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事件 平成 24年 (行ケ) 10234号 審決取消請求事件
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 知的財産高等裁判所 
判決言渡日 2013/03/06
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
判例全文
判例全文
平成25年3月6日判決言渡
平成24年(行ケ)第10234号 審決取消請求事件

平成25年1月28日 口頭弁論終結

判 決




原 告 サノフィーアベンティス・ドイチュラン

ト・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレン

クテル・ハフツング




訴訟代理人弁理士 結 田 純 次

同 竹 林 則 幸
同 石 井 淑 久



被 告 ノボ・ノルデイスク・エー/エス




訴訟代理人弁理士 園 田 吉 隆
同 小 林 義 教

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と

定める。
事実及び理由

1
第1 請求
特許庁が無効2011−800096号事件について平成24年2月23日にし

た審決を取り消す。

第2 当事者間に争いのない事実

1 特許庁における手続の経緯等

被告は,発明の名称を「注射針の装着システムと注射針アセンブリの装着方法」

とする特許(特許第4472522号。平成15年6月30日国際出願パリ条約

による優先権主張・2002年7月3日(米国)
,同年8月1日(デンマーク),平

成22年3月12日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である。

原告は,平成23年6月9日,本件特許について無効審判請求(無効2011−

800096号)をし,これに対し,被告は,同年9月27日付け訂正請求書(甲

14。以下「本件訂正請求書」という。)により,特許請求の範囲の記載を訂正した

(以下,
「本件訂正」といい,下記請求項1に係る訂正を「訂正事項1」と,下記請
求項6に係る訂正を「訂正事項2」という。 。


特許庁は,平成24年2月23日付けで,
「訂正を認める。本件審判の請求は,成

り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年3月2日,原告に送達された。

2 特許請求の範囲の記載

本件訂正後の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,これらの請求

項に係る発明を項番号に対応して,
「訂正特許発明1」などといい,これらをまとめ
て「訂正特許発明」という。下線は訂正部分を示す。。


【請求項1】

注入装置の,注射針アセンブリ(500)を注射針マウント(100)に装着す

るための注射針装着システムにあって,

注射針アセンブリ(500)は,

注射針に取付けられたハブ(10)を有し,ハブ(10)は円筒形の内壁(20)
を有し,

2
注射針マウント(100)は,
頂端部を有する円筒形の外壁(110)を有し,

注射針アセンブリ(500)が更に,

ハブ(10)の円筒形の内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(3

0)を有し,

注射針マウント(100)が更に,

円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)と,円筒形の外壁(1

10)の頂端部から始まり,円筒形の外壁(110)の円筒軸(1000)に概ね

平行する通路を画定する,円筒形の外壁(110)に設けられた複数の溝(120)

とを有し,

注射針マウント(100)の少なくとも一つの溝(120)が,第一の領域(1

30)と,第一の領域(130)に対してある角度を有する第二の領域(150)

とを有し,
複数の突起(30)は,バヨネット結合を形成するため複数の溝(120)と相

互に作用し,スレッド(200)は,はめ合わせに適合する従来のねじ式注射針ア

センブリを注射針マウント(100)にねじ込んで接続することに適しており,

前記溝(120)は,前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く

刻まれ,もってバヨネット結合を形成する際に前記複数の突起(30)が誤って複

数のスレッド(200)に導入されることを防止することを特徴とする注射針装着
システム。

【請求項2】

第一の領域(130)と第二の領域(150)間の角度が90°又はそれ未満で

あることを特徴とする請求項1に記載の注射針装着システム。

【請求項3】

溝(120)の第一の領域(130)が,注射針マウント(100)の入口部分
(135)を画定する頂端部において最も幅が広いことを特徴とする請求項1又は

3
2に記載の注射針装着システム。
【請求項4】

突起(30)が円形の面を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか

に記載の注射針装着システム。

【請求項5】

更に,注射針ハブ(10)が注射針マウント(100)上に確実に装着されたこ

とを感触で及び/又は聴覚で認識できる手段を有することを特徴とする請求項1な

いし4のいずれかに記載の注射針装着システム。

【請求項6】

円筒形の外壁(110)が,頂端部と,円筒形の外壁(110)に標準のねじ式

注射針アセンブリを受け入れるため円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド

(200)とを有し,

複数の溝(120)が,円筒形の外壁(110)の頂端部から始まり,円筒形の
外壁(110)の円筒軸(1000)に概ね平行する通路を画定するように,円筒

形の外壁(110)に設けられ,

注射針マウント(100)の少なくとも一つの溝(120)が,第一の領域(1

30)と,第一の領域(130)に対してある角度を有する第二の領域(150)

とを有しており,

前記溝(120)は,前記外壁(110)に前記スレッド(200)よりも深く
刻まれ,内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有するハ

