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事件 平成 24年 (ワ) 8135号 特許権侵害差止等請求事件
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裁判所 東京地方裁判所 
判決言渡日 2013/08/29
権利種別 特許権
訴訟類型 民事訴訟
判例全文
判例全文
言渡 平成25年8月29日
交付 平成25年8月29日
裁判所書記官



平成24年(ワ)第8135号 特許権侵害差止等請求事件

口頭弁論の終結の日 平成25年7月18日

判 決

横浜市<以下略>

原 告 株 式 会 社 シ ン ク ロ ン

同訴訟代理人弁護士 服 部 昌 明

池 田 和 郎

西 川 久 貴

山 本 和 彦

北 畑 亮

田 中 伸 英

同訴訟代理人弁理士 秋 山 敦

埼玉県川越市<以下略>

被 告 株 式 会 社 オ プ ト ラ ン

同訴訟代理人弁護士 升 永 英 俊

同補佐人弁理士 佐 藤 睦

大 石 幸 雄

主 文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求




1 被告は,別紙装置等目録記載1の装置を製造し,譲渡し,輸出若しくは輸入

し,又は貸渡しのために展示してはならない。

2 被告は,前項の装置及びその半製品を廃棄せよ。

3 被告は,別紙装置等目録記載2の方法を使用してはならない。

4 被告は,原告に対し,7億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払

済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

本件は,成膜方法及び成膜装置に関する特許権を有する原告が,被告の製造

販売する装置及びその使用する方法について,上記特許権に係る特許発明の技

術的範囲に属するとして,被告に対し,特許法100条に基づき,装置の製造,

販売等及び使用する方法の差止め並びに装置等の廃棄,民法709条に基づき,

7億円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年

5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨に

より認められる事実)

(1) 本件特許権

原告は,発明の名称を「成膜方法及び成膜装置」とする特許(特許番号第

4823293号)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有してい

る。

(2) 本件発明

上記特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1及び8の記載は,

本判決添付の特許公報の該当項記載のとおりである(以下,この請求項1に




係る発明を「本件発明1」といい,請求項8に係る発明を「本件発明2」と

いう。 。


(3) 本件発明の構成要件の分説

ア 本件発明1を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説し

構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件1−A」のようにいう。 。


1−A 基体保持手段の基体保持面の全域に向け成膜材料を供給すること

によって前記基体保持面に保持され回転している基体のすべてに対

して前記成膜材料を連続して供給するとともに,

1−B 前記基体保持面の一部の領域に向けイオンを照射することによっ

て前記基体の一部に対して前記イオンを連続して照射することによ

るアシスト効果を与えながら,前記基体の表面に薄膜を堆積させる

1−C ことを特徴とする成膜方法。

イ 本件発明2を構成要件に分説すると,次のとおりである(以下,分説し

構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件2−A」のようにいう。 。


2−A 真空容器内に回転可能に配設され,基体を保持するための基体保

持手段と,

2−B 前記基体保持手段の基体保持面の全領域に対して成膜材料を供給

可能となるような配置及び向きで前記真空容器内に設置された成膜

手段と,

2−C イオンを前記基体保持面の一部の領域に対し部分的に照射可能と

なるような構成,配置及び/又は向きで前記真空容器内に設置され

た成膜アシスト手段とを,




2−D 有する成膜装置。

(4) 被告の行為

被告は,別紙装置等目録記載1の装置(以下「被告装置」という。)の譲渡

の申出をしている。

(5) 構成要件充足性

別紙装置等目録記載2の方法(以下「被告方法」という。)は,本件発明1

構成要件をすべて充足し,被告装置は,本件発明2の構成要件2−A,2

−C及び2−Dを充足する。

(6) 原告は,平成25年3月8日,被告が本件特許について請求した特許無効

審判(無効2012−800109号)において,請求項1及び8について,

特許請求の範囲減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的として,訂正の

請求をし,本件において,被告の特許法104条の3の主張に対し,上記訂

正の請求をし,この訂正により無効理由が解消され,かつ,被告装置の稼働

により使用する方法が訂正後の請求項1に係る発明の技術的範囲に属し,被

告装置が訂正後の請求項8に係る発明の技術的範囲に属すると主張した。

(甲30,乙2,8,9)

2 争点

本件の争点は,次のとおりである。

(1) 被告装置の稼働により使用する方法が被告方法の「基体保持手段の基体保

持面の全域に向け成膜材料を供給することによって前記基体保持面に保持さ

れ回転している基体のすべてに対して前記成膜材料を連続して供給するとと

もに,」の構成(以下「構成a」という。)を充足するか否か(争点1)




