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事件 平成 25年 (行コ) 10001号 特許分割出願却下処分取消請求控訴事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2013/09/10
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成25年9月10日判決言渡

平成25年(行コ)第10001号 特許分割出願却下処分取消請求控訴事件(原

審・東京地方裁判所平成24年(行ウ)第383号)

口頭弁論終結日 平成25年7月16日

判 決



控 訴 人 ( 原 告 ) アイピーコム ゲゼルシャフト

ミット ベシュレンクテル ハフツング

ウント コンパニー

コマンディートゲゼルシャフト



訴訟代理人弁護士 片 山 英 二

服 部 誠

岩 間 智 女

補 佐 人 弁 理 士 相 田 義 明

蟹 田 昌 之



被控訴人(被告) 国

代 表 者 法 務 大 臣

処 分 行 政 庁 特 許 庁 長 官

指 定 代 理 人 加 藤 誠 一

玉 田 康 治

佐 藤 一 行

上 田 智 子



主 文




本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日

と定める。



事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。

2 特許庁長官が,特願2011−027458号について,平成23年6月2

日付け(発送日同月16日)でした出願却下の処分を取り消す。



第2 事案の概要

1 控訴人(原告)は,平成12年2月15日,ドイツ特許庁を受理官庁として,

同日にされた特許出願とみなされる国際出願(本件原々出願)をした後,平成22

年6月8日,本件原々出願の一部を新たな特許出願(本件原出願)とし,さらに,

本件原出願の特許査定の謄本の送達があった後である平成23年2月10日に至っ
て,本件原出願の一部を新たな特許出願とする出願(本件出願)をした。

本件出願につき,特許庁長官は,平成18年法律第55号(平成18年改正法)