ブと前記注射針マウント(100)とをバヨネット結合する際に,前記複数の突起

(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止すること,を

特徴とする注射針マウント(100)。

【請求項7】

第一の領域(130)と第二の領域(150)間の角度が90°又はそれ未満で
あることを特徴とする請求項6に記載の注射針マウント(100)。

4
【請求項8】
溝(120)は,入口部分(135)を形成する注射針マウント(100)の頂

端部において最も幅が広いことを特徴とする請求項6又は7に記載の注射針マウン

ト(100)。

【請求項9】

注射針マウント(100)は,注射針アセンブリ(500)を装着し,

注射針アセンブリ(500)は,

注射針(510)に取付けられたハブ(10)を有し,ハブ(10)は,円筒形

の内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)を有する円筒形の

内壁(20)を有していること,を特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載

の注射針マウント(100)。

【請求項10】

注射針アセンブリ(500)の突起(30)が円形の面を有することを特徴とす
る請求項9に記載の注射針マウント(100)。

【請求項11】

注射針アセンブリ(500)の突起(30)が円筒軸(1000)に垂直に突き

出ていることを特徴とする請求項9又は10に記載の注射針マウント(100)。

【請求項12】

注射針アセンブリ(500)の突起(30)が注射針マウント(100)の頂端
部と向かい合ったハブ(10)の近接端の近くに配置されていることを特徴とする

請求項9ないし11のいずれかに記載の注射針マウント(100)。

3 審決の理由

審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,@本件訂正は,特許

請求の範囲減縮及び明瞭でない記載釈明を目的とし,明細書及び図面に記載さ

れている事項の範囲内のものであり,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更
るものではない,A訂正特許発明は,甲2(実公昭26−14395号公報)に記

5
載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明することができたものではなく,
特許法29条2項により,無効とすることはできない,というものである。

審決は,上記結論を導くに当たり,甲2に記載された発明の内容,同発明と訂正

特許発明1との一致点及び相違点を次のとおり認定した。

(1) 甲2発明1の内容

「注射器の,注射針を先金3に装着使用する構造にあって,

注射針は,

針10に取り付けられた座9を有し,座9は円筒形の内壁を有し,

先金3は,

前端部を有する筒形の前方側壁を有し,

注射針が更に,

座9の外側に複数の凸子7が設けられ,

先金3が更に,
筒形の前方側壁の前端部から始まり,筒形の前方側壁の中心軸に概ね平行する平

行部分を有する,筒形の側壁を貫通するように設けられた複数の斜溝4を有し,

先金3の少なくとも一つの斜溝4が,平行部分と,平行部分に対して所定角度を

有する斜行部分とを有し,

複数の凸子7は,複数の斜溝4と係合し注射針は確実に定着保持される,構造。」

(2) 訂正特許発明1と甲2発明1との一致点
「注入装置の,注射針アセンブリ(500)を注射針マウント(100)に装着

するための注射針装着システムにあって,

注射針アセンブリ(500)は,

注射針に取付けられたハブ(10)を有し,ハブ(10)は円筒形の内壁(20)

を有し,

注射針マウント(100)は,
頂端部を有する円筒形の外壁(110)を有し,

6
注射針アセンブリ(500)が更に,
ハブ(10)から突き出た複数の突起(30)を有し,

注射針マウント(100)が更に,

円筒形の壁の円筒軸(1000)に概ね平行する通路を画定する,円筒形の壁に

設けられた複数の溝(120)とを有し,

注射針マウント(100)の少なくとも一つの溝(120)が,第一の領域(1

30)と,第一の領域(130)に対してある角度を有する第二の領域(150)

とを有し,

複数の突起(30)は,バヨネット結合を形成するため複数の溝(120)と相

互に作用する注射針装着システム。」

(3) 訂正特許発明1と甲2発明1との相違点

ア 相違点1

複数の突起(30)が,訂正特許発明1では,「ハブ(10)の円筒形の内壁(2
0)から内側に放射状に突き出た複数の突起(30)」であるのに対し,甲2発明

1では,ハブ(10)の外側に突き出た複数の突起(30)である点。

イ 相違点2

円筒形の壁に設けられた複数の溝(120)が,訂正特許発明1では,「円筒形

の外壁(110)に設けられた複数の溝」であるのに対し,甲2発明1では,円筒

形の壁を貫通するように設けられた複数の溝(120)である点。
ウ 相違点3

訂正特許発明1では,注射針マウント(100)が,「円筒形の外壁(110)

に設けられたスレッド(200)」を有し,「スレッド(200)は,はめ合わせ

に適合する従来のねじ式注射針アセンブリを注射針マウント(100)にねじ込ん

で接続することに適しており,溝(120)が,外壁(110)にスレッド(20

0)よりも深く刻まれ,もってバヨネット結合を形成する際に複数の突起(30)
が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」のに対し,甲2

7
発明1では,注射針マウント(100)が,「円筒形の外壁(110)に設けられ
たスレッド(200)」を有しておらず,また,「スレッド(200)は,はめ合

わせに適合する従来のねじ式注射針アセンブリを注射針マウント(100)にねじ

込んで接続することに適して」いるものではなく,さらに,甲2発明1の溝(12

0)が,「外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれ,もってバヨネ

ット結合を形成する際に複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に

導入されることを防止する」「溝(120)」でもない点。

第3 当事者の主張

1 取消事由に関する原告の主張

(1) 取消事由1(本件訂正の適否に係る判断の誤り)

ア 訂正事項の認定の誤り

訂正事項1のうち請求項1の「適していること」を「適しており」と訂正するこ

と,及び訂正事項2のうち請求項6の「有していること」を「有しており」と訂正
することは,本件訂正請求書に添付された特許請求の範囲には記載されているが,

本件訂正請求書自体には記載されていないから,どちらに訂正するものか特定でき

ない。したがって,本件訂正における訂正事項の認定には誤りがある。

また,審判長は,上記のような齟齬がある場合,訂正請求書の補正を命ずべきと

ころ(特許法133条1項),本件審判では,上記齟齬を放置したまま訂正事項を

認定したものであり,手続違背がある。
訂正の目的に関する判断の誤り

審決は,上記アの訂正事項について,表現を整えるものであるから,明瞭でない

記載の釈明を目的とするものに該当すると判断する。

しかし,審決は,上記のとおり,本件訂正請求書の齟齬により訂正事項が特定で

きないにもかかわらず,上記アの訂正事項を認定し,訂正の目的を判断したもので

あって,本件訂正における目的の判断には誤りがある。
新規事項の追加,特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の有無の判断の誤