当事者は,被告装置の稼働により使用する方法が本件発明1の構成要件

−Aを充足するか否かについて主張するが,原告は,被告装置の稼働により

使用する方法を別紙装置等目録記載2のとおりに特定するところ,これによ

り特定された方法(被告方法)が本件発明1の構成要件1−Aを充足するこ

とは明らかであるから,当事者の上記主張は,被告装置の稼働により使用す

る方法が被告方法の構成aを充足するか否かをいうものとして理解される。

(2) 被告装置が本件発明2の構成要件2−Bを充足するか否か(争点2)

(3) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか否

か(争点3)

3 争点についての当事者の主張

(1) 争点1(被告装置の稼働により使用する方法が被告方法の構成aを充足す

るか否か)について

ア 原告

(ア) 被告装置の図面(甲6の2)の「9 SUBSTRATE DOM

E」とは「基板ドーム」のことで,構成a「基体保持手段」に相当し,

この基板ドームが回転することはカタログの記載から明らかである。ま

た,上記図面の「5 HEARTH] 「6
, RH SOURCE」とは

「電子銃1基」 「抵抗加熱1基」のことで,薄膜を形成する成膜材料を


供給する蒸着源(成膜手段)を指す。そして,成膜材料は,ハース(「5

HEARTH])及びRHソース(「6 RH SOURCE」)からド

ーム(「9 SUBSTRATE DOME」)の基体保持面の全てに対

して連続的に供給される。




そして,原告のした検証の結果(甲7)によれば,成膜材料の到達範

囲は仕切り板によって制限されないことが判明したし,「Coatings on

Glass」(甲8)198頁の記載からは,成膜材料が,残留ガスとの衝突

により自由な方向に拡散しながら基体に到達する性質を持ち,直線状に

供給範囲を制限できるものではないことが分かるから,被告装置は,成

膜材料が基体保持面の全域に供給されるものである。

(イ) そうであるから,被告装置の稼働により使用する方法は,被告方法

の構成aを充足する。

イ 被告

(ア) 被告装置は,ハース及びRHソースという二つの蒸発源を備えてい

るが,ハース用仕切り板及びRHソース用仕切り板を設け,これにより,

それぞれから蒸発した成膜材料はその蒸発方向(角度)が制限されるの

であり,また,成膜材料は成膜される各層について一つしか選択するこ

とができないから,ハース及びRHソースのいずれか一方のみからしか

供給されないものである。

そして,被告のした実験の結果(乙7)によれば,成膜材料の到達範

囲はドームの基体保持面の一部の領域であることを明確に示している。

(イ) そうであるから,被告装置では,各蒸発源による成膜材料の供給範

囲はドームの基体保持面の一部の領域に制限され,かつ,成膜材料が両

方の蒸発源から同時に供給されることはないのであって,被告装置の稼

働により使用する方法は,被告方法の構成aの「基体保持手段の基体保

持面の全域に向け成膜材料を供給する」を充足しない。




(2) 被告装置が本件発明2の構成要件2−Bを充足するか否か(争点2)

