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事件 平成 24年 (行ケ) 10410号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2013/10/24
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成25年10月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成24年(行ケ)第10410号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成25年9月10日

判 決

原 告 X

被 告 特 許 庁 長 官

同 指 定 代 理 人 水 野 恵 雄

衣 川 裕 史

稲 葉 和 生

樋 口 信 宏

山 田 和 彦

主 文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

特許庁が不服2012−840号事件について平成24年9月19日にした審決

を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等

(1) 原告は,発明の名称を「ハンドヘルド型動画情報処理装置」とする発明に

つき,平成23年3月22日に特許出願(特願2011−63424。請求項の数

3。特願2006−277062(国内優先権主張日:平成16年12月24日,

平成17年7月28日)の分割出願)を行った(甲9)。

なお,本件出願に係る発明の名称は,平成24年6月4日付け手続補正書(甲1

1)による手続補正により,「携帯情報通信装置」に変更されている。
(2) 原告は,平成23年9月16日付けで拒絶査定を受けたので,平成24年

1月16日,これに対する不服の審判を請求した。

(3) 特許庁は,上記請求を不服2012−840号事件として審理し,平成2

4年9月19日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審

決」という。)をし,同年10月27日,その謄本が原告に送達された。

(4) 原告は,平成24年11月25日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を

提起した。

2 特許請求の範囲の記載

本件審決が対象とした特許請求の範囲請求項1の記載(ただし,平成24年6月

4日付け手続補正書による手続補正後のもの)は,以下のとおりである。以下,請

求項1に係る発明を「本願発明」といい,その明細書(甲9,11)を「本願明細

書」という。

ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し,該入力データを後記データ

処理手段へ送信する入力手段と;

「アナログテレビ放送信号,デジタルテレビ放送信号,携帯テレビ電話信号,イ

ンターネットプロトコルに準拠した無線ストリーミング信号のうちの少なくとも1

つの無線信号」(以下「無線動画信号」と略記する)を受信し,該無線動画信号を

デジタル動画信号に変換した上で後記データ処理手段に送信する無線受信手段と;

後記データ処理手段を動作させるプログラムと後記データ処理手段で処理可能な

データファイルとを格納する記憶手段と;

前記入力手段から受信したデータ及び前記記憶手段に格納されたプログラムとに

基づき,前記無線受信手段から受信したデジタル動画信号に必要な処理を行ってデ

ジタル表示信号を生成し,該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段及び/

又は後記インターフェース手段に送信するデータ処理手段と;

画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイ

パネルと,前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき前記ディス
プレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段Aとから構成されるデ

ィスプレイ手段と;

外部ディスプレイ手段を含む周辺装置,又は,外部ディスプレイ手段が接続され

る周辺装置を接続し,該周辺装置に対して,前記データ処理手段から受信したデジ

タル表示信号に基づき,外部表示信号を送信するインターフェース手段と;

を備えるとともに,

前記データ処理手段と前記インターフェース手段とが相俟って,該インターフェ

ース手段から,高解像度外部表示信号を送信する機能を実現する携帯情報通信装置

であって,

前記データ処理手段は,前記無線動画信号の本来解像度が前記ディスプレイパネ

ルの画面解像度より大きい場合でも,前記デジタル動画信号をリアルタイムで処理

することによって,及び/又は,前記デジタル動画信号を自らが処理可能な画像デ

ータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し,その後読み出した上で処理するこ

とによって,前記無線動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成す

る機能を有することを特徴とする携帯情報通信装置。

3 本件審決の理由の要旨

(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,使用した引

用例及び周知例は以下のとおりである。

ア 引用例:特開2004−320680号公報(甲1)

イ 周知例1:特開2004−128587号公報(甲2)

ウ 周知例2:特開2000−66649号公報(甲3)

エ 周知例3:特開平9−244780号公報(甲4)

オ 周知例4:特開2004−240279号公報(甲5)

カ 周知例5:特開2004−207806号公報(甲6)

キ 周知例6:特開2004−153399号公報(甲7)

ク 周知例7:特開2004−7537号公報(甲8)
ケ 周知例8:特開2002−359846号公報(甲14)

(2) 本件審決が認 定 した引用例に記 載 された発明(以下 「 引用発明」 と い

う。)並びに本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。

ア 引用発明:操作者の操作によりキー情報を出力するキーマトリクス部と,入

射する光景に対応する第1の画像データを出力するカメラ部と,外部から無線によ

り第2の画像データを受けこの第2の画像データを出力する無線部と,前記キーマ

トリクス部が出力する前記キー情報と前記カメラ部が出力する前記第1の画像デー

タと前記無線部が出力する前記第2の画像データとを画像信号にそれぞれ変換して

出力する制御部と,前記制御部がそれぞれ出力する前記画像信号を受けて画像を表

示する表示部と,前記制御部が出力する前記画像信号をテレビ用の画像信号である

アナログコンポジット信号に変換して出力する変換部とを備え,制御部のメモリは,

第1の画像データを格納する携帯電話機であって,ケーブル等により携帯電話機の

出力端子とテレビジョンとを接続することにより,変換部が出力したアナログコン

ポジット信号をテレビジョンのモニタに表示する携帯電話機

イ 一致点:ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し,該入力データ

を後記データ処理手段へ送信する入力手段と;

無線画像信号を受信し,該無線画像信号を画像データとした上で後記データ処理

手段に送信する無線受信手段と;

後記データ処理手段で処理可能なデータファイルを格納する記憶手段と;

前記無線受信手段から受信した画像データに必要な処理を行って表示信号を生成

し,該表示信号を後記ディスプレイ制御手段及び後記インターフェース手段に送信

するデータ処理手段と;

画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイ

パネルと,前記データ処理手段から受信したデジタル表示信号に基づき前記ディス

プレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段Aとから構成されるデ

ィスプレイ手段と;
外部ディスプレイ手段を含む周辺装置を接続し,該周辺装置に対して,前記デー

タ処理手段から受信した表示信号に基づき,外部表示信号を送信するインターフェ

ース手段と;

を備えるとともに,

前記データ処理手段と前記インターフェース手段とが相俟って,該インターフェ

ース手段から,外部表示信号を送信する機能を実現する携帯情報通信装置

ウ 相違点1:本願発明は,「アナログテレビ放送信号,デジタルテレビ放送信

号,携帯テレビ電話信号,インターネットプロトコルに準拠した無線ストリーミン

グ信号のうちの少なくとも1つの無線信号(無線動画信号)を受信」するものであ

るのに対し,引用発明では「無線画像信号」を受信するものの,当該「無線画像信

号」が動画であるのか,静止画であるのか,また,どのような方式のものであるの

か,その具体的な記載はなく,また,その後の処理について,本願発明は「無線動

画信号」を「デジタル動画信号」に変換した上で,必要な処理を行って「デジタル

表示信号」を生成するのに対し,引用発明では,その点は明らかでない点

エ 相違点2:本願発明は,「データ処理手段を動作させるプログラムと後記デ

ータ処理手段で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;