による改正前の特許法44条(平成14年法律第24号〈平成14年改正法〉によ

る改正後のもの。旧44条)1項に規定する期間の経過後にされた出願であるとし

て出願却下の本件却下処分をした。本件は,控訴人が本件却下処分の取消しを求め

るものである。

原判決は,本件却下処分に違法はないとして,控訴人の請求を棄却した。

2 本件却下処分までの経緯等は次のとおりである。

(1) 控訴人は,平成12年2月15日,ドイツ特許庁を受理官庁として本件国

際出願をした。




(2) 本件国際出願は,千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許

協力条約4条(1)
(A)の指定国に日本国を含むものであるから,特許法184条

の3第1項により,本件国際出願日にされた特許出願(特願2000−60463

4号。本件原々出願)とみなされる。

(3) 特許庁長官は,平成22年1月8日,控訴人に対し,本件原々出願につい

て,拒絶理由を通知した。

(4) 控訴人は,同年6月8日,本件原々出願の一部を新たな特許出願(特願2

010−130883号。本件原出願)とした。

(5) 特許庁長官は,平成23年1月28日,本件原出願について特許査定をし

た。上記査定の謄本の送達は,工業所有権に関する手続等の特例に関する法律5条

1項本文,同法施行規則23条の4第10号により電子情報処理組織を使用して行

われ,同日,控訴人の特許出願代理人の使用に係る電子計算機に備えられたファイ

ルに記録がされた(同法5条3項,4項により,同日に,上記謄本が控訴人に送達

されたものとみなされる。。


(6) 控訴人は,同年2月10日,本件原出願の一部を新たな特許出願(特願2

011−027458号。本件出願)とした。
(7) 特許庁長官は,同月28日付けで,控訴人に対し,本件出願が旧44条

項に規定する期間の経過後にされた出願であることを理由に,出願却下となる旨を

通知した(却下理由通知書発送日平成23年3月2日)。

(8) 控訴人は,同年4月1日,弁明書を提出した。

(9) 特許庁長官は,同年6月2日付けで,控訴人に対し,上記弁明書の弁明の

内容を考慮しても本件出願は不適法であり,上記(7)の却下理由を覆す根拠は見いだ

せないとして,本件却下処分をした(発送日同月16日)。

(10) 控訴人は,本件却下処分を不服として,同年8月12日付けで,行政不

服審査法に基づく異議申立てをしたが,特許庁長官は,同年12月26日付けで同

申立てを棄却する決定をし,同決定は同月28日に控訴人の特許出願代理人に送達




された。

3 関係法令は,原判決2頁以下の第2の1に示されているとおりである。

4 本件の争点は,本件出願が本件原出願からの分割出願として可能な期間内に

されたか否かである。すなわち,この分割可能期間を平成18年改正後の特許法4

4条(新44条)1項によって律するのか,同改正前の旧44条1項によって律す

るのかが争点である。



第3 控訴人の主張

1 平成18年改正後の特許法44条(新44条)は,分割出願をするには,改

正前には,原出願の願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面について補正

できる期間内である必要があったのを,原出願の特許査定の謄本の送達があった日

から30日までとした。

本件原々出願は,平成18年改正法の施行より前にされているが,本件原出願と

本件出願のいずれも現実の出願は,同年改正法の施行より後にされている。控訴人

は,以下の根拠により本件出願には新44条が適用されると主張するものであると

ころ,本件出願は本件原出願の謄本の送達があったとみなされる平成23年1月2
8日から起算して30日以内である同年2月10日にされたので,適法にされたも

のである。

2 平成18年改正法附則3条1項に定める「この法律の施行後にする特許出願」

とは,その文理上,平成18年改正法の施行後にした「現実の出願」をいうものと

解釈するのが素直である。そして,新44条1項は,特許出願の一部を一又は二以

上の新たな特許出願とすることができる要件を定めたものであり,分割出願は同項

に基づいてなされる独立した特許出願であることからすると,当該出願が分割出願

である場合には,
「この法律の施行後にする特許出願」とは,平成18年改正法の施

行後になされた分割出願を指すと解すべきである。

このことは,以下の点からも裏付けられる。すなわち,平成18年改正法附則3




条1項に挙げられている条文(44条を除く)は,それぞれ,補正(特許法17条

の2,17条の353条),特許出願(特許法36条の2),優先権主張(特許