8

本件特許に係る願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)には,

「前記溝(120)」は,「前記外壁(110)」に「前記スレッド(200)」

よりも深く刻まれ, ってバヨネット結合を形成する際に 前記複数の突起
も 「 (30)」

が誤って複数の「スレッド(200)」に導入されることを防止することは記載さ

れていない。また,本件特許に係る願書に添付した図面(別紙図1,2等。以下「本

件特許図面」という。)は,突起がスレッドよりも深く刻まれた溝に挿入できる太

さ,あるいは深く刻まれた溝の底近くに達する長さを有するものであることなど,

突起と溝 との 寸 法 関 係等を 読み 取ることができる程度 の 詳 しさでは描 かれていな

い。本件特許図面に描かれている溝の深さは,スレッド間に導入しないように形成

された突起の長さに対応するものとは限らず,クリアランスを取ったもの,汎用性

を考慮して幅を持たせたもの,製造の便宜上深く形成されたものなどが考えられ,

その技術的意義が明らかでない。
したがって,訂正事項1のうち「前記溝(120)は,前記外壁(110)に前

記スレッド(200)よりも深く刻まれ,もってバヨネット結合を形成する際に前

記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止

する」との記載は,本件特許明細書及び本件特許図面から導き出すことができない

事項であり,願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正

ではなく,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものであるから,審決の
訂正事項1に係る判断には誤りがある。また,訂正事項2は,実質的に訂正事項1

と同様の訂正をするものであるから,審決の訂正事項2に対する判断にも同様に誤

りがある。

エ 以上のとおり,審決には本件訂正の適否に係る判断に誤りがある。

(2) 取消事由2(本件特許発明の認定の誤り)

上記(1)のとおり,本件訂正は認められるべきものではなく,本件特許発明は,本
件訂正前の特許請求の範囲の記載に基づいて認定されるべきものであるから,審決

9
の本件特許発明の認定には誤りがある。
(3) 取消事由3(相違点3の認定の誤り)

上記(1)のとおり,本件訂正は認められるべきものではなく,本件特許発明は,本

件訂正前の特許請求の範囲の記載に基づいて認定されるべきものであるから,審決

の相違点3の認定には誤りがある。

(4) 取消事由4(相違点3の容易想到性判断の誤り)

ア 注射針のハブの接続(装着)構造として,バヨネット結合,ねじ結合,スナ

ップロック結合及び嵌合摩擦結合は,周知の技術であって,適宜選択し得るもので

ある。また,甲2,5(特表平8−501242号公報),16の1(英国特許第

302974号明細書)のように,1つの注射器の注射針マウントに異なる接続手

段を併設することにより,異なる接続手段を有する注射針のハブを接続可能とする

ことは,注射器の分野において周知の技術課題として存在していた。さらに,バヨ

ネット結合構造とねじ結合構造を有する,甲6の1(独国実用新案第201015
94号明細書),7(特開平6−157174号公報)記載の発明の接続技術は,

甲2発明1のバヨネット結合構造(甲2の第1図,第2図(別紙図3,4)参照)