前記入力手段から受信したデータ及び前記記憶手段に格納されたプログラムとに

基づき,」データ処理手段を動作させるのに対し,引用発明では処理手段を動作さ

せる「プログラム」について,記載がない点

オ 相違点3:本願発明は,外部表示信号が「高解像度外部表示信号」であり,

「前記データ処理手段は,前記無線動画信号の本来解像度が前記ディスプレイパネ

ルの画面解像度より大きい場合でも,前記デジタル動画信号をリアルタイムで処理

することによって,及び/又は,前記デジタル動画信号を自らが処理可能な画像デ

ータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し,その後読み出した上で処理するこ

とによって,前記無線動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成す

る機能を有する」のに対し,引用発明では,外部表示信号は,「アナログコンポジ
ット信号」であり,また,「高解像度」外部表示信号を出力し,また,「前記無線

動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成する機能を有する」こと

について,記載がない点

カ 相違点4:本願発明は,周辺装置が,外部ディスプレイ手段を含む周辺装置

「,又は,外部ディスプレイ手段が接続される周辺装置」であるのに対し,引用発

明では,「外部ディスプレイ手段が接続される周辺装置」について,記載がない点

(3) 本件審決の理由の要旨は次のとおりである。

ア 本件出願に係る優先権主張日前において,地上デジタル放送等を受信できる

携帯電話機は,周知例5ないし7のとおり周知の技術であり,受信した無線動画信

号をデジタル動画信号に変換してデジタル表示信号を生成することは当然のことで

あるから,引用発明において,当該周知技術を適用して,地上デジタル放送等を受

信できるように構成し,相違点1に係る構成とすることは,容易になし得る。

イ 引用発明において,処理を記憶したプログラムで行うようにすることは当然

のことであり,相違点2に係る構成とすることに格別の点はない。

ウ 一般に携帯端末のように,スペース,解像度等に制約がある内部の表示手段

を有するものにおいて,解像度,表示面積に優れた外部機器を接続し,内部表示装

置に表示されるものと比べて高解像度の画像信号を端末より出力させ,当該携帯端

末に接続された外部の表示装置に高解像度の画像を表示させるようにすることは,

周知例1ないし4及び8に示されるように周知の技術である。また,画像信号を記

憶手段に一旦格納することは,周知例7に記載されるように普通に行われる。

そして,引用発明も,外部の機器を接続し,「多数の人が同時に見ることができ,

表示画像がよく見え,画像に迫力が感じられるよう」にするもので,その具体的な

信号の処理として,当該周知技術を採用し,相違点3に係る構成とすることは当事

者が容易になし得る。

エ 外部ディスプレイ手段が接続される周辺装置は,引用例の図2に記載される

ように普通のことであって,相違点4に係る構成とすることに格別の点はない。
4 取消事由

相違点3に係る判断の誤り

第3 当事者の主張

〔原告の主張〕

容易想到性の論理付けの誤りについて

本件審決は,前記のとおり,引用発明に周知技術を採用して相違点3に係る構成

とすることは,当業者が容易に想到することができたものであると判断した。

しかし,本件審決が認定した相違点3は,@本願発明では,インターフェース手

段から「高解像度外部表示信号」が送信されるのに対して,引用発明では,「高解

像度」外部表示信号を出力することについて記載がない点(以下「相違点3−1」

という。)と,A本願発明では,「データ処理手段は,前記無線動画信号の本来解

像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい場合でも,無線動画信号の

本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成する機能を有する」のに対し,引用

発明では,「データ処理手段が無線動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示

信号を生成する機能を有する」ことについて記載がない点(以下「相違点3−2」

という。)という2つの独立した内容を含むものであるところ,本件審決が周知技

術として認定したのは,相違点3−1に係る本願発明の構成であり,相違点3−2

に係る本願発明の構成の周知性は,主張も立証もされておらず,本件審決で判断さ

れていない。

したがって,仮に,本件審決のいう周知技術が認められるとしても,引用発明に

当該周知技術を適用して相違点3−2に係る構成とすることが,当業者において容

易に想到することができたものであるということはできない。

容易想到性について

(1) 相違点3に係る本願発明の構成は,以下のとおり,周知例1ないし4及び

8に記載された発明を適用しても,容易に想到することができない。

ア 周知例1について
周知例1には,デジタルカメラに係る発明が記載されているところ,周知例1に

記載されたデジタルカメラにおいて,本願発明のデータ処理手段に該当するのは,

解像度変換部であり,その解像度変換部が処理するのは,撮像手段(CCD撮像素

子)から得られる画像データである(【0039】)。

したがって,仮に,周知例1に記載されたデータ処理手段(解像度変換部)が

「本来画像の全体画像の表示信号を生成する機能」を有していたとしても,それは,

あくまでも「撮像手段(CCD撮像素子)から得られる画像データの本来画像の全

体画像の表示信号」であって,「無線動画信号の本来画像の全体画像の表示信号」

ではない。

また,一般に,「無線動画信号(が変換されたデジタル動画信号)の処理」と,

「撮像手段から得られる画像データの処理」とは異なるものである。

したがって,周知例1には,相違点3−2に係る本願発明の構成は記載されてい

ない。

イ 周知例2について

周知例2に記載された携帯情報処理装置において,本願発明のデータ処理手段に

対応するのは,「CPU及び表示コントローラ」であるが,周知例2に記載された

データ処理手段の主たる機能は,表示描画プログラムに従って表示データを生成す

ることであり(【0013】【0016】【0019】【0020】),周知例2

には,データ処理手段が外部から取得した画像信号を処理して表示信号を生成する

機能を有することの記載はない。

したがって,周知例2には,相違点3−2に係る本願発明の構成は記載されてい

ない。

ウ 周知例3について

周知例3に記載された端末機において,本願発明のデータ処理手段に対応するの

は制御回路であるが,その機能は,「外部表示器の接続有無の検出」と「表示信号

の出力」というごく一般的な事項だけであり(【0011】【0014】〜【00
18】),無線動画信号(を変換したデジタル動画信号)を処理して表示信号を生

成する機能を有することは一切記載されていない。

したがって,周知例3には,相違点3−2に係る本願発明の構成は記載されてい

ない。

エ 周知例4について

周知例4に記載された情報処理装置(PDA)において,本願発明のインターフ

ェース手段に対応するのは無線LANデバイスであるが,これは「無線通信を実行

するように構成された無線通信デバイス」である(【0010】)。したがって,

ここから送信されるのはあくまでも無線LAN信号であって,本願発明でいう「外

部表示信号」ではない。

また,そもそも無線LANとは,「有線ケーブル以外の伝送路を利用したLAN

の総称」であり,LANは複数のコンピュータを接続することによって構築される

ネットワークであるから,PDAからスライドデータを受信するワイヤレスプロジ

ェクタも,PDAと同じく,上記の「無線通信を実行するように構成された無線通

信デバイス」である無線LANデバイスを備えており,結局,周知例4におけるP

DAからワイヤレスプロジェクタへの送信は,「コンピュータ(データ処理手段を

備えた情報処理装置)からコンピュータ(データ処理手段を備えた情報処理装置)