41条),実用新案登録に基づく特許出願(特許法46条の2),拒絶査定・拒

絶理由の通知(特許法49条から50条の2),拒絶査定不服審判(特許法159

条,163条)に関する規定であり,いずれも特許査定前の手続に関する規定であ

る。これらは,分割出願を含む特許出願一般について定めた規定であるから,これ

らの規定との関係では,平成18年改正法附則3条1項にいう「この法律の施行後

にする特許出願」は,各手続の対象となる特許出願を指し,当該特許出願が分割出

願である場合であっても,その原出願を指すのではないことに疑問の余地はない。

3 上記のように,平成18年改正法附則3条1項の「この法律の施行後にする

特許出願」該当性を,現実の出願日を基準に判断した場合,新44条1項に基づき

分割された分割出願には,分割制度の濫用防止のために改正された平成18年改正

後の特許法17条の250条の253条等が必ず適用されることになるから,

分割出願の時期的要件を緩和するとともに分割制度の濫用を防止しようとした平成

18年改正法の趣旨に反するものではない。むしろ,平成18年改正法は旧法下の

プラクティスで生じていた手続の無駄を解消しつつ,出願人の実効的な権利取得を
支援することを目的としたものであるから,旧法下で行われた出願に由来する出願

であっても,旧法下で行われた手続の法的安定性を害するなどの弊害が生じない限

りは,旧法の弊害を排除すべく,改正法の適用を広く認めることが望ましいといえ

る。

4 百歩譲って,平成18年改正法附則3条1項にいう「この法律の施行後にす

る特許出願」は,分割に係る「もとの特許出願」をいうと考えたとしても,本件に

おいては,本件出願に係る「もとの特許出願」が平成18年改正法施行後になされ

た本件原出願であるから,本件原出願は同項にいう「この法律の施行後にする特許

出願」に該当することになる。そうすると,さらに,
分割出願は,当然に,あるい

は新44条2項(または旧44条2項)により,原出願の時にしたものとみなされ




る。そして,現実の出願が平成18年改正法施行後になされた特許出願であっても,

その出願が同法施行前になされたとみなされるものであれば,附則3条1項にいう

『この法律の施行後にする特許出願』にあたらない。」ことが成り立たねば,本件却

下処分はやはり違法とされるべきである。

分割出願が「この法律の施行後にする特許出願」に該当するか否かを判断する場

合に,新44条2項(あるいは旧44条2項)を適用して遡及した出願日を基準に

判断すると,次のような不都合が生ずる。すなわち,新44条2項は,「前項の場

合は,新たな特許出願は,もとの特許出願の時にしたものとみなす。」と定めて,

44条1項の要件を満たす場合に限って出願日の遡及を認め(旧44条2項も同

旨),新44条1項は「特許出願人は,次に掲げる場合に限り,二以上の発明を包

含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。」と

定めているから(旧44条1項も同旨),出願日の遡及が認められるためには,分

割出願が「二以上の発明を包含する特許出願の一部」であるという実体的要件を満

たすことが必要である。しかしながら,実体的要件の判断はしばしば容易ではなく,

また補正によって要件が満たされることとなったり,満たされないこととなったり

することがある。そうすると,分割出願が実体的要件を満たすか否かの判断の如何
によって,改正後の手続規定が適用されたり適用されなかったりするのでは,著し

く手続の安定を欠き,出願人に不利益を負わせることになるとともに,第三者の監

視負担を増加させることにもなりかねない。特に,本件のように,平成18年改正

法施行前になされた出願(親出願)に基づいて同法施行後に分割出願(子出願)が

なされ,さらに子出願に基づいて分割出願(孫出願)がなされた場合,当該孫出願

が適法であるか否かを判断するにあたって,問題となっている孫出願とは全く関係

がない子出願の分割要件が問題になるが,子出願が分割要件を満たすか否かによっ

て,孫出願の分割要件に関する適用法を変える実質的な理由は全くない。

原判決は,本件原出願に新44条2項を適用して,本件原々出願時への遡及効

を認めた上で,本件原々出願時は,平成18年改正法の施行日(平成19年4月1




日)前であることを理由に旧44条1項を適用しているところ,本件出願が新44

条1項(又は旧44条1項)の要件に適合するか否かを判断するに先立って,本件

出願に新44条2項(又は旧44条2項)を適用することは,許されない。平成1

8年改正法は44条1項と2項を同時に改正しており,また,新44条2項は新4

