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事件 平成 24年 (行ケ) 10412号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2013/08/09
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成25年8月9日判決言渡
平成24年(行ケ)第10412号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成25年8月7日

判 決



原 告 株 式 会 社 タ イ キ


訴 訟 代 理 人 弁 理 士 長 谷 部 善 太 郎

同 山 田 泰 之



被 告 特 許 庁 長 官


指 定 代 理 人 関 谷 一 夫

同 窪 田 治 彦

同 大 橋 信 彦
主 文

1 特許庁が不服2012−1824号事件について平成24年10月16日に

した審決を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由
第1 請求の趣旨

主文と同旨

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)

原告は,発明の名称を「化粧用チップ」とする発明(請求項の数は3であ
る。)について,平成22年1月18日に特許出願(特願2010−7777
号。以下「本願」という。)をしたが,平成23年10月26日付けで拒絶査
定を受けたので,平成24年1月31日,これに対する不服の審判を請求する

とともに,手続補正書を提出した(以下「本件補正」という。)。

特許庁は,この審判を,不服2012−1824号事件として審理し,同年

10月16日,本件補正を却下した上,「本件審判の請求は,成り立たな

い。」との審決(以下,単に「審決」という。)をし,審決の謄本を,同月3
0日,原告に送達した。

2 特許請求の範囲

(1) 本件補正後の本願の特許請求の範囲における請求項1の記載は次のとおり

である(甲5。この発明を,以下「本願補正発明」という。また,本件補正

後の本願の明細書及び図面を総称して,以下「本願明細書」ということがあ
る。)。

【請求項1】

塗布部先端の端縁部を直線状又は平面状にしてなる化粧用チップであって,

支持具の一端に繊維束ではない多孔性の基材が接着又はアウトサート成形さ
れることにより設けられた化粧用チップ。

(2) 本件補正前の本願の特許請求の範囲における請求項1の記載は次のとおり

である(甲11。この発明を,以下「本願発明」という。)

【請求項1】

塗布部先端の端縁部を直線状又は平面状にしてなる化粧用チップであって,
支持具の一端に基材が接着又はアウトサート成形されることにより設けられ

た化粧用チップ。

3 審決の理由

(1) 別紙審決書写しのとおりであり,その概要は以下のとおりである。
本願補正発明は,本願出願日前に頒布された刊行物である特開平10―1

55542号公報(甲1。以下「刊行物1」という。)に記載された発明
(以下「引用発明」という。)及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発