への送信」である。

これに対し,本願発明のインターフェース手段からの「外部表示信号」の送信は,

「コンピュータ(データ処理手段を備えた情報処理装置)から外部ディスプレイ手

段への送信」であり,この外部ディスプレイ手段が,通常の情報処理装置が備える

ようなデータ処理手段を備えるものではない(【0031】【0078】)。

したがって,周知例4には,「外部表示信号」の送信に係る記載はない。

また,周知例4に記載された情報処理装置(PDA)が処理する画面イメージデ

ータは,専らプレゼンテーション用のスライドデータであり(【0011】【00

13】),周知例4には,無線動画信号(を変換したデジタル動画信号)を処理し
て表示信号を生成する機能を有することは一切記載されていない。

したがって,周知例4にも,相違点3−2に係る本願発明の構成は記載されてい

ない。

オ 周知例8について

周知例8において,本願発明にいう「本来画像の全体画像」に対応するのは,

「最後まで復元処理をした後に得られる復元画像」であると考えられるが,【00

33】に「プリンタに出力される場合は」との記載があることからも明らかなとお

り,「最後まで復元処理」されているのは,JPEG2000等によって符号化さ

れた静止画像であって,無線動画信号(を変換したデジタル動画信号)ではない。

また,周知例8に記載された画像復号装置は,「中間画像を最終的な復号画像と

して利用する」ことを技術的意義としており,「最後まで復元処理をして原画像を

得る」ことは本質的な構成要件となっていない。

さらに,同画像復号装置は,「画像復号処理の負荷を減らし,消費電力を低減す

ることのできる画像復号技術を提供すること」(【0005】)を解決課題として

いるのであるから,特に,画像復号処理の負荷が高い動画像については「最後まで

復元処理をして原画像を得る」ことは回避されていると解釈するのが妥当である。

したがって,周知例8には,相違点3−2に係る本願発明の構成は記載されてい

ない。

(2) 以上によれば,相違点3に係る本願発明の構成は,引用発明に周知例1な

いし4及び8に記載された発明を前提としても,当業者において,容易に想到する

ことができたものではない。

3 被告の主張について

被告は,十分な大きさや解像度の表示画面がある場合には,画像を変換せずに本

来画像の全体画像をそのまま表示すること,すなわち,高解像度画面がある場合に

はそのまま表示することは技術常識であるから,相違点3−2に係る本願発明の構

成を採用することは,当業者にとって,設計的事項にすぎないと主張する。
しかし,本件出願に係る優先権主張日当時には,引用発明のように画像を外部デ

ィスプレイに表示する携帯電話機は,広く開発・製造されている製品ではなく,そ

のような技術水準において,仮に,画像を外部ディスプレイに表示する携帯電話機

を設計する場合,画像を外部ディスプレイに表示する機能は画像を本体ディスプレ

イに表示する機能に対して付加的なもの,すなわち,本体ディスプレイに加えて外

部ディスプレイにも付加的に表示する携帯電話機として設計するのが自然なことで

ある。そして,その設計の際には,外部ディスプレイに出力するために必要最低限

の外部出力インターフェースを設けた上で,データ処理手段は,従来の表示画面が

1つしかない情報処理装置におけるものを採用し,本体ディスプレイと外部出力イ

ンターフェースの双方に本来解像度が本体ディスプレイの画面解像度と一致した表

示信号を出力させる構成とするのであって,高解像度画面がある場合にはそのまま

表示するとの構成は採用しない。したがって,高解像度画面がある場合にはそのま

ま表示することは本件出願に係る優先権主張日当時の引用発明の技術分野において

は,技術常識ではないから,被告の前記主張は失当である。

また,引用例には,制御部(データ処理手段)と表示部(本体ディスプレイ)と

の間に何らかの解像度変換を行う手段が介在することの記載や示唆はなく,制御部

と変換部(外部出力インターフェース)は直接接続されているから,本件出願に係

優先権主張日当時に引用例に接した当業者は,制御部から変換部に出力される表

示信号の本来解像度は,表示部の画面解像度に一致していると考えるはずである。

以上のとおり,引用例には,本来解像度が本体ディスプレイの画面解像度よりも

大きな画像データが入力された場合に,その画像データをあえて解像度変換するこ

となく,そのままの本来解像度の表示信号として出力する技術は記載もなく,示唆

もされていないから,被告の前記主張は失当である。

〔被告の主張〕

容易想到性の論理付けの誤りについて

原告は,相違点3は相違点3−1と相違点3−2という2つの独立した内容を含
むものであるところ,本件審決は相違点3−2に係る本願発明の構成の周知性の主

張,立証をしていないから,仮に,本件審決のいう周知技術が認められるとしても,

引用発明に当該周知技術を適用して相違点3−2に係る本願発明の構成とすること

が,当業者において容易に想到することができたものであるということはできない

と主張する。

しかし,本願発明に係る特許請求の範囲では,相違点3−1の高解像度外部表示

信号を送信する機能が,データ処理手段とインターフェース手段の2つの要素が相

俟って実現されるものと記載されているが,同じ特許請求の範囲には,「前記デー

タ処理手段は,…前記無線動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生

成する機能を有する」との記載や,「前記データ処理手段から受信したデジタル表

示信号に基づき,外部表示信号を送信するインターフェース手段」との記載がある

から,原告のいう相違点3−2は,相違点3−1の高解像度外部表示信号を送信す

る機能を実現するために,上記2つの要素の一方である,データ処理手段において

デジタル表示信号が生成される段階の一部を具体的に規定したものと理解すること

ができる。

したがって,相違点3−1と相違点3−2は,2つの独立した内容ではない。

また,本願明細書(【0126】【0127】)の記載からすると,第1実施

のグラフィックコントローラ(データ処理手段の構成要素)は,デジタル動画信号

における本来画像の描画命令に基づいて,「外部ディスプレイ装置の画面解像度と

同じ解像度を有し,外部ディスプレイ装置の画面に表示される画像」を生成してい

ると認められる。すなわち,データ処理手段が動画信号における本来画像を生成す

ることで,外部ディスプレイ装置の画面解像度と同じ解像度のビットマップデータ

が生成され,これがインターフェース手段に対応するTMDSトランスミッタを介

して,外部表示信号として送信されるから,本願明細書の記載からしても,相違点

3−1に係る点は,相違点3−2に係る機能によって実現されるものである。

また,本件審決には,原告のいう相違点3−2についての明記はないものの,出
力信号自体のみならず,出力信号を生成するための信号処理についても含意して,

相違点3に係る全ての構成について,進歩性の判断を示したものである。

したがって,原告の主張は失当である。

容易想到性について

(1) 原告は,相違点3に係る本願発明の構成は引用発明に周知例1ないし4及

び8に記載された発明を適用しても,当業者において,容易に想到することができ

たものではないと主張する。

しかし,原告のいう相違点3−2は,端末装置の入出力信号間の解像度の大小関

係等を考慮して,当業者が適宜選択すべき設計的事項にすぎない。すなわち,本願

発明の構成は,携帯情報通信端末(携帯電話等)が,無線動画信号を受信して,端

末内のデータ処理手段でデジタル表示信号を生成し,端末のディスプレイで表示す

ると共に,インターフェース手段から外部表示信号を出力するという構成である。

そして,端末の入力側(無線動画信号)と出力側(外部表示信号)の画像の解像度

が同じならば,端末のデータ処理手段において,画像を変換する必要はなく,入力

画像の解像度や画面サイズそのままの画像を生成して出力すれば十分であり,これ