ア 原告

(ア) 被告装置の図面(甲6の2)の「9 SUBSTRATE DOM

E」とは「基板ドーム」のことで,構成要件1−Aの「基体保持手段」

に相当し,この基板ドームが回転することはカタログの記載から明らか

である。また,上記図面の「5 HEARTH] 「6
, RH SOUR

CE」とは「電子銃1基」 「抵抗加熱1基」のことで,薄膜を形成する


成膜材料を供給する蒸着源(成膜手段)を指す。そして,成膜材料は,

ハース(「5 HEARTH])及びRHソース(「6 RH SOUR

CE」)からドーム(「9 SUBSTRATE DOME」)の基体保

持面の全てに対して連続的に供給される。

そして,原告のした検証の結果(甲7)や「Coatings on Glass」(甲

8)198頁の記載によれば,被告装置は,成膜材料が基体保持面の全

域に供給されるものである。

(イ) そうであるから,被告装置は,本件発明2の構成要件2−Bを充足

する。

イ 被告

前記(1)イ(ア)のとおりであって,被告装置では,各蒸発源による成膜材

料の供給範囲はドームの基体保持面の一部の領域に制限され,かつ,成膜

材料が両方の蒸発源から同時に供給されることはないから,被告装置は,

本件発明2の構成要件2−Bを充足しない。

(3) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか否






ア 被告

(ア) 本件発明1について

a 本件特許の特許出願前に頒布された刊行物である乙1(A1,A2

著「イオンアシスト蒸着によって作成されたZrO 薄膜の光学的不均



一性及び微細構造」応用光学第35巻第28号,以下「引用例」とい

う。)には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されてい

る。

「基板を保持するドームの基体保持面の全域に向けZrO を供給する



ことによって基体保持面に保持され回転している基板のすべてに対

してZrO を連続して供給するとともに,



基体保持面の一部の領域に向けイオンを照射することによって基体の

一部に対してイオンを連続して照射することによるアシスト効果を

与えながら,基体の表面に薄膜を堆積させる

ことを特徴とする成膜方法。」

b 引用発明1の「基板」「ドーム」及び「ZrO2 」は,それぞれ本件


発明1の「基体」「基体保持手段」及び「成膜材料」に相当するから,


本件発明1は引用発明1と同一である。そして,仮に同一でないとし

ても,本件発明1は,当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をす

ることができたものである。

c そうであるから,請求項1に係る特許権には,特許法123条1項

2号,同法29条1項又は2項の無効事由があり,請求項1に係る特




許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。

(イ) 本件発明2について

a 引用例には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されて

いる。

「真空チャンバ内に回転可能に配設され,基板を保持するためのドー

ムと,

ドームの基体保持面の全領域に対してZrO2 を供給可能となるよう

な配置及び向きで真空チャンバ内に設置された電子ビーム銃と,

イオンを基体保持面の一部の領域に対し部分的に照射可能となるよう

な構成,配置及び向きで真空チャンバ内に設置されたイオンソースと

を,

有する成膜装置。」

b 引用発明2の「真空チャンバ」 「基板」 「基板を保持するためのド
, ,

ーム」「ドームの基体保持面」「ZrO 」「電子ビーム銃」及び「イ
, , 2 ,


オンソース」は,それぞれ本件発明2の「真空容器」 「基体」 「基体
, ,

を保持するための保持手段」 「前記基体保持手段の基体保持面」 「成
, ,

膜材料」 「成膜手段」及び「成膜アシスト手段」に相当するから,本


件発明2は引用発明2と同一である。そして,仮に同一でないとして

も,本件発明2は,当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をする

ことができたものである。

c そうであるから,請求項8に係る特許権には,特許法123条1項

2号,同法29条1項又は2項の無効事由があり,請求項8に係る特




許は,特許無効審判により無効にされるべきものと認められる。

イ 原告

(ア) 本件発明1について

a 引用例は,「ZrO2 薄膜の屈折率と微構造に於ける不均質性に於い

てアルゴンイオン衝撃の効果を研究すること」を目的としているから,

本件発明1の構成要件を何ら開示していない。そして,引用例には,

「ドームの基体保持面の全域に向けZrO を供給する」ことや「基板



のすべてに対してZrO を連続して供給する」ことの記載がなく,ま



た,「基体保持面の一部の領域に向けイオンを照射する」ことや「基

体の一部に対してイオンを連続して照射する」ことの記載もない。

b 本件発明1は引用発明1と同一でないし,引用発明1は,成長中の

膜において,イオンビームの照射を受けるときとイオンビームの照射

を受けないときとの両方が存在するという特徴を備えていないから,

本件発明1は,当業者が引用発明1に基づいて容易に発明をすること

ができない。

c そうであるから,請求項1に係る特許権には,特許法123条1項

2号,同法29条1項又は2項の無効事由がなく,請求項1に係る特

許は,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。

(イ) 本件発明2について

a 引用例は,「ZrO2 薄膜の屈折率と微構造に於ける不均質性に於い

てアルゴンイオン衝撃の効果を研究すること」を目的としているから,

本件発明2の構成要件を何ら開示していない。そして,引用例には,




「イオンを基体保持面の一部の領域に対し部分的に照射可能となる

ような構成,配置及び向きで真空チャンバ内に設置されたイオンソー

ス」の記載がない。

b 本件発明2は引用発明2と同一でないし,引用発明2は,成長中の

膜において,イオンビームの照射を受けるときとイオンビームの照射

を受けないときとの両方が存在するという特徴を備えていないから,

本件発明2は,当業者が引用発明2に基づいて容易に発明をすること

ができない。

c そうであるから,請求項8に係る特許権には,特許法123条1項

2号,同法29条1項又は2項の無効事由がなく,請求項8に係る特

許は,特許無効審判により無効にされるべきものとは認められない。

第3 当裁判所の判断

1 争点1(被告装置の稼働により使用する方法が被告方法の構成aを充足する

か否か)について

(1) 証拠(甲3の2,6の1ないし3,乙3, 及び弁論の全趣旨によれば,
7)