と甲4(特開2001−161817号公報),5に記載されるような周知のねじ

結合構造を併設させる動機付けとなる。

したがって,甲2発明1のバヨネット結合構造による注射針マウントに,ねじ結

合構造のねじ(接続手段)を有する注射針のハブを接続できるようにするため,甲
4,5に記載されるような周知のねじ結合構造のねじ(接続手段)を組み合わせる

ことは,当業者が容易に想到し得たことである。

イ バヨネット結合構造における突起と溝との寸法,構造等は,バヨネット結合

構造が形成され,確実に接続動作が行えるように,溝の幅,突起の径,溝の幅と突

起の径の相互関係の設定,溝の深さと突起の長さの相互関係の設定などが,適宜設

計されるものである。
したがって,バヨネット結合を形成する際に複数の突起(30)が誤って複数の

10
スレッド(200)に導入されることを防止するため,溝(120)が,外壁(1
10)にスレッド(200)よりも深く刻まれるように形成することは,単なる設

計的事項にすぎない。

ウ 以上によれば,甲2発明1のバヨネット結合構造による注射針マウントに,

ねじ結合構造のねじ(接続手段)を有する注射針のハブを接続できるようにするた

め,甲4,5に記載されるような周知のねじ結合構造のねじ(接続手段)を組み合

わせ,バヨネット結合構造の溝を,ねじ結合構造のスレッド(ねじ山)にスレッド

より深く刻み,併設することは当業者が容易に想到し得たことである。

エ 被告の主張に対して

被告は,甲2発明1に係る注射器は,嵌合摩擦接続(装着)を否定し,バヨネッ

ト結合による接続(装着)を採用したものであると主張する。しかし,甲2には,

嘴筒の前半部のみを稍急傾斜テーパーに形成することが記載されており,甲2記載

の注射針マウント構造は,バヨネット結合による接続(装着)と,緩いテーパー部
を用いる嵌合摩擦による接続(装着)が併存されたものと理解することができる。

また,被告は,甲5記載の発明が回転の回避を解決課題としているから,一部回

転運動を伴うバヨネット結合を採用する甲2発明1に,甲5記載の発明を組み合わ

せることには阻害事由があると主張する。しかし,甲5には,針ホルダーが,アン

プル又はカートリッジのねじ上を回転することにより螺着できるように形成される

ことが記載されており,甲5記載の発明のマウント構造は,スナップロック結合だ
けではなく,ねじ結合を利用することも示されている。また,バヨネット結合の接

続(装着)動作は,突起を溝に沿って軸方向に直線的に移動し,係止するときに僅

かに回動させて係止する構造であるから,ホルダー部分にバヨネット結合を採用し

たときに,注射針の先端が密封栓を貫通する動作は,軸方向に直線的に移動するス

ナップロック結合と基本的に同じ動作といえる。したがって,甲2発明1に甲5記

載の発明を組み合わせることに阻害事由はない。
オ 以上のとおり,審決の相違点3に係る容易想到性の判断には誤りがあり,本

11
件訂正発明は,特許法29条2項に基づく無効理由がある。
2 被告の反論

(1) 取消事由1(本件訂正の適否に係る判断の誤り)に対して

ア 訂正事項の認定の誤りについて

本件訂正請求書の「7.2 訂正の内容」には,訂正事項1,2のとおり,訂正

事項が記載されており,訂正事項1,2に係る訂正の対象,箇所及び内容は,いず

れも明確に特定されており,審決の訂正事項の認定に誤りはない。
また,本件訂正請求書に訂正内容が文言どおり記載されていなかったとしても,

上記のとおり,訂正事項は明確に特定されているから,審判長は本件訂正請求書に

ついて補正を命ずる必要はなく,本件審判手続に手続違背はない。

訂正の目的に関する判断の誤り

上記アのとおり,本件訂正請求書において,訂正事項1,2に係る訂正の対象,

箇所及び内容は,いずれも明確に特定されている上,「適していること」を「適し
ており」にする訂正,及び「有していること」を「有しており」にする訂正は,表

現を整えるものであり,明瞭でない記載釈明を目的とするものに当たる。

新規事項の追加,特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の有無の判断の誤



本件特許図面1,2(別紙図1,2)によれば,注射針マウント(100)の円

筒形の外壁(110)に,円筒軸(1000)に概ね平行するように形成された複
数の溝(120)は,スレッド(200)よりも深く刻まれているものと理解され

る。また,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1には,「複数の突起(30)は,

バヨネット結合を形成するために複数の溝(120)と相互作用し」との記載があ

り,「突起」と「溝」が相互作用してバヨネット結合を形成するものと理解するこ

とができる。

そうすると,「溝が外壁にスレッドよりも深く刻まれ,もってバヨネット結合を
形成する際に複数の突起が誤って複数のスレッドに導入されることを防止する」点

12
は,本件特許図面,特許請求の範囲の記載から明白に導き出すことができる事項で
あり,訂正事項1は,新規事項の追加,特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更

当たらない。また,訂正事項2(請求項6の訂正)についても同様である。

(2) 取消事由2(本件特許発明の認定の誤り)に対して

上記(1)のとおり,本件訂正は認められるべきものであるから,本件訂正に基づい

てされた本件特許発明の認定に誤りはない。

(3) 取消事由3(相違点3の認定の誤り)に対して

上記(2)のとおり,本件特許発明の認定に誤りはないから,これに基づいてされた

相違点3の認定にも誤りはない。

(4) 取消事由4(相違点3の容易想到性判断の誤り)に対して

ア 甲2発明1に係る注射器は,バヨネット結合による接続(装着)と嵌合摩擦

接続(装着)との2種類の接続(装着)手段を有するものではなく,嵌合摩擦接続

(装着)を否定した上で,バヨネット結合による接続(装着)を採用するものであ
る。

また,甲4の段落【0024】には,「バヨネットタイプの構造」と記載されて

いるものの,これはカラーとアウタハブとの間の種々あるネジ結合の構造の一例と

して挙げられているにすぎず,甲4には,カラーとアウタハブとの結合に,2種類

以上の結合様式を可能ならしめる構造を採用することの記載も示唆もない。

さらに,甲5記載の発明は,回転運動により針をねじ込むことによってゴムの摩
滅が生じるという課題を解決するものであり,回転なしでカートリッジアンプルに

取り付けられる針ホルダーに係る発明である。これに対し,バヨネット結合は,一

部回転運動を伴う構成であり,バヨネット結合のはめ込みにおいては最後の回転の

際にカートリッジアンプルと針ホルダーの間の摩擦による抵抗が最も大きくなるも

のと解される。したがって,バヨネット結合を採用する甲2発明1に回転運動を回

避 することを 課題 とする甲5記載の発明を 組み合わせ ることには 阻害 事由がある
(なお,甲5記載の発明は,溝とスレッドを同じ深さとしているので,突起が溝に