が,本願発明の場合に相当する。

これに対し,入力側と出力側の画像の解像度が異なれば,端末内のデータ処理手

段で,画像の補間又は間引き,トリミング等の処理が通常必要になるが,画像を変

換すると,処理量が増え,画質が劣化する可能性があるから,当業者にとってみれ

ば,画像の変換はできるだけ避けるべきであることは明らかである。

本件出願に係る優先権主張日当時,携帯電話機に付属するディスプレイの解像度

より,テレビ放送の解像度は大きかったものであり(本願明細書【0008】),

その技術水準に鑑みれば,引用例には,ディスプレイの解像度よりも大きな画像で

あるVGA画像が入力され,その画像をあえて解像度変換することなく,そのまま

の解像度でアナログコンポジット信号として出力する技術が記載されているに等し

いといえる。引用例記載の技術が前提とする画像信号は静止画,動画を問わないも
のであるから(【0006】),引用例に接した当業者ならば,携帯電話のディス

プレイよりも大きな解像度の無線動画信号が入力され,その画像をあえて解像度変

換することなく,そのままの解像度でアナログコンポジット信号として出力する技

術を,直ちに想起するはずである。

また,画像の表示において,画像をできるだけ欠落することなく全体を表示する

ことにより,より高品質の画像を表示させるかどうかは,当業者が当然に配慮すべ

き事項である。引用発明の端末装置に,本件審決が認定した周知技術を付加した場

合,端末本体の表示よりも高い解像度で,外部出力が行われ,その際,本来画像の

全体画像そのままの画像を出力する信号を生成することによって,本願発明のよう

に,「データ処理手段は,無線動画信号の本来解像度が前記ディスプレイパネルの

画面解像度より大きい場合でも,デジタル動画信号をリアルタイムで処理すること

によって,及び/又は,デジタル動画信号を自らが処理可能な画像データファイル

として記憶手段に一旦格納し,その後読み出した上で処理することによって,無線

動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成する機能を有する」よう

に構成することは,端末装置が受けとった画像データの解像度と,端末装置の出力

端子に接続されたモニタの解像度の大小関係等を考慮して当業者が適宜選択すべき,

設計的事項である。

(2) また,次のとおり,本件審決が例示した周知例を引用発明に個別に組み合

わせた場合にも,相違点3に係る構成が容易に想到できたものである。

ア 周知例1について

原告は,無線動画信号(が変換されたデジタル動画信号)の処理と,撮像手段か

ら得られる画像データの処理とは異なるものであるなどとして,デジタルカメラに

関する周知例1には,相違点3−2に係る本願発明の構成は記載されていないと主

張する。

しかし,本願明細書において,テレビ放送等の動画,カメラ撮影画像等の各種画

像を同様に処理しているように(【0090】【0126】),無線動画信号等の
画像信号の種別は,解像度の大小関係等に基づくフォーマット変換処理の取捨選択

に直接関係するものではない。

また,周知例1には,横320×縦240の表示画素数を有するEVF(電子ビ

ューファインダ)やLCD(液晶ディスプレイ)を内蔵するデジタルカメラが,例

えば640×480の動画像サイズが選択された場合,外部に出力する動画像サイ

ズに適合した映像フォーマットとするために,外部表示装置の映像フォーマットを

525i(又は525p)に変更することや,動画像記録の際には,動画像の記録

サイズに応じて外部表示装置の表示解像度が設定され,撮影中の動画像が外部表示

装置に表示されることが記載されている(【0025】【0192】〜【020

0】)から,周知例1には,より高解像度の画像信号を外部出力するという,本件

審決の認定した周知技術が記載されているものである。

そして,周知例1に記載されたデジタルカメラでは,撮影する動画像サイズ(例

えば640×480)に合わせて,表示装置に出力する映像フォーマットを(例え

ば525i,すなわち,有効走査線480本)としているから(【0192】〜

【0199】),明記はないものの,入力画像をそのままのフォーマットで出力し

ているといえる。

また,周知例1には,入力側の撮影画像サイズと,出力側の表示装置の表示解像

度が等しければ,撮影画像をそのまま処理し,解像度が異なれば縮小処理を行うこ

とが記載されている(【0088】【0089】)。

したがって,引用発明の端末装置に,周知例1に記載された上記周知技術を付加

した場合,端末本体の表示よりも高い解像度で外部出力を行い,その際,例えば,

入力側の画像信号の本来画像の解像度に対して,出力側の外部表示装置が十分な大

きさの解像度を有していれば,本来画像の全体画像そのままのフォーマットの信号

を生成することは,端末装置の入出力信号間の解像度の大小関係等を考慮して,当

業者が適宜選択すべき設計的事項にすぎない。

イ 周知例2について
原告は,周知例2に記載されたデータ処理手段の主たる機能は,表示描写プログ

ラムに従って表示データを生成することであり,データ処理手段が外部から取得し

た画像信号を処理して表示信号を生成する機能を有することの記載はないとして,

周知例2には,相違点3−2に係る構成は記載されていないなどと主張する。

しかし,前記アのとおり,信号の種別は,解像度の大小関係等に基づくフォーマ

ット変換処理の取捨選択に直接関係しない。

また,周知例2に記載された携帯情報処理装置及び外部表示出力の制御方法は,

従来,外部表示機器を用いた場合には,画面の物理的な表示サイズが大きくなるだ

けであって,外部表示機器の解像度が内蔵した表示デバイスの解像度よりも高く,

より多くの情報を表示可能であったとしても,同じ情報を提供するだけとなってい

たとの課題に対処するために,外部表示装置は,内部表示装置よりも表示サイズが

大きく,かつ高解像度であるものが用いられ,内部表示装置と外部表示装置に対し

て,それぞれに応じた描画イメージを表示させるものとして構成されたものである

(【0005】〜【0008】【0017】〜【0020】【0033】〜【00

38】)から,周知例2には,より高解像度の画像信号を外部出力するという,本

件審決の認定した周知技術が記載されていると認められる。

そして,周知例2には,(外部)表示装置の解像度に合わせて画像を生成する機

能及び外部表示装置が例えば640×480の解像度を持つことが記載されている

(【0037】【0038】【0045】)。

したがって,引用発明の端末装置に,周知例2記載の上記の周知技術を付加した

場合,端末本体の表示よりも高い解像度(例えば640×480)で外部出力を行

い,その際,例えば,入力側の画像信号の本来画像の解像度に対して,出力側の外

部表示装置が十分な大きさの解像度を有していれば,本来画像の全体画像そのまま

のフォーマットの信号を生成することは,端末装置の入出力信号間の解像度の大小

関係等を考慮して,当業者が適宜選択すべき設計的事項にすぎない。

ウ 周知例3について
原告は,周知例3に記載された端末機の制御回路の機能は外部表示器の接続有無

の検出と表示信号の出力という一般的な事項だけであり,無線動画信号(を変換し

たデジタル動画信号)を処理して表示信号を生成する機能は記載されていないから,

周知例3には,相違点3−2に係る本願発明の構成は記載されていないなどと主張

する。

しかし,前記アのとおり,信号の種別は,解像度の大小関係等に基づくフォーマ

ット変換処理の取捨選択に直接関係しないものである。

また,周知例3には,従来の技術として,事務所等に設置されているコンピュー

タと電話回線を介してデータの送受信動作を行うように構成された携帯端末機が記

載され(【0002】),また,テレビ等の外部に設けられている外部表示器にデ

ータ信号を出力して表示させることが記載されている(【0004】)ところ,一

般に,電話回線には無線回線が含まれ,また,テレビで表示する画像には動画が含