明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許

出願の際独立して特許を受けることができず,本件補正は,平成23年法律

第63号改正附則2条18項によりなお従前の例によるとされる同法による

改正前の特許法17条の2第6項において準用する同法126条5項の規定

に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条

1項の規定により却下されるべきものである。

本願発明は,本願補正発明から,発明を特定するために必要な事項である

「繊維束ではない多孔性の」との限定を省いたものであるから,本願補正発

明と同様に,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をする

ことができたものである。

以上により,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けるこ

とができない。
(2) 審決が,上記結論を導くに当たり認定した,引用発明の内容,本願補正発

明と引用発明の一致点及び相違点は,以下のとおりである。
ア 引用発明の内容

アイラインを描くためのアイライナーの芯2であって,

アイライナーは,中空の棒状の本体1の両端に,薄い板状の,それぞれ
厚みは同じで,幅の異なる芯2を取り付けたアイライナーであり,

芯2の先端面6は略平面状であり,芯2の先端面6の一辺は略直線状で

あり,

芯2の素材は,スポンジ状の素材を使用する,芯2。
イ 本願補正発明と引用発明の一致点
「塗布部先端の端縁部を線状又は面状にしてなる化粧用チップであって,

支持具の一端に繊維束ではない多孔性の基材が設けられた化粧用チッ

プ。」
ウ 本願補正発明と引用発明の相違点
(ア) 本願補正発明の化粧用チップが「塗布部先端の端縁部を直線状又は平

面状にしてなる」のに対し,引用発明の化粧用チップの塗布部先端の端

縁部は,略直線状又は略平面状ではあるものの,直線状又は平面状であ

るのか否か不明な点(以下「相違点1」という。)。

(イ) 支持具の一端に基材を設けるに当たり,本願補正発明では,「接着又
はアウトサート成形されることにより設けられ」ているのに対し,引用

発明では,「接着又はアウトサート成形されることにより設けられ」て

いるのか否か不明な点(以下「相違点2」という。)。

第3 原告の主張

1 本願補正発明と引用発明との相違点の看過(取消事由1)
審決は,引用発明の「アイラインを描くためのアイライナーの芯2」又は

「芯2」は,文言の意味,形状又は機能等からみて,本願補正発明の「化粧用

チップ」に相当すると認定する。

しかしながら,本来,アイライナーと化粧用チップとは,互いに異なる機能
を備え,使用方法及び使用する部位において明らかに相違する用具であり,せ

いぜい目の周囲に対して化粧を施す際に使用する点において共通するに止まる

ものの,決して同一の用途又は共通する用具とはいえない。

すなわち,アイライナーとは,化粧料を収納した容器と一体となり,該容器

から供給される化粧料が塗布部に含浸されて,該塗布部から化粧部位に化粧料
が塗布されるための用具であり,又は,塗布筆に含浸された化粧料を塗布部位

に塗布するための用具である。そして,該化粧料は「アイライナー」という用

語のとおり,アイラインを引くための化粧料であって,「アイライナー」もま

たその用語どおり,まつげの生え際にアイラインの線を引くための用具であり,

ほかの箇所を対象にして使用するものではない。
他方,化粧用チップは,化粧料を化粧部位に塗るための用具である点におい
てアイライナーと共通するものの,まつげの生え際に線状に化粧料を塗布する
ために使用されるものではなく,まぶたのようにより広い範囲の皮膚上にアイ

シャドー等の化粧料を塗り拡げるための用具であって,その用途に応じて塗布

部は幅が広く,先端部のみではなくその塗布部の胴部も使用するための形状を

呈している。

また,化粧用チップは粉状の化粧料にも使用できるよう,積極的にアイライ
ナーほどには化粧料を吸収する等して保持する用具ではなく,むしろ化粧用チ

ップの上に化粧料を付着させ,これを化粧部位上に塗り拡げることにより目的

とする化粧を行うものである。

このように,アイライナーと化粧用チップとは,使用する化粧の部位,化粧

液を積極的に保持する構造の有無やそれによる用途,塗り方などの点において
明らかに相違するから,アイライナーと化粧チップとを互いに置換可能な用具

として位置付けることはできない。よって,アイライナーである引用発明が化

粧用チップと同じであるとした審決の認定は誤りである。

2 相違点1に関する容易想到性判断の誤り(取消事由2)
引用発明のアイライナーは,先端面をまつげの生え際に軽く押し当てること

によって使用するものであり,その先端面の形状は,まつげの生え際に軽く押

し当てた状態において,アイライナーを任意の方向に移動させることによって

化粧料を塗布するように使用するものではない。

他方,化粧用チップは,化粧する部位に軽く押し当てながら任意の方向に移
動させることにより化粧料を塗布するものである。

このように,引用発明におけるアイライナーと,化粧用チップとでは,塗布

時における動かし方が異なるので,たとえ,引用発明におけるアイライナーの

先端面の形状が平面状であり,先端面の一辺の形状が直線状であるとしても,

その形状を基に,アイライナーではなく化粧用チップの先端の形状を直線状と
することができる根拠にはならず,結局のところ,当業者が容易に発明できる
ものではない。
第4 被告の主張

1 取消事由1について

「化粧用チップ」とは,原告が出願人である別件の国際出願国際公開第2

012/063924号フロントページ)を参照すれば,英語では「cosm

etic applicator tip」と訳される。ここで「tip」と
は,「1先,先端,(あることの)小さな〔表面的な〕一部 2頂上,頂,頂

点 3先端に付ける金具,金輪,金たが,(刀剣のさやの)こじり,(杖やこ

うもりがさの)石突き」(研究社新英和大辞典)であり,「applicat

or tip」で「塗布用の先端部材」と解される。また,日本語における

「チップ」とは,「【tip】ボールペンなどの先端。」(広辞苑第六版)な
どを意味するものであるから,通常,「化粧用チップ」とは,「化粧料の塗布

用の先端部材」と解されるものである。

本願補正発明の請求項1には,「化粧用チップ」について,具体的な用途や

使用方法に関しては何らの特定がされていないが,本願明細書によれば,「化
粧用チップ」とは,一般的に化粧料をある範囲に塗布するものとして用いられ

るものと理解される。一方,本願明細書には,「本発明の化粧用チップの使用

方法の一例を以下に示すが,この使用方法に限定されるものではなく,使用者

が任意の方法にて使用できる。」「図示はしないが,目の際を化粧する際にも

化粧用チップの端縁部4の幅方向を,まつげに沿って付け,次いで目頭から目
尻にかけて線を引くようにして化粧料を塗布する。この場合には端縁部4の幅

方向に化粧用チップを引くようにするので,なめらかなラインを引くことがで

き,ぼやけずにはっきりとした色を出すことが可能となる。」との記載があり,

この「目頭から目尻にかけて」の「ライン」はアイラインに他ならないから,

本願補正発明の「化粧用チップ」は,用途として,少なくともアイラインを引
くことを含んでいるものと解される。よって,本願補正発明の「化粧用チッ
プ」に「アイライナー」が含まれると解するのが妥当である。
これに対し,引用発明の「アイライナー」は,「顔料」という化粧料を「ま

