8)に当接する当接面(9)とされて該歯面(7)が該ギア部 (4)に噛合しかつ該当接面(9)が該くさび面(8)に当接」するものとされ,【請求 項5】では,「上記ケース部(3)を左右外側から包囲するように配設され,上記 浮動くさび部材(6)が上記くさび形窓部(5)から脱落するのを防止する脱落防 止カバー(33)を具備する」ものとされている。 イ 【発明が解決しようとする課題】の項において,アームの揺動を抑制する機 構について,「第1アームの該ケース部に形成されるくさび形窓部と,該くさ び形窓部内にて移動可能に配設されかつ一面側上記ギア部に噛合可能な歯面 とされ他面側が上記くさび形窓部の外方側のくさび面に当接する当接面とさ れて該歯面が該ギア部に噛合しかつ該当接面が該くさび面に当接」とする記載 があり(【0005】, )「ケース部を左右外側から包囲するように配設され,上 記浮動くさび部材が上記くさび形窓部から脱落するのを防止する脱落防止カ バー,を具備する」ものとする記載がある( 【0007】。 ) ウ 【発明の効果】の項において,「浮動くさび部材の外方側の当接面がくさび 形窓部のくさび面に当接し,かつ,第2アームのギア部に噛合する浮動くさび 部材により,ギア部の中心に向かう圧迫力として力が作用する」ものとされ (【0011】, )「ケース部は,脱落防止カバーによって左右外側から包囲され るので,浮動くさび部材がくさび形窓部から脱落するのを,確実に防止できる」 とされている(【0013】。 ) エ 【発明を実施するための最良の形態】の項において,「第1アーム1のケー ス部3に形成されるくさび形窓部5を備えている。くさび形窓部5は,ケース 部3の壁部 17,17 にそれぞれ同一形状で形成されており,ケース部3を貫通 状としている。くさび形窓部は,第1軸心C1側に向かって凹となるように弧 状に形成された貫通孔であり,第1軸心 C1 を中心側とした場合のこの貫通孔 の外方側の面にはギア部4より外方側位置となる円弧上のくさび面8が形成 され,内方側位置の面には,第1軸心 C1 を中心とし,ギア部 4 よりも小径の 円弧面 23 が形成されている。従って,ギア部 4 の歯は楔形窓部 5 から見える 状態となる。」とされ(【0021】, )「くさび面8は,第1軸心 C1 と,偏心す る第2軸心 C2 を中心とした円弧形状に形成されており,図4(略)に示すよ うに第1アーム 1 を左手側とし第2アームを右手側とした場合に,くさび型窓 部 5 は時計回り方向に縮小する―――くさび面 8 がギア部 4 に近接していく― ――くさび型の孔となる。つまり,外方側のくさび面 8 とギア部 4 との間にお いて空間部が形成され,その空間部に後述する浮動くさび部材 6 が配設され る。」とされている(【0022】。 ) (2) 原告の実施品について(甲9,弁論の全趣旨) 原告の実施品は,第1アームにくさび型窓部を配設した態様のものであり,概 ね,原出願の図8の態様(別紙図面2)のものである。 原告は,平成17年9月ころから,上記製品を製造販売している。 (3) 被告製品について(甲15の1ないし6,弁論の全趣旨) ア 被告製品の構成 被告製品の構成は次のとおりである。なお,原被告間に用いる用語につき同 意のないものは,最初に使用されるところでカッコ内に原告の用語を併記して, 関連を明らかにすることとする(以下,各構成を「被告構成 a」などという。。 ) a 回転軸心 C1 を中心として相互揺動可能に枢結された第1(箱型)アーム 1 と第2(揺動)アーム 2 とを備え, b 上記第2アーム 2 は,上記回転軸心 C1 を中心として円弧線に沿って形成さ れたギア部 4 を備え,かつ,該ギア部 4 は一枚の板体を所定間隔で平行とな るように折り曲げ加工してなる2枚のギア板部 45,45 をもって構成され, c 上記第1アーム 1 は,平行に配置された2枚の外壁部 17,17 を有し, 上記第1アーム 1 の2枚の外壁部 17, の内側に上記第2アーム 2 の2枚 17 のギア板部 45,45 が配設され,両ギア板上方に中本体 A(受け部材 1b)及び 第1アーム 1 の2枚の外壁部 17,17 の内側でかつギア板部 45,45 の中間に 中板 B(保持板 1c)が配置され, 上記中本体 A の左右方向中央部をなす受圧部 A1(受け板部 1b)の内側面 は,回転軸心 C1 を中心側とした場合に上記ギア部 4 の外周歯面より外方側位 