13
もスレッドにも入る可能性があり,訂正特許発明1の課題を解決することもできな
い。)。

そして,甲6の1記載の発明は,ヘアーシャンプー等の化粧用製品の入った容器

に係る発明であって,甲2発明1の具体的な技術分野である注射器とは技術的関連

性がなく,容器に接続する具体的な対象も全く異なっている(なお,甲6の1には,

円筒形の外側にバヨネット結合の溝のみならず,ねじ結合のスレッドをも有する接

合構造が開示されているが, をスレッドよりも深く刻むことを示すものではなく,


バヨネット結合を形成する際に複数の突起が誤って複数のスレッドに導入されるこ

とを防止するという解決課題も示されていない。)。

以上のとおり,甲2及び甲4には,2種類の接続(装着)手段を設けるとの記載

も示唆もなく,バヨネット結合を採用する甲2発明1に回転運動を回避することを

課題とする甲5記載の発明を組み合わせることには阻害事由があるから,甲2発明

1に甲4,5に記載されるような周知技術を適用することが容易であったとはいえ
ない。

イ 甲2,4,5,6の1,7の1には,溝が外壁にスレッドよりも深く刻まれ

ることは記載も示唆もされておらず,バヨネット結合を形成する際に複数の突起が

誤って複数のスレッドに導入されることを防止するという作用効果又は技術課題も

記載されていない。

ウ 以上によれば,甲2発明1に甲4,5に記載されるような周知技術を適用す
ることにより,相違点3に係る構成が容易に想到できたとはいえない。審決の本件

訂正発明に係る容易想到性判断に誤りはない。

第4 当裁判所の判断

当裁判所は,原告主張の取消事由には理由がないと判断する。その理由は,以下

のとおりである。

1 取消事由1(本件訂正の適否に係る判断の誤り)について
(1) 訂正事項の認定の誤り

14
原告は,本件訂正における訂正事項の認定には誤りがある上,齟齬を放置したま
ま訂正事項を認定した手続違背があると主張する。

しかし,本件訂正請求書(甲14)の「7.2 訂正の内容」には,「添付特許

請求の範囲に記載のとおり。」と記載され,添付された特許請求の範囲の記載から

は,請求項1の「適していること」を「適しており」と訂正すること,及び請求項

6の「有していること」を「有しており」と訂正することが容易に理解されること

からすれば,「7.3 訂正の要旨」等にその旨の記載がないからといって,訂正

事項が不特定であるとはいえない。

したがって,本件訂正における訂正事項の認定には誤りがあるとの原告の上記主

張,及びこれを前提とした手続違背の主張は,採用することができない。

(2) 訂正の目的

原告は,審決には,上記(1)の訂正における目的の判断に誤りがあると主張する。

しかし,上記(1)の訂正は,請求項1の「適していること」を「適しており」と,
請求項6の「有していること」を「有しており」と表現を整えるものであり,明瞭

でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

したがって,原告の上記主張は採用することができない。

(3) 新規事項の追加,特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の有無の判断の誤



原告は,訂正事項1のうち「前記溝(120)は,前記外壁(110)に前記ス
レッド(200)よりも深く刻まれ,もってバヨネット結合を形成する際に前記複

数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止する」

との記載は,本件特許明細書及び本件特許図面から導き出すことができない事項で

あり,願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正ではな

く,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものである,訂正事項2も同様

である,と主張する。
しかし,原告の上記主張は,以下のとおり,採用することができない。

15
ア 事実認定
(ア) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである。

「【請求項1】

注入装置の,注射針アセンブリ(500)を注射針マウント(100)に装着す

るための注射針装着システムにあって,

注射針アセンブリ(500)は,

注射針に取付けられたハブ(10)を有し,ハブ(10)は円筒形の内壁(20)

を有し,

注射針マウント(100)は,

頂端部を有する円筒形の外壁(110)を有し,

注射針アセンブリ(500)が更に,

ハブ(10)の円筒形の内壁(20)から内側に放射状に突き出た複数の突起(3
0)を有し,

注射針マウント(100)が更に,

円筒形の外壁(110)に設けられたスレッド(200)と,円筒形の外壁(1

10)の頂端部から始まり,円筒形の外壁(110)の円筒軸(1000)に概ね

平行する通路を画定する,円筒形の外壁(110)に設けられた複数の溝(120)

とを有し,
注射針マウント(100)の少なくとも一つの溝(120)が,第一の領域(1

30)と,第一の領域(130)に対してある角度を有する第二の領域(150)