まれることからすると,周知例3には,少なくとも「無線動画信号」の示唆がある

といえる。

そして,周知例3に記載された表示装置の表示動作は,低解像度である320×

240ドットにて行われ,外部表示器による表示動作は,640×480ドット表

示という高解像度信号により行われるから(【0016】【0017】【002

0】〜【0022】),周知例3には,より高解像度の画像信号を外部出力すると

いう,本件審決の認定した周知技術が記載されている。

したがって,引用発明の端末装置に,周知例3記載の周知技術を付加した場合,

端末本体の表示よりも高い解像度で外部出力を行い,その際,例えば,入力側の画

像信号の本来画像の解像度に対して,出力側の外部表示装置が十分な大きさの解像

度を有していれば,本来画像の全体画像そのままのフォーマットの信号を生成する

ことによって,相違点3に係る構成とすることは,端末装置の入出力信号間の解像

度の大小関係等を考慮して当業者が適宜選択すべき,設計的事項にすぎない。

エ 周知例4について
原告は,周知例4に記載された情報処理装置(PDA)の無線LANデバイスか

ら送信されるのは無線LAN信号であって,本願発明でいう外部表示信号ではない

とか,周知例4におけるPDAからワイヤレスプロジェクタへの送信は,コンピュ

ータからコンピュータへの送信であるなどとして,周知例4には,相違点3−2に

係る本願発明の構成は記載されていないなどと主張する。

しかし,周知例4のワイヤレスプロジェクタが,コンピュータ用の表示装置(周

辺装置)であり,外部の表示装置への信号が外部表示信号であることは明らかであ

り,周知例4に記載された実施形態において,無線接続の一方式として無線LAN

方式を用いていることをもって,周知例4のプロジェクタがコンピュータであると

はいえない。

また,前記アのとおり,信号の種別は,解像度の大小関係等に基づくフォーマッ

ト変換処理の取捨選択に直接関係しない。

そして,周知例4には,VGA(640×480)の1/4の解像度であるQV

GAスライドデータをLCDに表示しながら,そのQVGAスライドデータの生成

に使用されたオリジナルのVGAスライドデータをワイヤレスプロジェクタに送信

することが記載されている(【0010】〜【0015】【0027】【002

8】)から,周知例4には,オリジナルのより高解像度(例えば640×480の

解像度)の画像信号を外部出力するという,本件審決の認定した周知技術が記載さ

れていると認められる。

したがって,引用発明の端末装置に,周知例4記載の周知技術を付加した場合,

端末本体の表示よりも高い解像度(例えば640×480)で外部出力を行い,そ

の際,例えば,入力側の画像信号の本来画像の解像度に対して,出力側の外部表示

装置が十分な大きさの解像度を有していれば,本来画像の全体画像そのままのフォ

ーマットの信号を生成することは,端末装置の入出力信号間の解像度の大小関係等

を考慮して当業者が適宜選択すべき,設計的事項にすぎない。

オ 周知例8について
原告は,周知例8において,「最後まで復元処理」されているのは,符号化され

た静止画像であって,無線動画信号(を変換したデジタル動画信号)ではないなど

として,周知例8には,相違点3−2に係る本願発明の構成は記載されていないな

どと主張する。

しかし,周知例8(【0002】)には,静止画と動画が記載されているととも

に,「放送波などの伝送媒体を通じた」との記載もあるから,周知例8に記載され

た画像復元方法及び装置の範疇には,無線画像や動画も含まれる。

また,周知例8(【0030】)には,「高い解像度が要求される大型LCDや

プリンタから…」と記載されているから,原告が指摘する【0033】の「プリン

タ」との記載は一例にすぎない。

さらに,周知例8(【0009】)には,「当然復号が完了して…」と記載され

ているとおり,周知例8に記載された発明において,復号の終了は回避されている

ものではない。

そして,周知例8には,より高解像度の画像信号(例えば640×480の中間

画像,1280×960の原画像)を外部出力するという,本件審決の認定した周

知技術が記載されている(【0018】【0030】【0033】【0057】〜

【0059】)。

したがって,引用発明の端末装置に,周知例8記載の周知技術を付加した場合,

端末本体の表示よりも高い解像度で外部出力を行い,その際,周知例8のテレビジ

ョン受信機が,放送局で符号化され送信された画像及び音声データを復号して外部

出力する構成を採用し,入力側の画像信号の本来画像の解像度に対して,出力側の

外部表示装置が十分な大きさの解像度を有していれば,本来画像の全体画像そのま

まの原画像を生成することは,端末装置の入出力信号間の解像度の大小関係等を考

慮して,当業者が適宜選択すべき設計的事項にすぎない。

第4 当裁判所の判断

1 本願発明について
(1) 本願発明は,前記第2の2に記載のとおりであるところ,本願明細書(甲

9,11)には,本願発明について,概略,次のような記載がある。

ア 本発明は,携帯電話機などの携帯情報処理装置に関するものである(【00

01】)。

イ 携帯情報通信装置では,携帯性が重視され,大きいサイズのディスプレイを

付属させることができないため,携帯電話機の画面サイズは最大でも2.5インチ

程度であり,画面解像度は最大でもQVGAサイズ(水平画素数×垂直画素数=2

40×320画素)となっている。携帯電話機にはこのような画面上の制約があり,

電子メールやウェブページの閲覧に制約を受けるため,ユーザは,携帯情報通信装

置とともにパソコンを所有することも多く,二つを使い分けたり,パソコンと携帯

情報通信装置を接続し,ネットワークへの接続のためだけに携帯情報通信装置の無

線通信手段を使用し,無線通信手段によって取得されたデータの処理は,専らパソ

コンで行ったりという使い方がされる。しかし,パソコンは,通常は,電子メール

の送受信やウェブページの閲覧等に限定されない汎用的な用途に使用できるように

設計されており,パソコンを所有するコストは携帯情報通信装置自体を所有するた

めに要するコストより通常大きいため,携帯情報通信装置の付属ディスプレイの画

面サイズ・解像度が小さいことに起因する不便さを解消するためだけにパソコンを

所有することは,経済的に不合理である。また,携帯情報通信装置のデータ処理手

段は,付属ディスプレイに画像を表示するための表示データ処理機能については,

表示画面が小さいということを除けば,パソコンにおけるCPU等のプロセッサの

機能に匹敵するから,パソコンと携帯情報通信装置との使い分けを行うとすれば,

同種のものに二重投資を行うことになり,資源の効率的な利用の観点からも好まし

くない(【0004】〜【0010】)。

同様の問題は,携帯情報通信装置がテレビチューナ機能を有する場合についても

生ずる(【0011】(【0012】)。

ウ 以上の課題を解決するため,携帯情報通信装置に付属ディスプレイよりも画
面が大きい外部ディスプレイ装置を接続することにより,大画面外部ディスプレイ

装置で画像を表示する技術がいくつか開示されているが,そのうち,携帯情報通信

装置と汎用的な大画面外部ディスプレイ装置だけで構成される技術として既に実用

化されているものには,TV出力機能又はAV出力機能を有する携帯電話機がある。

その場合にテレビモニタに表示される画像の解像度は,付属ディスプレイの画面解

像度(最大でもQVGA)と同じであるため,その画像は,テレビモニタの中央部

に小さく表示されるか,画質の粗い拡大画像が全画面に表示されるかのいずれかで

ある(【0014】【0019】【0020】)。

そこで,上記の課題を解決するためには,上記の携帯電話機のように,単に付属

ディスプレイに表示される画像を大画面外部ディスプレイ装置に拡大表示するとい

う機能を有するにとどまらず,付属ディスプレイの画面解像度よりも解像度が大き

い画像を大画面外部ディスプレイ装置に表示する機能を有する携帯情報通信装置を