置に,上記ギア部 4 の外周歯面との間にくさび形の空間部 S を形成し, d 該くさび形の空間部 S 内において周方向に移動可能であって,一面側に上 記ギア部 4 の外周歯面に噛合可能な歯面 7 が形成され,他面側の高さ方向中 央部が上記中本体 A の受圧部 A1の内側面に当接する当接面 9 とされた浮動 くさび部材 6 を備え, e 上記浮動くさび部材 6 の上記当接面 9 が中本体 A の受圧部 A1の内面側に 当接し,かつ,上記浮動くさび部材 6 の上記歯面 7 が上記第2アーム 1 の上 記ギア部 4 に噛合し,上記ギア部 4 と受圧部 A1との間に挟まれた浮動くさ び部材 6 のくさび作用により,上記第2アーム 2 が上記第1アーム 2 に対し て展開方向へ揺動するのを抑制するように構成し, f 上記中本体 A の上記受圧部 A1の左右両側は,回転軸心側に折り曲げられ て連結壁 A2,A2 が構成され,この左右の連結壁 A2,A2 が上記回転軸心 C1 に軸支されることによって,上記中本体 A が,上記浮動くさび部材 6 との当 接圧力に対抗しうるように構成され, g 上記中本体 A は,上記第1アーム 1 及び第2アーム 2 を形成する板材より 厚い板材を圧縮成形加工し,焼入れ処理を施して横倒略コの字状に形成され てなり, h 上記2枚のギア板部 45, を有する上記ギア部 4 に上記浮動くさび部材 6 45 は,左右幅方向の2箇所で,?合し i 上記浮動くさび部材 6 は,上記中本体Aの受圧部 A1及び連結壁 A2,A2 に よって,上記ギア部 4 のギア歯が並ぶ周方向への移動動作が案内されるよう に構成されている j 角度調整金具 イ 被告製品の製造,販売等(甲3の1ないし3,15の1ないし6,16,1 7,乙7,8) 被告は,角度調整機構に前記アの構成を有する角度調整金具を製造し,平成 20年10月ころから販売を始めた(部品の設計変更に伴い,被告製品イ−1 から同4に構成が順次変更されたが,基本的な機能及び構成は変更がない。。 ) なお,被告製品の型番は別紙1のとおりであり,この中には,被告の主張によ ると,試作にとどまるものもあったとされるが,他方,原告が,被告が製造し ていないと主張する型番のものを入手した事実も認められるほか,少なくとも 全種類について,被告ウェブサイト上で販売の申出がされていた。 (4) 本件特許の出願過程について(甲4の1ないし10) 本件特許の出願過程は,次のとおりである。 ア 原告は平成21年8月5日,原出願からの分割として,請求項1を次のとお りとする特許出願を行った。 「 第1軸心(C1)を中心として相互揺動可能に枢結された第1アーム(1)と第2 アーム(2)とを備えた角度調整金具に於て, 上記第2アーム(2)は,上記第1軸心(C1)を中心とした円弧線に沿って形成さ れたギア部(4)を備え,かつ,該ギア部(4)は所定間隔をもって平行な2枚のギ ア板部(45)(45)をもって構成され, さらに,上記第1アーム(1)側に,上記第1軸心(C1)方向から見て,上記ギア 部(4)の外周歯面との間にくさび形の空間部を形成するくさび面(8)を設け, しかも,該くさび形の空間部内に移動可能であって,かつ,一面側が上記ギア 部(4)の外周歯面に噛合可能な歯面(7)とされ,他面側が上記くさび面(8)に当 接する当接面(9)とされた浮動くさび部材(6)を,備え, 上記浮動くさび部材(6)の上記当接面(9)が上記くさび面(8)に当接し,かつ, 上記歯面(7)が上記ギア部(4)に噛合し,上記ギア部(4)とくさび面(8)との間に 挟まれた浮動くさび部材(6)のくさび作用により,上記第2アーム(2)が上記第 1アーム(1)に対して展開方向へ揺動するのを抑制するように構成し, さらに,上記浮動くさび部材(6)の左右端面が対応して該浮動くさび部材(6)の 左右方向への脱落を防止するための左右側壁(34)(34)を,上記第1アーム(1) 側に備えていることを特徴とする角度調整金具。」 本件明細書の【課題を解決するための手段】の項には,前記請求項1と同様, くさび形の空間部,くさび形の空間部内といった記載が存するものの(【00 06】, )【発明を実施するための形態】の項には,くさび形の空間部の語は使 用されておらず,原出願と同様,第1アームのケース部にくさび形窓部を形成 することを前提とする記載のみがされ,第1アームにくさび形窓部を形成せず に,くさび形の空間部を形成する具体的方法については,何らの記載も存しな い。 