とを有し,

複数の突起(30)は,バヨネット結合を形成するため複数の溝(120)と相

互に作用し,スレッド(200)は,はめ合わせに適合する従来のねじ式注射針ア

センブリを注射針マウント
(100)
にねじ込んで接続することに適していること,
を特徴とする注射針装着システム。」

16
(イ) 本件明細書(甲1)には,以下の記載がある。
「【0001】

発明の技術分野

本発明は一般に注入装置に関する。特に,注入装置や注入装置に実装されている

アンプルに注射針を装着する方法とシステムに関する。


「【0003】

特に,ペン型注入装置は,薬剤やインスリンのような生物製剤を投与するための

正確,簡便,且つ,多くの場合独立的な方法であることが立証されている。・・・」

「【0004】

・・・注射針マウントは通常ねじ山付きの装着面を有し,これによって,例えば

注射針とハブから構成される注射針アセンブリをこの装着面に回転挿入することが

出来る。・・・」

「【0005】
・・・従来技術による注射針装着システムの不便な点は,患者が,注入装置に対

し注射針ハブを数回回転させて,注射針をアンプル又は投薬装置の先端部に挿入し

なければならない点である。・・・」

「【0006】

発明の概要

本発明は注射針アセンブリを注入装置及び/又はアンプルに装着するシステム及
びその方法を提供する。本発明のシステムとその方法は,必ずしも全部ではないが

幾つかの実施例において,注射針とハブのアセンブリをアンプル又は/及び注入装

置に,注入装置に対して注射針ハブアセンブリを一回転させることなく装着するこ

とを可能にする。本発明のある実施例においては,注射針アセンブリはハブ内に取

付けられている注射針を有している。注射針アセンブリは,注射針ハブを注射針マ

ウントに対し部分的に回転するだけでハブをマウントに装着できる手段も有してい
る。本発明のまた別の実施例おいては,注射針アセンブリを装着するための注射針

17
マウントは,外壁と,注射針アセンブリを該外壁の頂端部に固定するための装着手
段とを有している。幾つかの実施例においては,これらの手段によって,注射針マ

ウントを部分的に回転させるだけで注射針アセンブリを注射針マウントに完璧に固

定できる。・・・」

「【0011】

更に,これらの突起は標準のアンプルアダプタの先端部のスレッド(ねじ山)の

間に契合するようにその寸法を決めることも出来る。突起を,内部ハブ壁上に設け,

標準アダプタの先端部のスレッドの間に嵌まるように配列すれば,従来方法で注射

針アセンブリをアダプタの先端部に回転させて挿入することが可能となる。

実施例】

【0012】

本発明は注射針ハブアセンブリをアンプルや注入装置に装着するシステムとその

方法を提供する。通常,注射針ハブアセンブリはハブ550に装着された注射針5
10を有している・・・。図1(判決注・別紙図1)に示すように,注射針ハブ1

0は一般に円筒形であり内壁面20を有している。
本発明のある実施例においては,

内壁面20から放射状に複数の突起30が内部方向に突き出ている。

【0013】

注射針マウント100は注射針ハブ10を受け入れることが出来るように設計さ

れている(例えば,図1参照)。図1及び図2(判決注・別紙図2)に示すように,
注射針マウント100は一般に円筒形であり,外壁面110を有している。外壁面

110には複数の溝又はスロット120が設けられている。この溝120は第一端

122と第二端125を有している。この溝120は第一の領域130を有してお

り,これは一般に注射針マウント100の円筒軸1000に平行な通路を定めてい

る。本図において,溝の第一の領域130は方形の領域を有しているように示され

ているが,注射針ハブ上の突起30が円筒軸1000に対し平行方向に移動できる
ならば,この溝の厳密な形状は重要ではない。これ故,この溝が円筒軸1000に

18
対して必ずしも平行でない壁を有していても,突起30が円筒軸に対し平行方向に
動くことができるならば,この溝は円筒軸に平行であると言って良い。溝の第一の

領域130の一部分の幅が,第一の領域の他の部分,或いは,溝120の他の部分

の幅よりも広くなっていてよい。溝が円筒軸1000に対し平行でない壁を有する

実施例においては,溝の第一の領域130の幅は,溝の第一の領域130の平均的

な幅となる。

【0014】

第一の領域130は入口部135を有しており,この入口部の幅は第一の領域の

平均幅,乃至は,溝120全体の平均幅よりも広い幅を有している。入口部135

は突起30が溝120に入ることができるように注射針ハブを位置合わせする位置

合わせ手段として機能する。全部ではないが殆どの実施例において,入口部の幅は

溝120のどの部分よりも広くなっている。一般に溝の幅は溝が入口部135から

離れるにつれて狭くなる。図に示すように,溝の幅は入口から少し離れた地点から
一定幅となる。或る実施例においては,第一の領域130の幅は入口部分135で

最大であり,第一の領域130の長さにつれて狭くなっていく。この溝は第二の領

域150を有しており,第二の領域は円筒軸1000に垂直であるか,或いは,第

一の領域130に対しある角度を有しているかのどちらかである。本発明の或る実

施例においては,第二の領域150は,通常,注射針マウントの円筒軸に垂直な面

を一つだけ有している。これ故,溝の第二の領域150は両側に壁を有するスロッ
トである必要はなく,注射針ハブ上の突起が注射針マウントの外端部側に移動する

ことを阻止する片壁が必要なだけである。図1に示すように,溝120は第三の領

域160も有しており,この領域は第一の領域130と第二の領域150に対しあ

る角度を有するように方向付けられる。」

「【0016】

本発明の利点の一つは,注射針マウントが標準的なスレッド200をその外壁面
に備えることが出来ることである。 図1参照) 溝120は標準的なスレッド20
( 。

19
0の中に割り込むことが出来る。これにより注射針マウント100は本発明の注射
針ハブだけでなく,標準タイプのねじ山付きの注射針ハブアセンブリも受け入れる

ことが出来る。


イ 判断