提供することが必要であり,これにより,付属ディスプレイではその画面解像度に

相当する部分だけを切り出した部分画像しか表示できなかったり,画素を間引くこ

とによって画質を落とした全体画像しか表示できなかったりした画像を,大画面外

部ディスプレイにおいては,本来の解像度のままの全体画像として表示できるよう

になる(【0022】)。

本願発明の目的は,より一般的には,携帯情報通信装置に大画面ディスプレイ手

段を含む周辺装置及び/又は大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置を接続

することにより,大画面ディスプレイ手段において,付属ディスプレイの画面解像

度よりも解像度が大きい画像を表示することを,大画面外部ディスプレイ手段向け

の専用の表示データ生成手段を,付属ディスプレイに画像を表示するためにもとも

と必要である表示データ生成手段とは別個に使用することなく,大画面ディスプレ

イ手段を含む周辺装置及び/又は大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置と

の間のインターフェース手段の追加と,付属データ生成手段への若干の機能追加だ

けで実現する携帯情報通信装置を提供する点にある(【0031】)。
エ 本願発明に係る携帯情報通信装置においては,携帯情報通信装置のインター

フェース手段に高解像度外部ディスプレイ手段を含む周辺装置及び/又は外部ディ

スプレイ手段が接続される周辺装置を接続して高解像度外部表示信号を送信するこ

とにより,高解像度外部ディスプレイ手段の画面において,携帯情報通信装置に付

属するディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する高解像度画像を

表示することができる。これにより,付属ディスプレイパネルにおいては,その画

面解像度に相当する部分だけを切り出した部分画像しか表示できなかったり,画素

を間引くことによって画質を落とした全体画像しか表示できなかったりしたような

画像を,高解像度外部ディスプレイ手段においては,その本来の解像度のままの全

体画像として表示できるようになる。しかも,そのような高解像度外部表示信号の

送信は,付属ディスプレイパネルにおいて画像を表示するためにもともと必要であ

るデータ処理手段と,外部ディスプレイ手段を含む周辺装置及び/又は外部ディス

プレイ手段が接続される周辺装置を接続するために不可欠のインターフェース手段

だけによって実現されている。このため,従来の技術のように,携帯情報通信装置

に備えられた表示データ処理手段とは別に,外部ディスプレイ手段を含む周辺装置

向けの専用の表示データ生成手段を設ける必要はなく,不合理な二重投資や非効率

な資源利用の問題は回避できる(【0078】)。

(2) 以上の記載からすると,本願発明は,携帯情報通信装置に大画面ディスプ

レイ手段を含む周辺装置及び/又は大画面ディスプレイ手段が接続される周辺装置

を接続することにより,大画面外部ディスプレイ手段において,付属ディスプレイ

の画面解像度よりも解像度が大きい画像を表示することを,大画面外部ディスプレ

イ手段向けの専用の表示データ生成手段を付属ディスプレイに画像を表示するため

にもともと必要である表示データ生成手段とは別個に使用することなく,上記のよ

うな周辺装置と間のインターフェース手段の追加と,付属表示データ生成手段への

若干の機能追加により実現するというものであり,従来技術のように,携帯情報通

信装置に備えられた表示データ処理手段とは別に,外部ディスプレイ手段を含む周
辺装置向けの専用の表示データ生成手段を設ける必要はなく,不合理な二重投資や

非効率な資源利用の問題を回避することができるとの効果を奏するというものであ

る。

2 引用発明について

(1) 引用発明は,前記第2の3(2)ア記載のとおりであるところ,引用例(甲

1)には,引用発明について,概略,次のような記載がある。

ア 本発明は,表示部に表示する画像をTV等の外部の表示装置に表示できるよ

うにした携帯電話機及び携帯電話機システムに関するものである(【0001】)。

イ 従来の携帯電話機は,制御部により,キーマトリクス部が出力するキー情報

と,カメラ部と無線部とが出力する画像データとを画像信号に変換し,表示部によ

り,この画像信号に対応する画像を表示しているため,画像データを携帯電話機の

表示部で表示した画像によってのみしか見ることができなかった。しかし,携帯電

話機の表示部は小さいため,カメラ部や無線部等から取得した画像などを多数の人

が同時に見ることができず,また,表示画像が小さいため,よく見えない,文字が

はっきりわからない,画像に迫力が感じられないなどという問題があった(【00

07】)。

本発明の目的は,このような従来の欠点を除去するため,カメラ部や無線部等か

ら取得した画像等を多数の人が同時に見ることができ,表示画像がよく見え,画像

に迫力が感じられる携帯電話機及び携帯電話機システムを提供することにある

(【0008】)。

ウ 発明の実施の形態

制御部は画像処理部とメモリとCPUとにより構成する。

制御部のCPUは,メモリに格納した第1の画像データと無線部が出力する第2

の画像データとキーマトリクス部が出力するキー情報とを画像信号に変換して表示

部に出力する。表示部は,制御部がそれぞれ出力する画像信号を受けて画像を表示

する。変換部は,制御部が出力する画像信号をテレビ用の画像信号であるアナログ
コンポジット信号に変換して出力する。このアナログコンポジット信号は出力端子

を介して携帯電話機の外部に出力される。そして,ケーブル等によりこの携帯電話

機の出力端子とテレビジョンとを接続することにより,変換部が出力したアナログ

コンポジット信号をテレビジョンのモニタに表示することができる(【0018】

【0020】【0021】)。

エ 本発明の携帯電話機によれば,表示部により,制御部が出力する画像信号を

受けて画像を表示し,変換部により,制御部が出力する画像信号をテレビ用の画像

信号であるアナログコンポジット信号に変換して出力するため,ケーブル等により

携帯電話機とテレビジョンとを接続することにより,携帯電話機が出力したアナロ

グコンポジット信号をテレビジョンのモニタに表示することができるので,カメラ

部や無線部等から取得した画像などを多数の人が同時に見ることができ,表示画像

がよく見え,画像に迫力が感じられるようになる(【0041】)。

(2) 以上の記載からすると,引用発明は,従来の携帯電話機では,表示部が小

さなものであるため,カメラ部や無線部等から取得した画像等を多数の人が同時に

見ることができない上,文字がはっきりわからない,画像に迫力が感じられないな

どといった問題もあったことから,画像を表示部に表示するほか,制御部が出力す

る画像信号を変換部によりテレビ用の画像信号であるアナログコンポジット信号に

変換して出力し,ケーブル等により携帯電話機とテレビジョンとを接続することに

より,携帯電話機が出力したアナログコンポジット信号をテレビジョンのモニタに

表示することにより,カメラ部や無線部等から取得した画像などを多数の人が同時

に見ることができ,表示画像がよく見え,画像に迫力が感じられるものになるとい

うものである。

3 周知例について

(1) 周知例1について

ア デジタルカメラに関する周知例1(甲2)には,概略,次のような記載があ

る。
(ア) 本発明は,デジタルカメラにおいて,画像の表示処理を行う際の画像表示

技術に関するものである(【0001】)。

(イ) 従来は,撮影画素数が300万画素以上であるような高画素デジタルカメ

ラに外部表示装置を接続しても,撮影画素数を活かした高精細な画像表示を行うこ

とができなかったが,近年では,高精細な画像表示が可能なデジタルテレビの普及

に伴い,デジタルテレビに接続してデジタルカメラの画素数を活かした画像表示を

行うことが可能なデジタルカメラが出現しつつある。しかし,従来のデジタルテレ