(ア) 被告装置には,成膜材料の蒸発源として,ハースと呼ばれる電子銃に

より加熱するものとRHソースと呼ばれる抵抗加熱により加熱するものを備

えているが,成膜材料は成膜される各層について一つしか選択することがで

きないから,成膜材料がハースとRHソースとの両方から同時に供給される

ことはなく,いずれか一方からしか供給されない,(イ) 被告装置には,ハ

ースに隣接してハース用仕切り板が設けられ,RHソースに隣接してRHソ

ース用仕切り板が設けられているところ,ハース又はRHソースから蒸発し




た成膜材料は,ハース用仕切り板又はRHソース用仕切り板により,蒸発の

方向(角度)が制限され,その結果,ドームの基体保持面の全域には供給さ

れない,(ウ) 被告補佐人は,被告装置を用いて,ハースから成膜材料SiO

2 を蒸発させ,ハース用仕切り板を設置しない状態と設置した状態とに分け

て,基板保持面に保持された基板に形成された膜の厚さを測定する実験をし

たところ,ハース用仕切り板を設置しない状態では,ドームの左側10か所

(A1ないし10)及び右側10か所(B1ないし10)いずれの基板につ

いても膜が形成されたが,ハース用仕切り板を設置した状態では,左側10

か所は,そのうちの3か所(A7,8及び10)の基板については全く膜が

形成されず,その余の基板についても右側10か所と比較して膜が極めて薄

くしか形成されなかったこと,以上の事実が認められる。

原告は,被告補佐人がした実験について,@ ハース用仕切り板の形状か

らすれば,その効果をもたらす範囲は左側10か所のうちの5か所(A6な

いし10)になるはずであるが,左側10か所全部に効果がみられる,A 真

空蒸着では,基板近傍に遮蔽板を設置しない限り,急激な膜厚変化は極めて

困難であるのに,左側のA1から極端に膜厚が減少しているとして,ハース

用仕切り板以外の手段を用いてデータを作為的に作出した可能性があり,信

用性に欠けると主張する。しかしながら,@については,上記実験に係る実

験報告書(乙7)の図2(被告装置の図面)によれば,ハース用仕切り板の

効果をもたらす範囲が左側10か所のうちの5か所(A6ないし10)にな

るはずであるというにとどまるし,Aについては,真空蒸着において,蒸発

源に隣接して仕切り板を設置したのでは,急激な膜厚変化が生じないことを




裏付ける的確な証拠はないのである。そうであるから,原告の上記主張をも

って,データを作為的に作出したということはできないし,他にデータを作

為的に作出したことを窺わせるような事情も認められない。原告の上記主張

は,採用することができない。

(2) 被告補佐人がしたハースを使用した実験結果は,RHソースを使用した場

合においても当てはまると考えられるから,前記(1)認定の事実によれば,被

告装置は,ハース及びRHソースの各蒸発源による成膜材料の供給範囲がそ

れぞれドームの基体保持面の一部の領域に制限され,かつ,成膜材料が両方

の蒸発源から同時に供給されることはないと認められる。そうすると,被告

装置は,基体保持手段の基体保持面の全域に向けて成膜材料を供給するとい

うものではない。

原告は,原告のした検証の結果(甲7)や「Coatings on Glass」(甲8)

198頁の記載によれば,被告装置は,成膜材料が基体保持面の全域に供給

されるものであると主張する。しかしながら,上記検証は,被告装置とは異

なる装置を用いたものであるから,その結果が,当然に被告装置における成

膜材料の到達範囲を示すというわけではないし,また,証拠(甲8)によれ

ば,「Coatings on Glass」(甲8)198頁には,「起こりうる最も単純な現

象(原子の減圧雰囲気における飛行において)は,不活性残留ガス原子との

衝突である。これらによる通常の結果は,方向と速度の変化である。これら

の原子は,もはや直線上にそって到達しない。残留圧力および蒸着源と基板

の間の距離に応じて,蒸着原子は,殆どあらゆる方向から,基板表面に到達

可能である。 と記載されていることが認められるから,
」 成膜材料が残留ガス




との衝突により自由な方向に拡散しながら基体に到達する性質を持つという

ことができるとしても,このことは,残留圧力及び蒸着源と基板の間の距離

に応じて到達可能な場合があるにすぎず,これをもって,被告補佐人のした

実験における,ハース用仕切り板を設置した状態では膜が形成されない基板

があったとの結果を否定することはできない。原告の上記主張は,採用する

ことができない。

(3) そうすると,被告装置の稼働により使用する方法は,被告方法の構成aの

「基体保持手段の基体保持面の全域に向け成膜材料を供給する」を充足しな

い。

2 争点2(被告装置が本件発明2の構成要件2−Bを充足するか否か)について

上記1(1),(2)に判示したところによれば,被告装置は,本件発明2の構成

要件2−Bの「基体保持手段の基体保持面の全域に向け成膜材料を供給する」

を充足しない。

3 したがって,被告装置を稼働させても,被告方法の使用をすることにはなら

ないし,また,被告装置は本件発明2の技術的範囲に属しないから,原告の請

求は,その余の点について判断するまでもなく,すべて理由がない。

よって,原告の請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部

裁判長裁判官 高 野 輝 久

裁判官 志 賀 勝

裁判官 藤 田 壮

(本判決添付の特許公報は,掲載を省略)