上記によれば,本件明細書に記載された発明は,薬剤やインスリンのような生物

製剤を投与するための注入装置や,注入装置に実装されているアンプルに注射針を

装着するシステムに関するものであって(甲1・段落【0001】,【0003】),

従来,注射針マウントにねじ山付きの装着面を有し,注射針とハブから構成される

注射針アセンブリをこの装着面に回転挿入する技術があったが,患者が,注入装置

の注射針マウントに対し注射針ハブを数回回転させて,注射針をアンプル又は投薬

装置の先端部に挿入しなければならないため不便であったので(同【0004】,

【0005】),注射針とハブのアセンブリを一回転させることなくアンプル又は

注入装置に装着することを可能にしたものであり(同【0006】),注射針マウ
ントが標準的なスレッド200をその外壁面に備え,溝120が標準的なスレッド

200の中に割り込むことができ,これにより注射針マウント100は本件特許発

明の注射針ハブだけでなく,標準タイプのねじ山付きの注射針ハブアセンブリも受

け入れることができる(同【0016】)ものと認められる。

これに加えて,本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1のうち,
「複数の突起(3

0)は,バヨネット結合を形成するため複数の溝(120)と相互に作用し」との
記載,本件明細書の段落【0012】ないし【0014】の記載及び本件特許図面

1,2(別紙図1,2)を参照すれば,突起と溝の関係について,突起がスレッド

に入らないようにしつつ,円筒軸に対し平行方向に円滑に動くように,突起の長さ

が溝の深さに対応するもの(スレッドより長いもの)を含むものと理解することが

できる(なお,本件明細書には,「これらの突起は標準のアンプルアダプタの先端

部のスレッド(ねじ山)の間に契合するようにその寸法を決めることも出来る。」
と記載されている(段落【0011】)ものの,これにより,突起の長さが溝の深

20
さに対応する(スレッドより長い)構成が排除されているとは解されない。)。そ
して,溝(120)が外壁(110)にスレッド(200)よりも深く刻まれると

の構成を採ることにより,バヨネット結合を形成する際に複数の突起(30)が誤

って複数のスレッド(200)に導入されることが防止されるものと理解すること

ができる。

したがって,訂正事項1のうち「前記溝(120)は,前記外壁(110)に前

記スレッド(200)よりも深く刻まれ,もってバヨネット結合を形成する際に前

記複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止

する」ことは,特許明細書又は特許図面の記載を総合して導かれる技術的事項との

関係において,新たな技術的事項を追加するものではなく,実質上特許請求の範囲

拡張し又は変更するものでもない。また,訂正事項2も同様に,新たな技術的事

項を追加するものではなく,実質上特許請求の範囲拡張し又は変更するものでも

ない。
(4) 小括

以上のとおり,訂正事項1,2は,いずれも特許請求の範囲減縮及び明瞭でな

い記載の釈明を目的とし,特許明細書又は特許図面に記載されている事項の範囲内

の訂正であり,また,実質上特許請求の範囲拡張し,又は変更するものではない。

したがって,本件訂正は適法であり,原告の主張する取消事由1には理由がない。

2 取消事由2(本件特許発明の認定の誤り)に対して
上記1のとおり,本件訂正に違法はなく,本件訂正に基づいてされた本件特許発

明の認定にも誤りはないから,原告の主張する取消事由2には理由がない。

3 取消事由3(相違点3の認定の誤り)に対して

上記2のとおり,本件特許発明の認定に誤りはなく,これに基づいてされた相違

点3の認定にも誤りはないから,原告の主張する取消事由3には理由がない。

4 取消事由4(相違点3の容易想到性判断の誤り)について
原告は,甲2発明1に周知技術を組み合わせることにより,訂正特許発明1の相

21
違点3に係る構成に想到することは容易であったと主張する。
しかし,原告の上記主張は,以下のとおり,採用することができない。

(1) 甲2発明1の内容は,前記第2の3(1)のとおりであるところ,甲2には,

従来技術として,「針は注射筒の頭部に設けられた緩いテーパーの嘴角に被嵌され

専らそのテーパー面の嵌合摩擦によって針を保持せしめたものである」 頁左欄)
(1

と記載され,嵌合摩擦接続(装着)構造を有する注射針が開示されているが,これ

とバヨネット結合による接続(装着)構造を有する注射針を併せ有し,選択的に接

続(装着)することは記載も示唆もされていない(むしろ,甲2発明1は,着脱に

力を要し,使用中に針が稀に脱落することもある従来の嵌合摩擦接続(装着)構造

を排除しているものと解される。)。

また,甲4には,ねじ結合による接続(装着)構造を有する注射針が開示されて

いるものの,バヨネット結合による接続(装着)構造を有する注射針に関する記載

はなく,ねじ結合による接続(装着)構造を有する注射針と,バヨネット結合によ
る接続(装着)構造を有する注射針とを組み合わせるべきことを示唆する記載もな

い。

さらに,甲5には,注射器の針系統のための固定機構に関し,従来,針ホルダー

とカートリッジアンプルをねじ結合構造により接続(装着)するようにし,針ホル

ダーをカートリッジアンプルにねじ込むことによって針の後端が膜を刺し通し,そ

れによってストッパの前進運動の時に薬物が針を通って押し出されるようにしたも
のがあったこと,その場合,回転運動により針をねじ込むことによってゴムの摩滅

が生じ,その摩滅したゴム粒子が薬物の中に入り,注射によって人体へ送られると

の問題があったことが記載され,これを解決するものとして,針を回転運動なしで

簡単にカートリッジアンプル又は注射器と結合する,スナップロック結合による接

続(装着)構造が開示されている(3頁3行〜26行)。しかし,甲5には,バヨ

ネット結合による接続(装着)構造に関する記載はない上, じ結合による接続
ね (装
着)構造とスナップロック結合による接続(装着)構造とを組み合わせることに関

22