ビ対応デジタルカメラでは,撮影待機状態におけるライブビュー表示においては,

デジタルカメラからデジタルテレビに対して従来の映像フォーマットに変換した上

で映像出力されるため,依然としてデジタルテレビの表示解像度を活かした高精細

な画像表示を行うことができないという問題があった。また,撮影によって得られ

た撮影画像を再生表示する場合,デジタルテレビが接続された際に,撮影画像デー

タに対する縮小処理等を行って再生表示を行うため,再生表示の際の処理効率が悪

く,再生指示を行っても直ちに再生表示されないという問題があった。本発明は,

デジタルカメラがデジタルテレビにおいて最適な画像表示を行うことを可能にする

技術の提供を目的とするものである(【0003】〜【0010】)。

(ウ) 本発明に係るデジタルカメラの解像度変換部は,外部表示装置が接続され

ていない場合には,例えば,EVF又はLCDの表示画素数に適合した横320×

縦240の画素数を有する画像データを生成し,外部表示装置が接続されている場

合には,表示装置の表示解像度に適合した画素数を有する画像データを生成する

(【0039】)。

(エ) 撮影画像サイズが表示装置の表示解像度より小さい場合には,撮影画像を

拡大処理して表示解像度に適合させ,それを表示用画像メモリに格納する。そして,

表示切替部及び通信回路の機能によって,表示装置に出力する(【0087】)。

撮影画像サイズが表示装置の表示解像度に等しい場合には,撮影画像をそのまま

表示用画像メモリに格納する。そして,表示切替部及び通信回路の機能によって,
表示装置に出力する(【0088】)。

撮影画像サイズが表示装置の表示解像度よりも大きい場合は,撮影画像を縮小処

理して表示解像度に適合させ,それを表示用画像メモリに格納する。そして,表示

切替部及び通信回路の機能によって,表示装置に出力する(【0089】)。

(オ) デジタルカメラは,動画記録を行う場合,動画像のサイズを選択可能なよ

うに構成される。動画記録モード開始時には,動画像サイズ選択画面を参照しつつ,

ユーザが予め動画像の記録サイズを設定する。そして全体制御部は,ユーザによっ

て指定された動画記録の記録サイズに基づいて,表示装置の映像フォーマットを変

更する。全体制御部は,ROMに格納されたテーブルデータを参照し,動画像サイ

ズに適合した映像フォーマット(表示解像度)を特定する。動画像記録の際には,

動画像の記録サイズに応じて表示装置の表示解像度が設定され,撮影中の動画像が

表示装置に表示されることになる(【0192】【0194】【0200】)。

イ 以上のとおり,周知例1には,デジタルカメラの全体制御部及び解像度変換

部において,外部表示装置が接続されている場合に,外部表示装置の表示解像度に

適合した画素数を有する画像データを生成すること,撮影画像サイズが外部表示装

置の表示解像度に等しい場合は,撮影画像をそのまま外部表示装置に出力すること,

動画像を撮影し,これを表示装置に表示することが記載されている。

(2) 周知例4について

ア 情報処理装置及び画像データ送信方法に関する周知例4(甲5)には,概略,

次のような記載がある。

(ア) 本発明は,PDAのような情報処理装置及び同装置で用いられる画像デー

タ送信方法に関するものである(【0001】)。

(イ) プレゼンテーションを行う場合には,様々な画面イメージを投影すること

が望ましいが,一般にPDAのような携帯型情報処理装置に設けられる表示装置の

解像度は小さいため,表示装置に表示される画面イメージをそのままプロジェクタ

に送信したならば,スクリーンには非常に粗い画像が表示されてしまうので,高画
質の画面イメージをプロジェクタのような外部機器を用いて表示することが可能な

情報処理装置及び画像データ送信方法を提供することを目的とする(【0005】

〜【0007】)。

(ウ) 発明の実施の形態

PDAは,移動端末として機能する携帯型情報処理装置であり,無線LANデバ

イスを備えている(【0010】)。

無線プレゼンテーション機能は,PDAによって実行されるプレゼンテーション

プログラムによって描画される画面イメージデータをワイヤレスプロジェクタの投

影スクリーン上に表示する機能である。プレゼンテーションプログラムはスライド

ショーを実行するアプリケーションプログラムであり,VGA(640×480)

サイズの画面イメージデータをスライドデータ(VGAスライドデータ)として生

成することができる。VGAスライドデータをPDAの表示装置に表示する際には,

表示装置の表示解像度に対応する画面イメージデータに変換される。表示装置の表

示解像度は,VGA(640×480)の1/4の解像度であるQVGA(320

×240)である。よって,VGAスライドデータを構成する画面イメージは1/

4に縮小された後に表示装置に表示される(【0011】)。

PDAにインストールされているワイヤレスユーティリティプログラムは,無線

プレゼンテーションを制御するためのプログラムである。ワイヤレスユーティリテ

ィプログラムは,プレゼンテーションプログラムがディスプレイドライバを介して

ビデオメモリ(VRAM)に描画したVGAスライドデータをキャプチャし,その

VGAスライドデータを無線LANデバイスを用いてワイヤレスプロジェクタに無

線信号によって送信する(【0013】)。

表示コントローラは,オンスクリーンエリアからQVGAスライドデータを読み

出し,それをLCDに表示する。ワイヤレスユーティリティプログラムは,QVG

Aスライドデータではなく,プレゼンテーションプログラムによって生成されたV

GAスライドデータをディスプレイドライバを介してオフスクリーンエリアから読
み出し,それを無線LANデバイスに送信データとして供給する(【0027】)。

以上の処理により,図4に示すように,QVGAスライドデータをLCDに表示

しながら,そのQVGAスライドデータの生成に使用されたオリジナルのVGAス

ライドデータをワイヤレスプロジェクタに送信することが可能となる。VGAスラ

イドデータをワイヤレスプロジェクタに送信することにより,QVGAスライドデ

ータをワイヤレスプロジェクタに送信するよりも,高画質のスライドデータをワイ

ヤレスプロジェクタのスクリーンに表示することができる(【0028】)。

イ 以上のとおり,周知例4には,PDAとワイヤレスプロジェクタを接続して,

PDAのプレゼンテーションプログラムによって生成されたスライドデータを表示

するに当たり,VGA(640×480)の1/4の解像度であるQVGAスライ

ドデータをPDAのLCDに表示しながら,そのQVGAスライドデータの生成に

使用されたオリジナルのVGAスライドデータをワイヤレスプロジェクタに送信す

ることにより,PDAのような携帯型情報処理装置において,外部機器に高画質の

オリジナルデータを表示することが記載されている。

(3) 上記のような周知例1及び4の各記載からすると,一般に,デジタルカメ

ラやPDA等の携帯型端末において,内部の表示手段には,スペース,解像度等に

制約があるため,解像度,表示面積に優れた外部機器を接続し,内部表示装置に表

示されるものと比べて高解像度の画像信号を端末より出力させ,当該携帯型端末に

接続された外部の表示装置に高解像度の画像を表示させることは周知技術であると

いうことができる。

また,周知例1では,撮影画像サイズが外部表示装置の表示解像度に等しい場合

には,撮影画像をそのまま外部表示装置に出力することが記載され,周知例4では,

VGA(640×480)の1/4の解像度であるQVGAスライドデータをPD

AのLCDに表示しながら,そのQVGAスライドデータの生成に使用されたオリ

ジナルのVGAスライドデータをワイヤレスプロジェクタに送信することが記載さ

れているように,データ処理手段が本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成
することも,周知の技術であったということができる。