つげの生え際」という範囲に塗るための用具といえ,また,「芯2」はその配

置や機能等からみて,この用具の「塗布用の先端部材」といえる。そして,化

粧用具に関する技術分野においては,化粧料を化粧部位に塗るために使用され

るチップは,化粧料を含浸させるチップを排除するものではないから,引用発
明における「アイライナーの芯2」が,原告の主張するように「容器から供給

される化粧料が塗布部に含浸されて,該塗布部から化粧部位に化粧料が塗布さ

れるための用具」の芯2であったとしても,化粧料(顔料)をある範囲(まつ

げの生え際)に塗るために使用される塗布用の先端部材であることに変わりは

なく,通常の意味としての「化粧用チップ」に該当することは明らかである。
審決は,本願の特許請求の範囲に「化粧用チップ」の具体的用途や使用方法

について何らの特定のないこと,本願補正発明の「化粧用チップ」はアイライ

ンを引くことにも使用されること,引用発明の「アイライナーの芯2」も「塗

布用の先端部材」という意味における「化粧用チップ」の概念に含まれること
を踏まえた上で,「引用発明の『アイラインを描くためのアイライナーの芯

2』又は『芯2』は,文言の意味,形状又は機能等からみて本願補正発明の

『化粧用チップ』に相当し」と認定したのであり,その認定に誤りはない。

2 取消事由2について

原告による相違点1についての主張は,本願補正発明の「化粧用チップ」と
引用発明の「アイライナー」とが塗布部位において本質的に異なり,また,塗

布方法において異なることを前提とする主張であるが,原告の主張がその前提

において失当であることは,前記1のとおりであるから,本願補正発明は当業

者が容易に発明することができたとの審決の判断に誤りはない。

第5 当裁判所の判断
当裁判所は,審決には本願補正発明と引用発明との相違点を看過した誤り
(取消事由1)があり,この審決の判断の誤りは審決の結論に影響を及ぼすも
のであるから,審決は取消しを免れないと判断する。その理由は次のとおりで

ある。

1 本願補正発明における「化粧用チップ」について

(1) 本願明細書には,以下の記載がある(甲4)。
【技術分野】

【0001】

本発明は,化粧料を塗布するためのチップに関する。

【背景技術】

【0002】

パウダー状のラメやアイシャドー等を塗布するために用いられる化粧用具

として化粧用チップは知られている。そして,アイメイクの際には,目の上

下のまぶた全体や二重の幅にチップを用いてアイシャドーを塗布したり,塗

布されたアイシャドーをチップを使ってぼかしたり,グラデーションを作っ

ている。

この際に使用する化粧用チップにはその形状においていくつもの例が挙げ

られる。

【0003】

例えば,特許文献1に記載されたチップは,基板先端にウレタン等により

略紡錘形の塗布部が形成されたものであり,先端には紡錘形状の凸部端部が

形成された形状となっている。

特許文献2に記載された化粧用チップは,一端に特許文献1に記載のチッ

プの塗布部の形状と同様の形状の塗布部と,他端に塊状の塗布部が形成され

たものである。

特許文献3及び4に記載された化粧用綿棒は,先端部分に向かって扁平状

となるように圧偏してなるものであり,その先端部は円弧状を形成してなる
ものである。

このような化粧用チップの塗布面にアイシャドー等を付着させた後,それ

をまぶたや二重の幅部分に接触させて,アイシャドー等を塗布したり塗り拡

げたりすることにより化粧を行っている。

【発明を実施するための形態】

【0013】
(本発明の化粧用チップの構造)