4条1項を受けて「前項の場合は,新たな特許出願は,もとの特許出願の時にした

ものとみなす。」と定めているので,新44条2項は新44条1項とあわせて適用

されるべきものだからである。



第4 被控訴人の主張

1 本件原出願は,平成18年改正法の施行日(平成19年4月1日)前にされ

た本件原々出願からの分割出願であるから,特許法44条2項により本件原々出願

の時にしたものとみなされる。そして,平成18年改正法附則3条1項の規定によ

り,本件原出願からの分割出願の時期に関しては,新44条1項の規定は適用され

ず,旧44条1項の規定が適用される。

本件原出願については,拒絶理由の通知(特許法50条)がされることなく特許

されたのであるから,本件出願をすることができるのは,補正をすることができる

期間の終期である本件原出願の特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に限られる。

控訴人は,本件原出願の特許査定の謄本の送達を受けた後に本件出願をしたのであ

るから,本件出願は,分割出願をすることができる期間の経過後にされた不適法な

特許出願である。

2 特許法44条は,既にされた特許出願を原出願として,当該原出願に係る発

明を分割することができる時期や要件を定めた規定であり,分割に係る「もとの特

許出願」
(原出願)を規定の対象としていることを踏まえれば,その経過措置規定で

ある平成18年改正法附則3条1項でいう「特許出願」は,新44条の規定への適

用場面においては,分割に係る「もとの特許出願」のことを指していることは明ら

かであり,分割に係る「新たな特許出願」を指しているわけではない。




また,平成14年改正法附則3条1項が,
「新特許法…の規定は,…施行日…以後

にする特許出願(施行日以後にする特許出願であって,特許法第44条第2項…の

規定により施行日前にしたものとみなされるもの…を含む。 について適用し,
) 施行

日前にした特許出願(施行日前の特許出願の分割等に係る特許出願を除く。 につい


ては,なお従前の例による。」と規定し,「施行日…以後にする特許出願」との語句

の後に,特許法44条2項の規定により施行日前にしたものとみなされる出願を含

める旨の括弧書きを特に置き,平成14年改正法の施行日以後にする分割出願に関

し,平成14年改正法の施行日前にされた特許出願を原出願とする分割出願であっ

て,平成14年改正法の施行日前にされたものとみなされるものであっても,平成

14年改正法を適用する旨規定している。これに対して,平成18年改正法附則3

条1項における「この法律の施行後にする特許出願」については,このような括弧

書きは置かれていないのであるから,この両者の規定振りの相違からすれば,新4

4条1項の規定は,平成18年改正法の施行日以後にされた特許出願を原出願とす

分割出願について適用され,平成18年改正法施行日前にしたものとみなされる

特許出願を原出願とする分割出願は含まれないことは明らかというべきである。

なお,平成18年改正法附則3条1項が経過規定について定めている特許法17
条の2は,特許出願に係る明細書,特許請求の範囲又は図面について,補正をする

ことができる時期や範囲を定めた規定であり,特許法36条の2は,外国語でなさ

れた特許出願について翻訳文を提出することができる時期を定めた規定であるのに

対し,特許法44条は,上記のとおりの規定であって,同条の規定が対象としてい

る特許出願は,分割に係るもとの特許出願であるから,特許法17条の236条

の2等とは,規定の趣旨や構造が異なる。したがって,平成18年改正法附則3条

1項の新44条の規定への適用について,特許法17条の2や同36条の2等の規

定との関係と同様に解するのは相当ではなく,控訴人の主張は,失当である。

3 特許法44条の関係においては,平成18年改正法の附則3条1項の「特許

出願」は,分割に係るもとの特許出願を指すことから,平成18年改正法の附則3




条1項の適用については,分割に係る新たな特許出願が特許法44条1項に規定す

る要件を満たすか否かの判断に左右されない。ただ,本件原出願のように,平成1

8年改正法施行前の特許出願を原出願とする分割出願が平成18年改正法施行後に

出願された場合,かかる原出願(本件でいう本件原々出願)からの分割が適法か否

かは旧44条1項により判断されるところ,仮にその分割要件を満たさなければ,

適法な分割出願とはいえず,さらに当該特許出願(不適法な子出願)を原出願とす

分割出願が孫出願として出願されたとしても,当該特許出願(不適法な子出願)