なお,周知例2,3及び8においては,通信端末装置の本体側の表示装置の画像

サイズより外部側の表示装置の画像サイズの方が大きなものとされていることは記

載されているものの,いずれも通信端末装置に入力されたデータの内容や画像サイ

ズについての明確な記載を欠いているから,「無線動画信号の本来画像の全体画像

のデジタル信号表示を生成する機能を有する」という相違点3に係る本願発明の構

成の周知性を裏付ける文献として適当なものということはできない。

容易想到性について

(1) 原告が主張するとおり,本件審決が認定した相違点3は,@本願発明では,

インターフェース手段から「高解像度外部表示信号」が送信されるのに対して,引

用発明では,「高解像度」外部表示信号を出力することについて記載がない点(相

違点3−1)と,A本願発明では,「データ処理手段は,前記無線動画信号の本来

解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい場合でも,無線動画信号

の本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成する機能を有する」のに対し,引

用発明では,「データ処理手段が無線動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表

示信号を生成する機能を有する」ことについて記載がない点(相違点3−2)に分

けることができるとしても,前記3(3)のとおり,携帯型端末の分野において,内

部の表示手段には,スペース,解像度等に制約があるため,解像度,表示面積に優

れた外部機器を接続し,内部表示装置に表示されるものと比べて高解像度の画像信

号を端末より出力させ,当該携帯型端末に接続された外部の表示装置に高解像度の

画像を表示させること及びデータ処理手段が本来画像の全体画像のデジタル表示信

号を生成することは,いずれも本件出願に係る優先権主張日当時の周知の技術であ

ったものである。

また,画像信号を記憶手段に一旦格納することは,通信端末装置の技術分野にお

いて,一般に行われている技術である(周知例7【0005】【0007】【00

08】)。
そして,引用発明は,携帯型端末の一種である携帯電話機の出力端子と外部の表

示装置であるテレビジョンとを接続し,テレビ用の画像信号であるアナログコンポ

ジット信号をテレビジョンのモニタに表示することによって,「多数の人が同時に

見ることができ,表示画像がよく見え,画像に迫力が感じられるよう」にするとい

うものであるが,本件出願に係る優先権主張日当時には,既にデジタルテレビも普

及しており(周知例1【0004】),デジタルテレビに画像を表示する際に,そ

の画面の大きさ,画像解像度に適合したデジタルテレビ用の画像信号(デジタル表

示信号)を生成・出力することは,外部装置の種類・性能に応じて適切な方法を選

択するものであって,設計事項であるということができる。そうすると,引用発明

における外部の表示装置についてデジタルテレビを採用し,携帯電話機から出力す

る信号の具体的な処理方法として,前記の周知技術を適用して,相違点3に係る本

願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものであるとい

うことができる。

(2) 原告の主張について

ア 本件審決の論理付けについて

原告は,相違点3に係る判断において,本件審決が周知技術と認定しているのは,

相違点3−1に係る本願発明の構成であり,相違点3−2に係る本願発明の構成で

ある「データ処理手段が無線動画信号の本来画像の全体画像のデジタル表示信号を

生成する機能を有すること」の周知性は主張,立証されていないから,引用発明に

ついて,相違点3に係る本願発明の構成とすることが容易に想到することができる

とした判断は誤りであると主張する。

確かに,本件審決は,相違点3について,高解像度外部表示信号を出力すること

などを周知技術として認定した上で,「そして,引用発明も,外部の機器を接続し,

「多数の人が同時に見ることができ,表示画像がよく見え,画像に迫力が感じられ

るよう」にするもので,その具体的な信号の処理として,当該周知技術を採用し,

相違点3に係る構成とすることには当業者が容易になし得ることである。」と説示
しているのであって,携帯情報通信装置において,外部ディスプレイ手段に送信す

るため,本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成するという技術についての

具体的な記述はない。

しかしながら,前記のとおり,携帯型端末の分野においては,本来画像の全体画

像のデジタル表示信号を生成することも周知の技術である。そして,本件審決のい

う前記「具体的な信号の処理」は,動画信号の本来解像度が付属のディスプレイパ

ネルの画面解像度より大きい場合であることを前提として,携帯電話機に外部の機

器を接続することによって,多数の人が同時に見ることができ,迫力が感じられる

ような画像とするための具体的な信号の処理をいうものであるから,本来画像の全

体画像のデジタル表示信号を生成することについても含意しているということがで

きるのであり,本件審決の説示が違法であるということはできない。

したがって,原告の主張は,採用することができない。

イ 周知例1について

原告は,周知例1は撮像手段から得られる画像データの本来画像の全体画像の表

示信号であって,無線動画信号の本来画像の全体画像の表示信号ではない旨主張す

る。

しかしながら,本願明細書(甲9,11)においても,「ウェブサイトからダウ

ンロードした画像,テレビ放送等から録画した動画及びゲームプログラム等のコン

テンツ,デジタルカメラやデジタルビデオ等の撮像手段を用いて生成された画像フ

ァイルを」(【0090】)とか,「ウェブページを閲覧している場合には,…次

に,テレビ放送を視聴している場合,又は被写体を撮影している場合にも,デジタ

ル動画信号における本来画像の解像度は,外部ディスプレイ装置の画面解像度を超

えることはないため,中央演算回路においては,デジタル動画信号における本来画

像の描画命令が生成・送信される。」(【0126】)などと記載されているよう

に,信号の種別は,解像度の変換処理に直接関係するものではない。

したがって,原告の上記主張は,本来画像の全体画像のデジタル表示信号を生成
するという周知例1に記載された技術の引用発明に対する適用を妨げるものではな

く,これを採用することはできない。

ウ 周知例4について

原告は,周知例4のPDAからワイヤレスプロジェクタに送信されるのは無線L

AN信号であって外部表示信号ではないとか,ワイヤレスプロジェクタはコンピュ

ータであるから,本願発明のようにデータ処理手段を備えない外部ディスプレイ手

段に送信する外部表示信号とは異なるなどと主張する。

しかしながら,前記3(2)のとおり,周知例4に記載されたオリジナルのVGA

スライドデータは,PDAからワイヤレスプロジェクタに送信される信号であるか

ら,これも外部表示信号であるということができる。

また,本願発明には,外部ディスプレイ手段がデータ処理手段を備えないもので

あるとの記載はない。したがって,周知例4のワイヤレスプロジェクタがデータ処

理手段を備えていることは,引用発明に本来画像の全体画像のデジタル表示信号を

生成するという周知例4に記載された技術を適用して,相違点3に係る本願発明の

構成とすることができるという上記判断を左右するものではない。

エ 原告は,引用例には,制御部と表示部との間に何らかの解像度変換を行う手

段が介在することの記載や示唆はなく,制御部と変換部は直接接続されているから,

本件出願に係る優先権主張日当時に引用例に接した当業者は,制御部から変換部に

出力される表示信号の本来解像度は,表示部の画面解像度に一致していると考える

はずであるなどと主張する。

しかしながら,前記のとおり,本件優先権主張日当時,携帯型端末の分野におい

て,内部の表示手段には,スペース,解像度等に制約があるため,解像度,表示面

積に優れた外部機器を接続し,内部表示装置に表示されるものと比べて高解像度の

画像信号を端末より出力させ,当該携帯型端末に接続された外部の表示装置に高解

像度の画像を表示させること及びデータ処理手段が本来画像の全体画像のデジタル

表示信号を生成することは,いずれも周知の技術であったから,引用例に接した当
業者であれば,引用発明にこれらの周知技術を適用して,相違点3に係る本願発明

の構成とすることは,容易に想到することができたものというべきであり,原告の

主張は,採用することができない。

5 結論

以上の次第であるから,原告主張の取消事由は理由がなく,本件審決にこれを取

り消すべき違法は認められない。

したがって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のと

おり判決する。

知的財産高等裁判所第4部



裁判長裁判官 富 田 善 範




裁判官 大 鷹 一 郎




裁判官 齋 藤 巌