本発明の化粧用チップは公知の化粧用チップと同様に指示具2とその一端

に化粧料の塗布部1を有してなる。そしてその塗布部1は基材5を有し,そ

の基材表面に化粧料を含浸又は担持するための塗布面を構成する皮膜層6を

設けてなるものであっても良く,また,皮膜層6を設けることなく,該基材
の表面が塗布面を構成していても良い。

本発明は特定の形状の化粧用チップとするために,特に塗布面の形状に特

徴を有するのであり,その形状は支持具に取り付けられてその先端部となる

端縁部4が頂点を形成するのではなく,直線又は平面を形成するものである。

【0015】
…本発明の化粧用チップが皮膜層6を有する場合には,該皮膜層6は化粧料

を含浸でき,又は担持できるように多孔性又は植毛されたものであることが

望ましい。…

【0016】
図3は本発明の化粧用チップの側面図であり,中でもaで示すような塗布

部の端縁部4の厚さが厚いものでも良く,bで示すような薄いものでも良い。

薄いほうが目の際を塗布する際により細い線を描くことができるし,二重幅

の目頭もよりピンポイントで塗布することが可能となる。


【0029】
(本発明の化粧用チップの使用方法
本発明の化粧用チップの使用方法の一例を以下に示すが,この使用方法

限定されるものではなく,使用者が任意の方法にて使用できる。

図5は,本発明の化粧用チップの塗布部1の専ら端縁部4を使用して二重

幅に化粧料を塗布する図である。その端縁部4に所定量の化粧料を含浸又は

担持させた後,aのように,まぶたを少し閉じつつ二重幅が拡がった状態に
おいて,目頭に化粧用チップの端縁部4の角を合わせ,次いでbに示すよう

に,化粧用チップを目尻方向に移動させながら,変化する二重幅に合うよう

に移動方向と化粧用チップの先端部の幅の向きを調整しながらcで示すよう

に塗布する。この方法により,目頭には比較的細く線を入れることが可能で

あると共に,引き続き二重幅に塗布する線の幅を調整しながら塗布できるの
で,二重幅からはみ出たりすることなく,意図した色濃度となるように塗布

することができる。

【0030】

図示はしないが,目の際を化粧する際にも化粧用チップの端縁部4の幅方
向を,まつげに沿って付け,次いで目頭から目尻にかけて線を引くようにし

て化粧料を塗布する。この場合には端縁部4の幅方向に化粧用チップを引く

ようにするので,なめらかなラインを引くことができ,ぼやけずにはっきり

とした色を出すことが可能となる。

【0031】
図6は,本発明の化粧用チップを用いてまぶたに化粧料を塗布する方法を

示す図である。化粧用チップの塗布部1の側面をまぶたの目頭の部分にあて

て,化粧用チップを目尻方向に引きながらまぶたを塗布する。このとき,本

発明の化粧用チップは端縁部4での幅を有しているためにその側面の面積が

大きいので,1回の塗布により塗布できる面積が大きく,まぶた全体を塗布
し塗り拡げる場合にも,手間がかからず,均一により早く塗布することが可
能である。
(2) 本願明細書の上記記載によれば,本願補正発明の「化粧用チップ」は,ま

ぶた全体や二重の幅部分に化粧料を付着させるものであって,化粧料を付着

させた化粧用チップを化粧部位に接触させて塗布したり塗り拡げて,アイシ

ャドー等を付するための化粧用具であると共に,これを目の際に使用してア

イライナー用に使用することもできるものであると認められる。
なお,本願明細書の前記記載に加え,発明の名称を「化粧用具」とする特

開2004−57694号公報(甲3)には,「この化粧用ユニットAの化

粧用チップ4に,パウダー状のラメやアイシャドー等の化粧品を付着させ,

この付着させた化粧品を顔等に塗布すればよい。」(【0013】)とある

ことや,化粧用チップの使用方法に関する文献の記載(甲10の44頁A,
46頁D,47頁G,48頁HI,50頁,96頁◇,99頁◇)に照らし
6 6



ても,「化粧用チップ」は,一般的にも,アイシャドー等の化粧料を付着さ

せるものであって,化粧料を付着させた化粧用チップを化粧部位に接触させ

て塗布したり塗り拡げたりする化粧用具であるということができるけれども,
本願明細書の前記【0015】の記載からすると,本願補正発明の化粧用チ

ップには,化粧料を含浸するタイプのものも含まれるのであり,このような

タイプのものを排除するわけでもない。

2 引用発明における「アイライナー」について

(1) 刊行物1には,以下の記載がある(甲1)。
【特許請求の範囲

【請求項1】中空の棒状の本体(1)の両端に,薄い板状の,それぞれ厚み

は同じで,幅の異なる芯(2)を取り付け,その芯(2)の先端面(6),

及び本体後面側(4)の先端面(6)に沿った先端の一部を露出させるよう

に枠(3)で被ったことを特徴とするアイライナー。
発明の詳細な説明
【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は,先端を薄く平たい形状にしたアイライ