イ アの出願に対し,特許庁審査官は,平成21年9月9日付けで,「上記第1 アーム(1)側に,上記第1軸心(C1)方向から見て,上記ギア部(4)の外周歯面と の間にくさび形の空間部を形成するくさび面(8)を設け」るとの構成は,もと の出願の明細書,特許請求の範囲又は図面に記載も示唆もされておらず,二以 上の発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願としたものではないと して,分割を不適法とする趣旨を含む拒絶理由通知を発した。 ウ 原告は,平成21年10月30日,意見書及び補正請求書を提出し,上記イ で指摘された点につき, 「上記第1アーム(1)側に,上記第1軸心(C1)方向から 見て,上記ギア部(4)の外周歯面との間にくさび形の空間部を形成するくさび 面(8)を設け」との表現を「上記第1軸心(C1)を中心側とした場合に上記ギア 部(4)の外周歯面より外方側位置に,上記外周歯面との間にくさび形の空間部 を形成するくさび面(8)を,上記第1アーム(1)側に於て形成し」と補正した。 エ 特許庁審査官は,平成21年11月19日付けで,上記(3)の補正を前提と した構成も,原出願において, 「くさび面 8」がくさび形窓部 5 を構成する一部 位であり,原出願の明細書中の「空間部」【0022】 ( )とは,くさび形窓部 5 を設けることにより形成される空間であるものと認められ,くさび形窓部 5 を 設けずに,くさび面 8 とギア部 4 との間に空間部を形成するという技術的思想 は開示されていないとして,原出願の明細書,特許請求の範囲又は図面に記載 されているとは認められないとして,拒絶理由通知を発した。 オ 原告は,平成22年1月29日,同日付手続補正書及び意見書を提出し,同 意見書において,上記エの指摘に対して,当初明細書と図面を当業者が(抽象 化しつつ)理解していった際,図面全体に重点的に表現され,明細書中に説明 されている「くさび作用」「くさび機能」を当業者が注目して,「くさび面 8」 及び「くさび形の空間部」が発明の構成要件として記載されているものと理解 すると主張し,「くさび形窓部 5 を設けずに,くさび面 8 とギア部 4 との間に 空間部を形成するという技術的思想は開示されていない」との指摘に対しては, 「くさび形窓部 5 が存在することによって,くさび形空間部が形成されている という技術が,図面(略)及び明細書に記載されていることが明白であると共 に, 「空間部」とは当然に「窓部」を包含した上位概念であります。 “くさび形 窓部 5 を設けず”とは奇異なる仮定であり,当然に,くさび形窓部を設けるこ とによってくさび形空間部も形成されていると,当業者は理解致します。」と 反論した。 また,「空間部」が「くさび形」であることが記載も示唆もされていない, との指摘に対し,くさび形窓部とくさび形空間部の違いを,くさび形空間部は, くさび形窓部のギア部4よりも内径側の微少な円弧部領域の有無として説明 し,したがって,空間部はくさび形であることが開示されていると説明した。 カ 特許庁審査官は,平成22年4月22日,上記意見を参照しても,二以上の 発明を包含する特許出願の一部を新たな特許出願としたものではないとして, 拒絶査定をした。 キ 原告は,平成22年6月14日,審判を請求し,上記オと同旨の理由を主張 したところ,平成23年11月21日,特許庁審判官は,原査定を取り消し, 本願の発明は特許すべきものとする審決をした。 2 争点(1)(被告製品が,構成要件Cを充足するか)について (1) 出願(分割出願)経過 ア 上記1によると,原出願の明細書全体をみても,第1アームにくさび形窓部 を形成して,くさび形金具とともに,くさび作用を生じさせる構成は開示され ているが,これ以上に,くさび形の空間部を,第1アームにくさび形窓部を形 成する以外の構成によって実現する方法は記載されておらず,これを示唆する ような記述も見受けられない。原告の原出願にかかる特許発明の実施品におい ても,第1アームにくさび形窓部を設ける以外の態様での角度調整金具が存在 するとは認められない。 イ 本件特許の出願が,原出願の分割として適法であるためには,本件明細書や 特許請求の範囲の記載が,原出願の明細書や特許請求の範囲に記載された事項 の範囲内であることが必要であり,原告は,原出願の明細書の記載から,第1 アームにくさび形窓部を形成する以外の方法によってくさび形空間を形成し, アームの揺動を抑制する構成は,当業者にとって自明であり,これも原出願に おいて開示された事項の範囲内である旨を主張する。 