する記載もない(なお,甲5の特許請求の範囲の請求項4には,「カートリッジア
ンプル(4)の回転によって針ホルダー(3)を螺着することができる」と記載さ

れているが,同項に係る発明は,請求項1に係る発明(スナップロック結合による

接続(装着)構造を有するもの)を引用するものであること,明細書の発明の詳細

な説明に,「カートリッジアンプル4又はカートリッジアンプル4を含むカートリ

ッジアンプル・ホルダーを回転することにより,針ホルダー3をねじ戻し又は力で

引き抜くことができる。」(4頁16行〜18行)との記載があること,そもそも

甲5記載の発明は,回転運動により針をねじ込むことによってゴムの摩滅が生じ,

その摩滅したゴム粒子が薬物の中に入ることを避けることを解決課題としているこ

とからすれば,請求項4記載の針ホルダーは,スナップロックを形成する,つめを

具備する針ホルダーであって,従来のねじ結合による接続(装着)構造を有する針

ホルダーとは異なるものと解される。したがって,上記記載をもって,甲5にねじ

結合による接続(装着)構造とスナップロック結合による接続(装着)構造とを選
択的に採用することが記載ないし示唆されているということはできない。)。以上

のとおり,甲5には,ねじ結合による接続(装着)構造を有する注射針(従来技術)

と,スナップロック結合による接続(装着)構造を有する注射針が記載されている

が,スナップロック結合による接続(装着)構造を有する注射針と,ねじ結合によ

る接続(装着)構造を有する注射針とを選択的に接続(装着)することは開示され

ておらず,バヨネット結合による接続(装着)構造についても何ら開示されていな
い。

以上によれば,甲2発明1と甲4,5記載の発明とが,注射器という技術分野で

共通し,甲4,5に記載されているようにねじ結合による接続(装着)構造が周知

であるとしても,上記のとおり,甲2,4,5には,バヨネット結合による接続(装

着)構造とねじ結合による接続(装着)構造を組み合わせることは記載も示唆もさ

れていない上,2種類以上の接続(装着)構造を設けることを動機付ける記載もな
いから,バヨネット結合による接続(装着)構造の甲2発明1に,上記周知のねじ

23
結合による接続(装着)構造を組み合わせることは,容易に想到できたとはいえな
い。

(2) これに対し,原告は,注射針のハブの接続(装着)構造として,バヨネット

結合, じ結合, ナップロック結合及び嵌合摩擦結合が周知の技術として存在し,
ね ス

適宜選択し得るものである,また,甲2,5,16の1のように,1つの注射器の

注射針マウントに異なる接続手段を併設することにより,異なる接続手段を有する

注射針のハブを接続可能とすることは,注射器の技術分野において周知の技術課題

として存在していたと主張する。しかし,上記接続(装着)構造がそれぞれ周知の

技術であるとしても,これらが当然に置換可能なものということはできないし,2

種類以上の接続(装着)構造を併設することを動機付ける点は,上記各文献に記載

も示唆もされておらず,これが技術常識であることを裏付ける証拠もない(なお,

甲16の1には,同じ注射針マウント36に複数の異なる結合部材38を選択的に

取り付けることが記載されているものの,バヨネット結合による接続(装着)構造
の注射針と,ねじ結合による接続(装着)構造の注射針が選択的に取り付けられる

ことは記載されていない。)。

また,原告は,バヨネット結合による接続(装着)構造とねじ結合による接続(装

着)構造を有する甲6の1,7の1記載の発明の接続技術は,甲2発明1のバヨネ

ット結合による接続(装着)構造と甲4,5に記載されるような周知のねじ結合に

よる接続(装着)構造を併設させる動機付けとなると主張する。しかし,甲6の1
記載の発明は, アーシャンプー等の化粧用製品の入った容器に関するものであり,


甲7の1記載の発明は,患者監視装置と装置の患者に装着する作動部分の交換自在

な接続を提供するための部材に関するものであって,甲2発明1と流体を給送する

ための接続構造という点で共通するとしても,甲2発明1と甲6の1,7の1記載

の発明では,接続する具体的な対象が全く異なるから,甲6の1,7の1記載の発

明に接した注射器分野の当業者が,甲2発明1において,外側に凸子7を設けた座
9を備える注射針に加え,注射器の先金3の前方側壁の外面に螺着可能な別の注射

24
針を用意し,これらの注射針を注射器に対し選択的に装着可能とするという構成に
容易に想到し得たとはいえない。

したがって,原告の上記主張は採用することができない。

(3) 訂正特許発明1は,上記のとおり,注射針マウント(100)が,円筒形の

外壁(110)に設けられたスレッド(200)を有し,スレッド(200)は,

はめ合わせに適合する従来のねじ式注射針アセンブリを注射針マウント(100)

にねじ込んで接続することに適しているのみならず,溝(120)が,外壁(11

0)にスレッド(200)よりも深く刻まれ,もってバヨネット結合を形成する際

に複数の突起(30)が誤って複数のスレッド(200)に導入されることを防止

するとの構成を備えているところ,かかる構成は,甲2〜9,15の1,16の1

に記載も示唆もされておらず,単なる設計的事項ということもできない。

(4) 小括

以上によれば,訂正特許発明1の相違点3に係る構成は,甲2発明1に周知技術
を適用することにより,容易に想到できたとはいえない。その他,審決の本件訂正

発明に係る容易想到性判断に誤りはない。

5 結論

したがって,原告主張の取消事由には理由がない。原告はその他縷々主張するが

いずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決

する。



知的財産高等裁判所第3部




裁判長裁判官
田 文
芝 俊


25
裁判官

西 香




裁判官
知 野 明




26
(別紙)
図1(本件特許図面1)




図2(本件特許図面2)




27
図3(甲2の第1図)




図4(甲2の第2図)




28

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