ナーに関するものである。

【0002】

【従来の技術】従来のアイライナーは,先端が筆型になったもの,或いは鉛

筆型になったものであった。どちらも,まつげの生え際に沿って描くことは

技術を要し,慣れるまで時間がかかっていた。また,均一な太さの線を描く

ことも難しく,特に筆型のものは先端部が軟らかい為,必要以上に太い線に

なり易かった。また,顔料の付着する部分が広い為,まつげや瞼など余分な

部分を汚し易かった。

【0003】

【発明が解決しようとする課題】本発明は,慣れない人であっても,まつげ

の生え際に沿って,均一な太さのアイラインを手早く簡単に描くことが出

来,まつげや瞼など余分な部分を汚しにくいアイライナーの提供を目的とす

るものである。

【0005】

【発明の実施の形態】以下,図面に示す実地の形態について説明する。中空

の本体1の両端に,薄い板状の,それぞれ厚みは同じで,幅の異なる芯2を

取り付け,その芯2の先端面6,及び本体後面側4の先端面6に沿った先端

の一部を露出させるように枠3で被う。本体正面側5の先端近くから枠3と

の接続部まで,ゆるい傾斜をつける。液体を含み易い,スポンジやフェルト

などの素材に,アイライナー用の液状の顔料を含ませ,本体1内部に挿入す

る。その顔料を含ませた部分と芯2を接続し,顔料が芯2に浸透するように

する。芯2の素材は,液状の顔料が浸透し易く,容易に変形しにくい,固め

のスポンジ状の素材,フェルト状の素材などを使用する。また,本体1と枠

3は,合成樹脂や金属など,顔料が浸透しにくく,固くて変形しにくい素材
を使用する。

【0006】このアイライナーでアイラインを描く時には,顔料が付着した

芯2の先端面6をまつげの生え際に軽く押し当てる。このとき,本体後面側

4の先端部をまつげの生え際に沿わせる。この部分には枠3が無いので,芯

2の先端面6の一辺が,まつげの生え際に密着することになる。アイライナ

ーを除くと線状になった芯2の先端面6の形が一度にまつげの生え際に沿っ

て描かれる。先に描かれた線に続けて同じ動作を繰り返すことによって,ア

イラインが描かれていく。短い幅の方の先端部は,目頭や目尻付近など細か

い微妙な線を描く時に使用する。

【0008】

【発明の効果】本発明は,一度にある程度の長さの,太さの均一な線が描け

るうえに,まつげの生え際に沿わせ易く,また,顔料が付着する部分は先端

のごく一部なので,手早く,簡単に,汚さず,まつげの生え際に沿ったアイ
ラインを描くことが出来る。

(2) 刊行物1の上記記載によれば,従来のアイライナーは,先端が筆型ある

いは鉛筆型になったものであるのに対し,引用発明における「アイライナ

ー」は,先端を薄く平たい形状にして,中空の本体内部に,アイライナー用
の液状の顔料を含ませたスポンジやフェルトなどの素材を挿入し,その顔料

を含ませた部分と芯とを接続して,顔料が芯2に浸透するようにしたもので

あって,顔料が付着した芯の先端面をまつげの生え際に軽く押し当てること

によって,線状のアイラインを描く化粧用具であると認められる。

3 以上を踏まえ,本願補正発明の「化粧用チップ」と引用発明の「アイライナ
ーの芯2」との異同について検討する。

(1) 本願補正発明の「化粧用チップ」と引用発明の「アイライナーの芯2」と

は,化粧料を化粧部位に塗布する化粧用具の先端部という点では共通するも

のの,本願補正発明の「化粧用チップ」は,まぶたや二重の幅にアイシャド
ー等を付するために,化粧料を面状に付着させたり,塗布したり塗り拡げた
り,ぼかしてグラデーションを作るなどするための化粧用具の先端部である