自体が「分割に係るもとの特許出願」として取り扱われるにすぎない。その場合,

あえて平成18年改正法附則3条1項の関係において,当該特許出願(不適法な子

出 願 )の出願時を原出願の出願時まで遡って取り扱う必要などはないか ら ,

この意味では,分割要件を満たす場合に限り,新44条2項により,原出願の出願

時まで遡るというのが正しいというべきである。

親出願,子出願,孫出願の手続がそれぞれ別個独立の手続であるとしても,孫出

願の出願日の遡及の利益の享受は,あくまで子出願の出願日の利益の享受であって,

子出願が分割要件を満たして分割が適法に行われることを前提とするものであり,

孫出願の出願日が子出願と無関係に本来の分割可能な時期から離れて無限定に親出

願の出願日まで遡及するものではない。それゆえ,本件出願の出願日が本件原々出

願の出願日まで遡るかどうかが問題となっている本件において,本件出願の分割要

件の適用法が,新44条1項となるのか旧44条1項となるのかが,本件原出願が

分割要件を満たすか否かによって左右されるとしても,何ら不合理とはいえない。

実際,本件のような改正法をまたがない一般の親出願,子出願,孫出願のなされて

いる事案についてみても,出願人は,孫出願の出願日を親出願の出願日まで遡及

れる効果を欲して,子出願を原出願とした分割出願(孫出願)を特許出願するので

あるから,子出願が親出願との関係で,分割要件を満たしているかどうかを出願人

自ら判断した上で,分割出願として特許出願することには変わりないから,本件の

場合において殊更,出願人が不安定な立場に立つなどとはいえない。




4 控訴人は,新44条1項の適用に関する平成18年改正法附則3条の解釈に

先立って新44条2項を適用した原判決には論理の誤りがあると主張する。しかし,

原判決は,本件出願は,平成18年改正法の施行の日前にしたものとみなされる本

件原出願を分割に係るもとの特許出願とするものであるから,平成18年改正法附

3条1項前段の新44条1項が適用される特許出願の場合には該当しないとして

いるだけであり,控訴人の主張は当たらない。



第5 当裁判所の判断

1 当裁判所も,本件原出願から分割出願をすることができるのは,時期的制限

を緩和した平成18年改正法によるのではなく,平成14年改正法によるべきであ

って,本件原出願についての特許をすべき旨の査定の謄本の送達前に限られ,当該

送達後になされた分割出願である本件出願は時期的制限を徒過した不適法なもので

あるから,本件出願を却下した本件却下処分に違法はなく,控訴人の本訴請求は理

由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。

2 平成18年改正法は,従前,特許出願の一部を新たな特許出願とする分割出

願ができる時期につき,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面について
補正をすることができる期間内,すなわち,特許をすべき旨の査定の謄本の送達前