しかしながら,くさび形窓部又はくさび形空間は,回転軸心からの距離が変 化する押圧面を利用することでアーム等が回転する際に,軸心方向への押圧力 を生じさせることでその回転を抑制すると共に,ギアの噛合を解除することを 内容とするものと解されるところ,角度調整金具において,これを実現するた めの具体的構成や技術的手段には様々なものが考えられるから,第1アームに くさび形窓部を形成することで揺動を抑制する構成を開示したとしても,これ とは異なる具体的構成や技術的手段により,回転軸心からの距離が変化する押 圧面を利用することで押圧力を生じさせる構成の全てが開示されている,ある いは自明であるということはできない。 ウ また,原告が,本件特許の出願過程において,くさび形空間を設ける具体的 構成に言及しないばかりか,審判請求の手続において,「くさび形窓部5を設 けずに,くさび面 8 とギア部 4 との間に空間部を形成するという技術的思想は 開示されていない」との指摘に対し,くさび形窓部 5 を設けない構成は,「奇 異なる仮定」であるとして,当業者は,くさび形窓部を設けることによってく さび形空間部も形成されていると当然に理解する旨主張したことは,前記1(4) 認定のとおりである。 (2) 上記を踏まえた構成要件Cの意義 上記検討した原出願の内容,本件明細書の記載及び出願経過を参酌すると,原 出願は,くさび形窓部を第1アームのケース部に形成することで,くさび効果に よる押圧力で揺動を抑制する構成が開示され,その分割出願である本件特許発明 において「くさび形窓部」が「くさび形空間部」にやや上位概念化されたと認め られるから,構成要件Cは,第1アームのケース部自体にくさび形空間部を設け ることを意味するものと解すべきであり,このように解する限りにおいて,本件 特許の分割出願は適法と認められる(争点(4))。 原告が主張するように,構成要件Cについて,第1アーム側にくさび形空間部 が形成されていればよく,その具体的構成は問わない(あらゆるくさび形の空間 部の形成方法が包含される)との意義であるとすると,原出願との関係において 新たな技術的事項を導入するものというべきであって,分割出願である本件特許 の構成要件Cの解釈として,取り得ないところと言わなければならない。 (3) 被告構成について 被告構成cについては,前記1(3)のとおりであるところ,第2アーム 2 の2 枚のギア板部 45,45 による部分は,構成要件Cと同じであるものの,くさび形 空間部の形成は,平行に配置された2枚の外壁部 17,17 の内部に,連結壁 A2, A2 を付属させた中本体(受け部材)A と,中板 B(保持板 1c)によって形成され ており,第1アームのケース部自体に形成されるくさび形空間部によってはおら ず,これとは異なる技術的手段によりくさび形の空間部を形成したものと認めら れるから,前記(2)のとおりに解される構成要件Cを充足しないものというべきで ある。 (4) まとめ 以上の次第で,被告構成cは,構成要件Cを充足しない。 3 争点(3)(被告製品が,本件特許の均等侵害となるか)について (1) 本件特許発明と被告製品の相違点 上記1,2に説示したところによると,本件特許発明と被告製品の相違点は, 本件特許発明は,くさび形の空間部を,第1アームのケース部自体に形成して構 成しており,その結果,くさび形金具が第1アームから脱落するのを防止するた めのカバー(橋絡壁をもって橋絡される左右側壁 (34)(34) )を必要とするのに 対し,被告製品は,これを,連結壁 A2,A2 を付属させた中本体 A と,中板 B(保 持板 1c)によって構成し,かつ同構成によってくさび形金具の脱落防止も達成し ている点にある。 (2) 上記相違点の評価 上記相違点は,いずれの構成も,くさび形金具との当接によるくさび作用をも たらし,角度調整金具を多段化,小型化することに資する構成であって,同一の 作用効果を発揮するものである(均等第2要件充足)。