と共に,これを目の際に使用して線状のアイラインを描くためにも用いるこ

とができるものであるのに対し,引用発明の「アイライナーの芯2」は,ま

ぶたの生え際(目の際)に線状のアイラインを描くためにのみ使用する化粧

用具の先端部であり,本願補正発明の「化粧用チップ」のように,化粧料を
まぶたや二重の幅に面状に塗布したり塗り拡げたりして,アイシャドー等を

付するとの機能を備えた用具の先端部ではない点で異なるものである(化粧

用チップは,面状のアイシャドー等及び線状のアイライン形成のいずれのた

めにも使用することができるのに対し,アイライナーの芯2は線状のアイラ

イン形成のためにのみ使用することができるものであり,面状のアイシャド
ー等を形成するために使用されるものではない。)。したがって,化粧用チ

ップとアイライナーの芯2とは,一部において用途が共通するとしても,そ

の主たる用途は異なるものであり,これを化粧用具の先端部として同一のも

のとみることはできない。
してみると,審決が,引用発明の「アイラインを描くためのアイライナー

の芯2」又は「芯2」が,文言の意味,形状又は機能からみて本願補正発明

の「化粧用チップ」に相当すると判断し,これを本願補正発明と引用発明と

の相違点として認定せずに,両者は,「塗布部先端の端縁部を線状又は面状

にしてなる化粧用チップ」である点で共通すると認定したことは誤りである。
そして,審決は,本願補正発明と引用発明との上記相違点を看過した上で,

その一致点及び相違点1及び2を認定し,相違点1については,引用発明の

アイライナーの「芯2」の先端部の「略直線状又は略平面状」の形状を化粧

用チップの「直線状又は平面状」の形状とすることは「当業者であれば適宜

なし得た」と判断したものである。
しかし,引用発明の「アイライナーの芯2」は,化粧用チップと異なり,
まぶたや二重の幅に化粧料を面状に塗布したり,これを塗り広げるなどして
アイシャドー等を施すとの機能を奏さず,線状にアイラインを描くとの機能

のみを奏するものであるから,そのような「アイライナーの芯2」の塗布部

先端の形状を,まぶたや二重の幅に化粧料を面状に塗布したり,これを塗り

拡げるなどしてアイシャドー等を施すとの機能を奏する化粧用チップの塗布

部先端の形状として転用し得るものか否かは直ちには明らかではなく,本来
であるならば,審決は,このような相違点も踏まえて容易想到性についての

判断をすることを要するのに,これをせずに,アイライナーの芯と化粧用チ

ップとの上記相違点を看過して容易想到性の判断をしたものである。よって,

審決の上記相違点の看過は,審決の容易想到性の判断に実質的な影響を与え

る誤りであるといわざるを得ず,審決は取消しを免れない。
(2) 被告は,「化粧用チップ」は,英語の「tip」や日本語の「チップ」

の語義に照らして,「化粧料の塗布用の先端部材」と解されること,本願の

特許請求の範囲に「化粧用チップ」の具体的用途や使用方法について何らの

特定のないこと,本願明細書の記載によれば,本願補正発明の「化粧用チッ
プ」はアイラインを引くことにも使用されると理解されること,化粧用具に

関する技術分野においては,化粧料を化粧部位に塗るために使用されるチッ

プが,化粧料を含浸させるチップを排除するものではないことに照らせば,

引用発明の「アイライナーの芯2」が本願補正発明の「化粧用チップ」に相

当するとの審決の認定に誤りはないと主張する。
しかし,本願補正発明の「化粧用チップ」は,その特許請求の範囲に具体

的な用途や使用方法についての特定がないとしても,まぶたや二重の幅に化

粧料を付着させ,これを塗布したり塗り拡げたりする化粧用具の先端部であ

り,またアイラインを引くことにも使用され得るものであることが,本願明

細書の記載から優に認められるものであることは,前記のとおりである。ま
た,本願補正発明の「化粧用チップ」が化粧料を含浸させるタイプのものも
排除するものではないことも前記認定のとおりであるものの,引用発明の
「アイライナーの芯2」が,まぶたや二重の幅に化粧料を付着させ,これを

面状に塗布したり塗り拡げたりするアイシャドー等用の化粧用具のための先

端部ではないことも刊行物1の前記記載から明らかである以上,本願補正発

明の「化粧用チップ」と引用発明の「アイライナーの芯2」は,化粧用具の

先端部として同一のものであるとはいえず,被告の上記主張を斟酌しても,
引用発明の「アイライナーの芯2」を本願補正発明の「化粧用チップ」とみ

ることができないことも前記認定判断のとおりである。被告の上記主張は採

用することができない。

4 結論

以上のとおり,取消事由1は理由があり,審決には取り消すべき違法がある。
よって,審決を取り消すこととして,主文のとおり判決する。



知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官 設 樂 z 一




裁判官 田 中 正 哉




裁判官 神 谷 厚 毅

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