に制限されていたのを,旧44条1項の改正により,特許査定謄本の送達後30日

以内の期間にも可能となるよう時期的制限を緩和した。

本件出願は,本件原出願の一部を新たな出願とする分割出願であるから,本件出

願が,分割をすることができる時期的制限内に行われたか否かが本件の争点である。

すなわち,平成22年にされた本件原出願からの分割出願に新44条1項が適用さ

れるならば,控訴人による本件出願は分割出願の時期的制限内に行われたものとし

て適法となり,新44条1項が適用されないならば,分割出願の時期的制限を徒過

したものとして,不適法となるという関係にある。

3 平成18年改正法附則3条1項は,同法による改正に伴う経過措置として,




第2条の規定による改正後の特許法第17条の2第17条の3第36条の2

第41条第44条第46条の2第49条から第50条の2まで,第53条

第159条及び第163条の規定は,この法律の施行後にする特許出願について適

用し,この法律の施行前にした特許出願については,なお従前の例による。」旨を規

定する。

新しい法令を制定し,あるいは既存の法令を改廃する場合において,旧法秩序か

ら新しい法秩序に移行する際には,社会生活に混乱を招いたり,不公平な適用とな

ったりすることのないよう,一定の期間,既存の法律関係を認め,円滑に新しい法

秩序に移行すべく,改正の趣旨や社会生活や法的安定性に与える影響等,種々の事

情を勘案の上,経過規定が定められる。したがって,経過規定の解釈に当たっては,

当該改正法の立法趣旨及び経過措置の置かれた趣旨を十分に斟酌する必要がある。

一方で,その解釈には法的安定性が要求され,その適用についても明確性が求めら

れることはいうまでもない。

そこで,検討するに,平成18年改正法の主たる改正点は,技術的特徴が異なる

別発明への補正の禁止(特許法17条の2第4項41条49条ないし50条

2,53条159条163条),分割制度の濫用防止(特許法17条の2,50
条の2,53条),分割の時期的制限の緩和(特許法44条1項,5項,6項),外

国語書面出願の翻訳文提出期間の延長(特許法17条の336条の244条

項,46条の2)であったところ,平成18年改正法附則3条1項は,これらの各

条文の適用に当たり,審査の着手時期等によって適用される制限や基準が区々とな

り,手続継続中に基準が変更されて審査実務や出願人等が混乱することのないよう,

各種手続の基礎となり,その時期が明確である「特許出願」を基準として,
「この法

律の施行後にした特許出願」に新法を適用することとしたものと解される。

そして,上記改正後の特許法44条1項は,
「特許出願人は,次に掲げる場合に限

り,二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とす

ることができる。…」と規定し,原出願の「特許出願人」が,原出願の「特許出願




の一部を…新たな特許出願」とできる時期的制限や実体的要件を定めたものである

から,この規定が規律しているのは原出願である特許出願の分割についてであるこ

とが明らかである。そうすると,平成18年改正法附則3条1項にいう「この法律

の施行後にする特許出願」とは,
「新たな特許出願」を指すものではなく,新44条

1項が規律の対象としている原出願を指しているものと考えるのが自然である。

また,もとの特許出願の審査において既に拒絶理由通知がなされた発明をそのま

まの内容で再度分割するなどして,権利化時期を先延ばしにすることや,別の審査

官により異なる判断がなされることを期待して同じ発明を繰り返し分割出願すると

いった分割制度の濫用への懸念に配慮して,同改正法は,出願人の利益を図って分

割出願の時期的要件を緩和する一方で,分割制度の濫用防止のための方策を同時に

改正していることから,分割の時期的要件の緩和と濫用防止策は同時に適用の移行

がされることが望ましいのであり,特許法17条の244条50条の2,53

条について上記の経過措置を一律に制定した趣旨はこの点にある。

なお,平成18年改正法に先立つ平成14年改正法附則3条1項が,
「新特許法…

の規定は,…施行日…以後にする特許出願(施行日以後にする特許出願であって,

特許法第44条第2項…の規定により施行日前にしたものとみなされるもの…を含
む。)について適用し,施行日前にした特許出願(施行日前の特許出願の分割等に係

る特許出願を除く。 については,
) なお従前の例による。 と規定しているのに対し,


平成18年改正法附則3条1項には,平成14年のときのように,
「この法律の施行

後にする特許出願」に「施行日以降にする特許出願であって,特許法44条第2項

…の規定により施行日前にしたものとみなされるもの…を含む。」旨の記載はない。

両者の改正附則を比較すれば,平成18年改正法附則3条1項の「この法律の施行

後にした特許出願」に,新44条1項にいう「新たな出願」である分割出願が含ま

れるものでないことが明らかである。

以上からすれば,平成18年改正法附則3条1項の「この法律の施行後にする特

許出願」とは,新44条1項にいう「新たな特許出願」ではなく,
「二以上の発明を




包含する特許出願」(44条1項),すなわち,分割のもととなる原出願を指すもの

と解すべきである。

4 本件においては,本件原出願からの分割出願が適法な時期的制限内になされ

たか否かが問題となるところ,平成22年にされた本件原出願自体は平成18年改

正法の施行日(平成19年4月1日)以降になされているものの,本件原出願は平

成12年にされた本件原々出願からの分割出願である。そして,控訴人は,本件原々

出願の出願日の遡及の利益を求めて本件出願をしているものであり,本件原出願が

本件原々出願の時に出願したものとみなされて特許査定されたことを当事者双方と

も当然の前提としているところ,本件原々出願が,平成12年2月15日にしたも

のとみなされる国際出願であり,平成18年改正法の施行前にした出願であるから,

本件原出願は本件原々出願のこの出願の時にしたものとみなされる。したがって,

本件出願は,平成18年改正法の施行後にする「特許出願」からの分割ではないの

で,結局,本件出願について同改正法は適用されないことになる。

本件原出願の出願日が遡及するか否かについて,控訴人は,分割出願の実体的要

件の有無如何によって,改正後の手続規定の適用の有無が決まるのでは,著しく手

続の安定を欠き,出願人に不利益を負わせる等と主張する。しかし,本件は,子出
願と孫出願がともに平成18年改正後にされた特殊な事例であり,本件出願(孫出

願)は,子出願(本件原出願)が親出願(本件原々出願)からの分割出願として実

体的に適法であることを前提にしている。平成18年改正法附則の上記解釈によれ

ば,子出願である原出願には平成18年改正による新44条の時期的な制限緩和の

適用はないのであるが(原出願についてはこの解釈に沿って同改正前の期間制限に

従って原々出願からの分割がされている。,原々出願からの分割についての実体的


要件が具備している結果として,原出願の出願日が原々出願の出願日に遡ってした

ものとみなされたことになるにすぎない。本件出願はその原出願についての実体的

に見て有利な効果を踏まえてのものであるが,そのような法適用のよってきたる効

果から逆に推して,政策的に分割出願の時期的制限を緩和した平成18年改正に関




する附則3条1項に関する前記解釈に疑義が生じることはないというべきである。



第6 結論

以上のとおり,本件出願には,新44条1項の時期的制限緩和の適用はなく,旧

44条1項所定の出願期間経過後にされたものとして不適法であって,本件却下処

分に違法はない。よって,控訴人の請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相

当であって,本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし,主文のとおり判

決する。




知的財産高等裁判所第2部



裁判長裁判官

塩 月 秀 平




裁判官
中 村 恭




裁判官

中 武 由 紀






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