しかし,くさび作用をも たらすくさび形空間部の具体的構成方法が,発明の本質的部分に関するものでな い(均等第1要件関係)かどうかはともかく,本件特許発明が,くさび形空間部 を第1アームに設けられたくさび形窓部に形成することに主眼を置いた説明を しているのに対し,被告製品は,その構成から解放され,中本体(受け部材)と 中板をもってくさび作用をもたらすくさび形空間部を具体的に形成するという 別の技術的構成を採用し,これによって,くさび形金具とくさび面の当接面積が 増大する,あるいは,構造材である中本体がくさび形金具の動きを案内し,脱落 防止のための部材も別途要しなくなるといった付加的な作用効果も生じている から,このような構成に想到することが,被告製品の製造当初において,当業者 にとって容易であったとは認められない(これを明らかにする証拠の提出もな い)。この点につき,原告は,単なる部品の組換えであるとして,その想到容易 性を主張するが,上記説示に照らし,採用することはできない。 (3) まとめ 以上の次第で,少なくとも均等第3要件を欠くから,被告製品が,本件特許の 均等の範囲にあるということもできない。 第4 結論 以上の次第で,被告製品は,本件特許の技術的範囲(均等の範囲を含む)に属し ないから,争点(2)(5)を判断するまでもなく,原告の本訴請求はいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 谷 有 恒 裁判官 松 阿 彌 隆 裁判官 松 川 充 康 (別紙1) イ−1号物件目録 下記1の品名,品番,巻き,及び段数の角度調整金具であって,下記2の図面で表さ れる部品を使用したもの 1 品名等 (1)品名 (1)品名 ラチェットギア多段シリーズ (2)品番・ き・段数 (2)品番・巻き・段数 品番 別紙2記載のとおり,品番2種,巻き2種,段数3種の組合せからなる合計12 種類が存在する。 部品の 2 部品の図面 (1)浮動楔部材 (1)浮動楔部材 (2)揺動アーム (2)揺動アーム 揺動 ア 段数「 段数「1−7」の製品に使用されるもの 製品に使用されるもの イ 段数「 段数「8−14」の製品に使用されるもの 14」 製品に使用されるもの ウ 段数「 段数「1−14」の製品に使用されるもの 14」 製品に使用されるもの イ−2号物件目録 下記1の品名,品番,巻き,及び段数の角度調整金具であって,下記2の図面で表さ れる部品を使用したもの 1 品名等 イ−1号物件目録の1と同じ。 部品の 2 部品の図面 (1)浮動楔部材 (1)浮動楔部材 (2)揺動アーム (2)揺動アーム 揺動 ア 段数「 段数「1−7」の製品に使用されるもの 製品に使用されるもの イ 段数「 段数「8−14」の製品に使用されるもの 14」 製品に使用されるもの ウ 段数「 段数「1−14」の製品に使用されるもの 14」 製品に使用されるもの イ−3号物件目録 下記1の品名,品番,巻き,及び段数の角度調整金具であって,下記2の図面で表さ れる部品を使用したもの 1 品名等 イ−1号物件目録の1と同じ。 2 部品の図面 部品の (1)浮動楔部材 (1)浮動楔部材 (2)揺動アーム (2)揺動アーム 揺動 ア 段数「 段数「1−7」の製品に使用されるもの 製品に使用されるもの イ 段数「 段数「8−14」の製品に使用されるもの 14」 製品に使用されるもの ウ 段数「 段数「1−14」の製品に使用されるもの 14」 製品に使用されるもの - 35 - イ−4号物件目録 下記1の品名,品番,巻き,及び段数の角度調整金具であって,下記2の図面で表さ れる部品を使用したもの 1 品名等 イ−1号物件目録の1と同じ。 2 部品の図面 部品の (1)浮動楔部材 (1)浮動楔部材 (2)揺動アーム (2)揺動アーム 揺動 ア 段数「 段数「1−7」の製品に使用されるもの 製品に使用されるもの イ 段数「 段数「8−14」の製品に使用されるもの 14」 製品に使用されるも されるもの ウ 段数「 段数「1−14」の製品に使用されるもの 14」 製品に使用されるもの - 37 - (別紙2) 被告製品の品番一覧 番号 品番 巻き 段数 1 1-7 2 1.2 8-14 3 1-14 14WS 4 1-7 5 1.6 8-14 6 1-14 7 1-7 8 1.2 8-14 9 1-14 14RS 10 1-7 11 1.6 8-14 12 1-14 (別紙図面1) 図1 (側方図) 図2 (分解図) 1. 第1アーム 9. 当接面 A2. 連結壁 2. 第2アーム 17. 外壁部 B. 中板 4. ギア部 45. ギア板部 C1. 回転軸心 6. ツメ部材 A. 中本体 S. くさび形空間部 7. ツメ部材歯面 A1. 受圧部 (別紙図面2) |